[感想8]ハンチバック
買った理由
本棚1つ分ぐらい積読しているけれど、100ページ未満でそこそこホットな純文学なんだなと思ったらハードルが低かったので購入。
今じゃ売り切れ続出なので積読してる性分をありがたく思うダメな成功体験になった。
読んだ感想
エネルギーに満ち溢れてた投擲で、胃もたれしていた。
あらすじで7割の内容説明になっているので物語については言及しないけれど、本文中の願望や思考の吐露は当事者性を隠さず含んでいるだけあってどれも力強い。
市川沙央さんの『ハンチバック』(文藝春秋)の一節。「読書バリアフリー」を考える上で、必読。
— 本ノ猪 (@honnoinosisi555) July 20, 2023
「こちらは紙の本を1冊読むたび少しずつ背骨が潰れていく気がするというのに、紙の匂いが好き、とかページをめくる感触が好き、などと宣い電子書籍を貶める健常者は呑気でいい。」(P34~35) pic.twitter.com/T3YrDIxVvi
一番伝えたかった部分というのもあってこの「読書バリアフリー」についてはそこそこ盛り上がっている(らしい)けれど、それ以外にも「妊娠と中絶を体験したい」「出産は出来なくても、中絶ならできる」と、力を振り絞れば手が届きそうな願望が列挙される。
日本では社会には障害者はいないことになっているのでそんなアグレッシブな配慮はない。
加えて主要になる2人の醜悪さも面白さをより色濃くしている。
典型的な弱者男性の特徴を与えられた介護職の田中と、どす黒い願望を持たざるを得ない社会へ参画させられた釈華が混ざり始める所からは気持ち悪さが指数関数的に上昇していくし、魅力的な描写だった。
そんな感じで現代のSNS大好きマンになじみ深い要素もちらほらとありつつ、キッチリと文学らしい内容なのでかなり好みに刺さった。しばらくはこれ一冊をオタクにお勧めしてると思う。
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