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【感想134】Chime

 笑っちゃうぐらいわかりやすくなった『蛇の道』とは真逆で、『CURE』や『回路』に近い鬱屈した雰囲気で楽には輪郭をつかませない不親切な話になってた。
とは言いつつも1時間足らずと短い時間にも関わらず、徹底した不気味さで全く息継ぎさせる間もなく見てる人を嫌な気分にさせてくる、ホラーと括りつつも別格の怖さを持っている。いわゆる、「格」が違う作品。

他人に勧めやすい ★★★★☆
個人的に好きか  ★★★★★

 この怖さはわからない、不明瞭さによるものが大きいと思う。
ストーリー自体、松岡という男が得体のしれない何かに動かされているような気味の悪さをずっと放ってる様子を追うのに徹底している。
最初こそ料理教室の生徒である田代の奇怪な様子に怖がりつつも、松岡の妙に冷淡な態度も不気味さに加担してる。そこから徐々に不気味さが増していくわけだけれど、作中にハッキリとどういう理由でとかこんな出来事があってとかの提示がない。あるシーンで松岡が既に以前の様子から変わってしまったことが明かされるぐらいで、映されているところでは何も出されない。

 当然だけれどショットの美しさも健在で、しんでしまった料理教室の生徒が教室まで来ている、と話をされた後のショットが特に際立っていたと思う。
上記で出した話にも通じる不気味さでもあるし、序盤で言われる「チャイムのような音が鳴って」という部分もこちらには全くヒントを与えられていない段階なのもあってとにかく得体のしれない何かがあることしかわからずに怯えるしかないシチュエーションに放り込まれる。

 実は45分と中編映画なわけだけれど、多分1時間半ぐらいには拡張して展開は出来るんだと思う。
面接を初めて受けた穏やかそうな松岡の姿や松岡家3人の本来の様子を見せることでコントラストを生めるんだろうけれど、これらを省いたことで出来上がる不明瞭さを纏ったお話の方が異質さだとか、話の筋を追う(思考する)ことで恐怖心から逃れられる余地を無くしていたりだとか、とにかく気味の悪い話を出すっていう意味ではこれ以上ない形なんだと思う。

 『CURE』では間宮というわかりやすいトリガーがいたおかげもあってサスペンス要素による中和があったのに対して、明確な何かに翻弄されているということでもなくただ起きている事に怯え続けなければいけない、ホラーが苦手寄りな人にとっては時間いっぱい精神を摩耗し続ける映画だと思う。
スラッシャーのようなストレス解放を与えるシーンがほぼ確実に出てくる洋ホラーはもちろん面白いし楽しいんだけれど、不気味さやストレッサーに徹した怖さはJホラーの強みの1つだなと改めて思う。

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