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ただのお祭り映画じゃないスパイダーマンNWH【感想1】

先月の試写会ではB列で実質最前列での視聴といういらない豪運を発揮したのでちゃんと画面全体を見たいと思い、1か月越しに2回目の鑑賞に行きました。
その一か月の間、必死にネタバレを避け続けてきた人たちがいる中で海外記事や各所の感想パブサ等々ネタバレを全身に浴びる過ごし方をしてきたため、2回目を見てより気づいたことや感じることが多いなと思いました。
2回とも字幕で鑑賞していますが、結論から言うと吹き替えで見るのはちょっと勿体ない(言葉選び、主題歌のマッチ具合が不安とか)なと思います。

以下ネタバレ




個人的にNWHはスパイダーマンシリーズとしてはもちろん、一本の映画作品としても5本の指に入る名作だと思っています。その1番の理由としては、お祭り映画の文脈のみで完結していないところです。

劇場でも拍手が起こるほど驚きのある3人のピーターの共演。仮面ライダーでいえば「リバイスの2人にバディ物の先輩として菅田将暉(フィリップ)が、怪人と協力する先輩として佐藤健(野上良太郎)がゲスト出演するし、ちゃんと変身シーンもある上に戦闘もする」ような感じ。まぁ流石にね…となんとなく察しているのが大多数な空気な中、実際に出演するしヒーローとしても活躍するわけです。
特に今回のスパイダーマン関連は制作事情の背景もあってより感慨深くなる出演です。ヴィラン5人の出演で察しがつくっちゃつくけど、ないだろうなぁって内心思っている人がほとんどだと思います。だからこそ劇場で拍手が起こったりと、感動する人も多いわけです。

本来お祭り映画だとトビーとアンドリューの登場は最後のヴィラントリオとのマッチで助っ人参加をするとか、最後にマスクを脱いで顔をワンシーンだけサービスで見せるとか、サービスに近い登場がほとんどです。実際に佐藤健が野上良太郎として17年の冬映画に出た際も、このようなサービスとしてのゲスト出演に近い登場でした。
ただ今回はトムピーターの成長に欠かせない関わり方をして、3人での共闘をしっかりと描いているのでゲスト出演という感じではなく、それぞれ出演者の1人、という見方がしやすくなっています。

今回は脚本についてのニュース記事でも話が出ていますが「トムホランドのピーターパーカーが軸」なだけでなく、お祭り映画だからこそ出来る話の流れになっています。
中盤におけるメイおばさんがトムピーターの責任が大きい亡くなり方をして落ち込んでいるタイミングでは、トニーやストレンジのようなアベンジャーズのメンター役じゃカバーしきれない所を歴代のピーター2人がカバーしてくれます。
それぞれが大切な人を救えなかった、その後自暴自棄気味になった事を打ち明けるのもピーター同士だから受け入れやすかったところが大きいと思います。

このトビーピーターとアンドリューピーター、更にいいなと思ったのはヴィラン5人に対する言い回し。
ノーマンやメイおばさん(はそうだったかはちょっとうろ覚え)は元の世界に戻す前には治療する、という訳をされていた単語で該当するのが”Fix”。それに対してトビーピーターは"Cure"と言っていました。最初聞き取った時は治療って訳でFixて言い方も変だな、と感じはしましたが2人がはっきりCureというのは先輩として登場した意味のある、重要なセリフだと思います。

マルチバースを利用したお祭り映画としての強み以上に1作品としての魅力を一番感じたのはラストのMJとの会話。
下手すればモノローグで説明を加えられてもおかしくないぐらい、かなりの長尺を使った後にMJとネッドから離れていきます。ここでのMJとの話や表情でトムピーターの心境が徐々に変わっていくのが伝わってきます。
何かきっかけがあれば記憶は戻るだろう、という希望もなくなる様子は見ていて居た堪れないし、大学も2人とも無事決まったことや前向きな様子を見て身を引く決心をして出ていくのも、17歳に背負わせるには重すぎるものです。これもホームカミングやサムライミ版3,アメスパ2のように奇麗なハッピーエンドとはいかない、ビターエンドの流れになっています。
まだMoMでストレンジが何かスパイダーマンに言及することで呪文のからくりがわかる可能性はあるので、一応可能性が残ってるのが唯一の救いでしょうか。

こういった、お祭り映画だからスゴイ!という側面だけでなく一作品として優れている面が強いので映画作品としてはトップクラスに面白い、お勧めできる1本だと思います。
ただいろんなところで言われている「これを見るためにはMCU映画を全部見るべき」という風潮で門戸を狭めているんだろうなあとは思います。オタクの性分だと過去作品の道筋をしっかり辿るべき、という論調が強くなりがちで仕方ない風潮ではありますが、個人的にはこの映画を見るならホームカミング、ファーフロムホームの2作で十分足りると思っているのでぜひ大きなスクリーンで公開されているタイミングで見に行ってほしいです。

字幕しか見ていないので主題歌の挿入タイミングは知りませんが、あんないいエンドシーン後にまあまあBPM早いJ-POPを繰り出されてたら笑えないので勘弁してやってくんないかな……

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