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自由に使える拳銃があったら、撃つ?

ストレス源になる人たち

仕事をしていると、ストレスを抱えることが多い。

自己紹介記事でも書いたように、僕は一度ストレスを抱えこみすぎて診断書をもらったことがある。原因は、職場の環境にも問題が大ありだったのだが、その最たるものは、とんでもないことを要求してくる「人」であったと思う。「出張中の4泊5日を車中泊で過ごせ」とか「なんでお前はサッカーができないんだ」とか、その他もろもろ。「パソコンできないからPC上の作業全部お前がやっとけ」というのもある。ひどい話だ。こいつらさえいなければ、僕の人生はもっとマシなものになっていたのではないか。僕の心に怨念がうず高く積み上がっていく。

ここまで酷くはなくても、日常生活のなかで「人」がストレス源になっていると感じる人は多いのではないだろうか。上司がハラスメント野郎だとか、モラルの欠如した人間が職場にいる、とか。話が通じなさすぎて「こいつは同じ人間なのか?」と思ったことがある人は、一人や二人ではないだろう。

誰しも、「こいつの眉間を今すぐ鉛玉でぶち抜ければすっきりするのに」と思ったことがあるはずだ。「あるはずだ」と強い断定ができるのは、ツイッターにアップされている、とある漫画の盛況ぶりを見たからだ。

その漫画は、『幸せカナコの殺し屋生活』という。

現代のストレス源の眉間をぶち抜いていく漫画

主人公カナコの幸せそうな笑顔をご覧いただけるだろうか。

ブラック企業を退職したカナコは、新しい職場を探しているうちに、どういうわけか殺し屋会社の面接を受けにきてしまった。初任給60万、徹底された労務管理、土日休み、などの好待遇に胸をときめかせるカナコだが、入社試験として、ブラック企業時代にパワハラやセクハラをしてきた元上司を狙撃することを要求される。

急展開に困惑するカナコだったが、これを難なくクリア。「人を殺す」という異次元の体験をするも、殺し屋会社の新歓で「人を殺して飲む酒がこんなに美味しいなんて」と明後日の方向にショックを受けていた。

こうしてカナコは殺し屋の一員としてめでたく採用され、ここから才能を大きく開花させていくことになる。

カナコが殺すのは、人間性やモラルが欠如した、インターネット上でさらされたら大炎上するような人間達だ。女をさんざんに弄ぶ男、人ごみで自分より弱い者にわざとぶつかってくる男、抗争中のヤクザ、煽り運転野郎、悪質クレームおばさん、痴漢、等々。こいつらがカナコの手によって殺されるたびに、ツイッターではたくさんの「いいね」が押されている。

カタルシスと怖さ

「ツイ4」でこの漫画を読んでから、僕はすぐに単行本1巻を買った。

めちゃくちゃ面白かった。痴漢を前にして、人の為に涙するカナコのセリフに僕も泣いた。「殺す」以外の方法で現実と闘えるようになったカナコの姿に感動もした。そしてもちろん、心のどこかで「こんなやつは死んだらええのに」と思っていたようなタイプの人間達が、陽気にポップにカナコの手で殺されていくところに、溜飲が下がる思いもした。

しかし、読後すぐに、これはかなり怖い漫画だと思った。

現実で受けているストレスと、この漫画を読んで受けるカタルシス(すっきりすること)の結びつきが強ければ強いほど、もしくは「こういうやつらは死ぬほどの目にあってしかるべき」だと思うほど、「この漫画はフィクションである」という強い自覚が必要だと思ったのだ。現実では絶対にこんなことがあってはいけない。フィクションの中だけで楽しむべき内容だ。この漫画が投稿されたツイートのリプライ欄に見える殺意の高さを見るたびにそう自分のなかで繰り返す。

この漫画を読んで感じるカタルシスを受けいれてしまえる自分は、「本来、どんな人間であっても、殺されるべき人間なんて一人もいないのだ」という地点に戻ってこれるのか。いつか戻ってこれなくなるんじゃないか。それを考えるとものすごく怖い。我々が暮らす現代社会では、その地点に戻ってこれなくなった連中がけっこうな数いるではないか。「〇〇なら殺してもいい」という思考は、常に意識的に見張っておかなければならない。

僕はこの漫画が好きだし、1巻の終わりに出てきた新キャラとの絡みでこれからこの漫画がどう展開していくのか楽しみだ。2巻も必ず買う。

けれども同時に、この漫画のポップさに呑み込まれてはいけないという強い意志も持っておきたいと思う。

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