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【感想124】パストライブス/再会

 やっと見に行けたけれど、ちゃんと好きな物語でよかった。
これを恋愛ものって呼ぶことはできるけれど、それ以外の恋愛カテゴリーに入れることはできないようなもどかしさが詰まっているし現代でのリアリティの強さがより際立ついい作品だと思う。

他人に勧めやすい ★★★☆☆
個人的に好きか  ★★★★★

 『秒速5センチメートル』がどうしても浮かぶような作品だけれど、歳をとってから再会する上にひと悶着あったうえでさらにもう一回再会する、かなり入り組んだ展開なうえに着地点は人によっては余計にダメージが入るかもしれない。

 この映画全体を通してかなりドラマチックな要素を省かれていて、12年経ってから再会するのも何となくFacebookで探したら見つかってコンタクトが取れたから国際通話をしているとか、以降会っていなくても連絡を取れる状況ではあったとか、劇的な何かが起きて話が進展することがない。
イニョンという言葉が印象的に使われているけれど、序盤での母親同士での会話であった「失うものがあるということは得るものがあるはず」であったり自ら動き出すことがきっかけとなることの重要さの方が実感しやすい所かなとは個人的に思った。そこについてはノラが幼いころに言った「彼が結婚してと言ったらすると思う」が思い返せばこの映画の全てが詰まりきってるなと。

 特にノラの方が未練のない先進的な女性のように描かれている見え方をしていたけれど、徐々にそうじゃないんかもねっていう要素が小出しにされていたのは面白いなと思った。
一番印象に残っている、ノラの夫になるジョン・マガロ演じるアーサーは「”運命的な2人”には敵わない。これがフィクションなら僕は悪役だ」とノラにずっと弱音を吐き続けるシーン。その中で20年以上英語圏で生活をしていても寝言は韓国語だっていうのが味噌になってくるんじゃないかなと。
見せかけは馴染めているようでも根っこは祖国のものが根付いている呪縛からは逃れ切れていないことが示唆される。『エブリシング・エブリワン・オールアット・ワンス』でもあったような感じが近いかも。
12歳の時の別れが唯一に近いドラマチックすぎた思い出だからこそ夫がいても会うような素振りをしてしまうし、ラストでの行動に繋がってくると思う。

 このお話ではビデオ通話をやめてからお互いに恋人が出来ていて、ヘソンが結婚を目前にして踏ん切りをつけるために会いに来たような感じかなとも思う。
カメラワーク込みでかなりフィクションの味が薄いのに、顔を出す主な登場人物が絞られまくっているのもあって夢物語を期待させてしまうような雰囲気を纏っているのは面白い所でもあるし、『秒速5センチメートル』に近いプロットなのに清々しさもある妙なところもあるのでとりあえず見てほしい。

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