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【感想121】からかい上手の高木さん

 俺は何回このおっさんに脳を焼かれなきゃいけないんだ。

他人に勧めやすい ★★★★★
個人的に好きか  ★★★☆☆

 ドラマ版映画版と漫画アニメで決定的に違うのが視点の置き方で、前者だと俯瞰的な視点で物語を見ていくおかげで距離を縮めきれない二人のもどかしい恋愛模様を見届けるっていう要素が色濃くなっているおかげもあって、原作では薄味気味だった恋愛要素がかなり強くなりつつも実際にいたらこんな雰囲気だろうなぁ、というのを味わえる。

 漫画アニメではポップなコメディの要素が強かった理由の大部分は高木さんによるからかいのおかげがある代わりに、ドラマと映画ではそこが若干影が薄い(というより虐めっぽい見方ができるだけされないように調整された?)おかげでそこが好きな人には受け入れられないかもしれない。
ただこのからかいっていう部分に対して誠意をもって向き合った今泉力哉の手腕を見届けてほしい。

 このからかいも結局は好きを伝える婉曲的な手法です、ていうのが『元高木さん』の存在からも察しがつくけれど、ここに焦点を当てたうえでかなり丁寧に掘り下げられる。
2人が教師という立場になって、高木さんの転校でお互いの存在の大きさを自覚した時間を過ごした後に生徒たちを通して西片と高木さんが互いにどういう相手なのかをじっくりと理解していく。
ここは言っちゃえば改変、IFストーリーにはなってしまうけれど1本のドラマと映画でまとめ上げる恋愛ものとしてのアプローチとして巧いやり口だなと思った。結局は安直な方法じゃないかとも思われそうだけど、漫画20巻分のコメディ9割の展開で日進月歩だった2人に対しては強硬突破ではありつつもちょうどいい塩梅の差し伸べ方だとは思う。

 そして西片と高木さんが結論を出すシーンが、監督お得意の長時間の長回しで出てくる。
ここが教室の中学当時の席を真正面から撮った画なのが憎いし、お互いに向き合ったり言葉を必死に絞り出したり、からかい合って本音を曝け出しきらなかった2人が真っすぐに相手と向き合って話している姿自体が『からかい上手の高木さん』を知っているとなおさらグッとくる。

 ドラマ版とのリンクも同じ構図で話しているシーンがあること、この映画のあらすじに繋がる展開のあらましを理解すること、が主なポイントではあるし映画を観る前でも後でも大丈夫なようにされているのも優しいなと思う。
個人的にはここまでさわやかな題材だと『愛がなんだ』ほどの面白さは引き出されてはいないんだけれど、作品へのアプローチの仕方は今後の高木さん関連の作品を見る上でいい視点を貰える作品だなと思えるし、いい実写化だなと思った。


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