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【感想137】フォールガイ

 わりと称賛の声が多い中でちょっと中身を疑問視する話も見た影響とか抜きで、そこまで乗りきれなかった。

 全編通してカーチェイスやスタントマンの活躍を魅せられるアクションを満遍なく配置されているから楽しい映画だし、実際土曜朝一の回で年齢層問わずいろんな人が見に来ていて満足そうな空気だったのでエンターテイメント映画としては及第点になってる。キャスト陣も一人ぐらいはピンとくるような有名どころが結構出ているし、映画に関する小ネタもちょくちょく出てくるうえに恋愛要素は結構ストレートな話なのでストレスフリーでプラスアルファの面白さがちゃんとしてる。いろんな人にお勧めできる。

 それでも乗れなかったのはやっぱり本筋になる「俳優とスタントマンの関係」が薄味だったのはまずかったんだと思う。

他人に勧めやすい ★★★★★
個人的に好きか  ★★☆☆☆



 ライアン・ゴズリングとアーロン・テイラー=ジョンソンを配役するところはスタントマンに似てる系統の顔を置いてくるっていう意味でこっちで勝手に面白がれたり、スタントマンの撮影現場を模してそこを注力して見せていたりと、とにかくスタントマン賛歌と言われるとおりにメインの出どころはスタントマン関連の場面。
それに加えて各アクションシーンやカーチェイスでの視点をその場で新たに構築させる効果も出ているので、単純なアクション以上に意味あるアクションを撮って映せているんだと思う。

 恋愛やコメディもかなり簡素化されていて、昨今のシンプルなハッピーエンドから捻った道中と結末がメジャーな風潮においては一周回って新鮮な見方ができるし、映画小ネタもしっかりタイトルを併せて言ってくれるので元々の知識があまりなくてもここで出てきたのをきっかけに見る動線としても機能しているし、特にオタクの雑学披露に近い鼻につくようなうざったさがないのは趣旨に合ういい表現の仕方だなとも思う。


 そんな中で「俳優とスタントマンの関係」が薄味になっているのは、スタントマンと俳優の対立がかなり簡単な善悪の二項対立にされているの結構大きな要因だとは思う。

 作中ではハッキリと俳優・プロデューサーが絵にかいたような悪徳集団として描かれているし、スタントマンを労っていたり親密に関係を築いているようなコンビどころか主役2人以外はそもそもいないような状況なのはどうかと。

 もっと致命的なのは作中で「そんな複雑な話じゃ観客を置いていく」というセリフが出てくること。この作品自体がこんなもんでいいんだよっていう温度で作った、とも受け取れかねないし、もう少し核心に踏み込んだ問いかけが欲しかった。映画で映画の話をする以上、「これは深く考えなくていいんだよ」て言い出すのは甘えに見えちゃうし、観客が言うのも目を瞑れっていうメッセージにもなるしであんまり良い事はないと思う。


 なのでオススメできはするけれど、あんまり好きではないなってタイプの映画だった。
こういう脳死で楽しむ系ってジェットコースターみたいな楽しさがいいけど、見た人の中に留まり続ける良さがないと味気ないよなってのを再認識させられた。

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