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【感想123】蛇の道

 旧作も早稲田松竹で上映したタイミングで見に行ったけれど、どっちにも別々の良さがあって見ている側でも撮りなおした意義がある作品になってるなとは感じられた。
大筋は変わらずとも、舞台を日本からフランスに変えた意味や哀川翔演じた新島が女性として柴咲コウが演じることで与えられる異なる印象は今作でしか味わえないものになっているので、別に旧作をわざわざ見に行かないといけないものにはなってないのもいいところだとは思う。

他人に勧めやすい ★★★☆☆
個人的に好きか  ★★★☆☆

 とは言いつつも、旧作の方は一目見ておいた方が大筋の理解速度という意味ではだいぶ助けられたし、比較しての楽しみ方ができるって意味でも見る価値は全然あるので時間があればぜひ。U-NEXTで見れます。

 明らかに変わっているのは主役の構図。
旧作では無機質かつオドオドした態度から徐々に変化していく香川照之演じる宮下と、つかみどころが一切ない哀川翔演じる新島の2人が魅せるバディとしての相乗効果が大きい。対して今作では柴咲コウ演じる新島小夜子のワンマンショーに近い構図になってる。
ラストシーンでの香川照之の演技が桁外れに良かったのもあるけれど、新島という存在を際立たせたうえで傍観している視聴者にすら異質な何かを感じさせる演出と演技が光ってる。

 そしてかなりわかりやすくされていて、サスペンス映画の色が強くなってた。
特に新島が個別塾の教師として何かを教えているという本当に何が何だか伝わりづらいシーンが一転して、日本人夫婦から国際別居をして心療内科医として勤めていることになっている。そのおかげでアルベール(今回の宮下)と新島小夜子の出会いの経緯や示唆する内容のわかりやすさが優しいものになっているのはかなり親切なまとめ方をされてるなとも感じた。

 根本の面白さはそこまで変わらずに『蛇の道』という作品を知れるって意味ではだいぶ優しいし、黒沢映画をライトに楽しめるって意味では良い作品に位置すると思う。
それでもなぜ名作に座するほどなのかを知るには旧作もろもろを見ないと伝わりにくいというのもあるし、どうせ見るならって意味で勧めるのは難しい感じではあるので強めにお勧めするのは難しいかなーというのが本音。
『Cloud』がどうなるかを楽しみにしときましょう。ってことで。

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