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ひとが集まる場所と仕組みを創る | DoingからBeingへ | Vol.3 前半

自主ゼミ企画「DoingからBeingへ~福祉社会学者とともに、SOCIAL WORKERS LABを探究する~」は、さまざまな領域で活躍するソーシャルワーカーを招いて、その仕事や生き方について学び、参加者と対話を重ねるオンラインゼミです。2020年秋の開講後、全国の学生・社会人にクチコミで広まった人気ゼミのエッセンスを紹介します。

第3回前半のゲストは建築家の岡山泰士さん(STUDIOMONAKA共同代表)。福祉社会学者の竹端寛とSWLABディレクターの今津新之助が、岡山さんの活動について話を伺います。

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岡山 泰士(おかやま ひろし)
建築設計事務所STUDIO MONAKA共同代表・地域団体シガーシガ
京都・沖縄を拠点に多様な人々が集うことのできる空間を求め、人々の営みの背景となるような建築を目指し活動中。滋賀県大津市で地域団体シガーシガを立ち上げ、福祉施設に隣接する耕作放棄地を開墾し地域の交流拠点としてHOURAI SHARE FARMの企画・運営を行う。福祉施設のテラスが最近のお気に入りの場所。

カオスを好む建築家の風変わりな事務所

岡山さん:建築家の岡山泰士です。建築設計事務所STUDIOMONAKAの共同代表と、滋賀県大津市北部で地域団体シガーシガのメンバーとして活動をしています。

今津:このゼミを企画したSWLABの今津です。僕は岡山さんとは長い付き合いなんですが、彼はカオスを好む人物だと思っています。京都の建築事務所はとてもユニークだし、住まいのある滋賀県では地元の福祉作業所と一緒にさまざまな活動をしている。まず、その話をしてもらえますか?

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岡山:カオスなのかなぁ。事務所は京都の千本北大路にあります。うちの事務所の入り口は壁もドアもない代わりに、幕のようなテントを張って「HIROBA」という形で開放しています。

ぼくらの仕事場であるだけでなく、ワークショップやアートイベント、地域の交流スペースとして活用しています。日常的に人が出入りしていますね。近くのバス停のバス待ちのひと、将棋が好きなおじさん、近所の盲学校の生徒さんも頻繁に遊びに来ますよ。建築づくりはコミュニティづくりだと考えています。それを象徴するのが京都の事務所です。

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自分の暮らす街を豊かにするには?

岡山:プライベートでは3年前に家族と滋賀県に移住しました。ぼくが住んでいる琵琶湖西岸に位置する湖西エリア(滋賀県大津市北部)を盛り上げていくために地域団体シガーシガの仲間と活動をしています。

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岡山:シガーシガは4人でやっていて、建築家のぼく、現代美術家の市村恵介さん、カメラマンの山崎純敬さん、福祉家の西翔太くんの4人です。自分の住んでいる地域を豊かにしたいという想いが共通しています。

福祉家の西くんが就労B型施設「蓬莱の家」の施設長をしていて、新規事業として耕作放棄地を開墾するシェアファーム事業を立ち上げました。月に1回のマルシェも好評で、福祉施設と地域の接点をつくる実験をしています。

西くんは「場をひらこう」とする意識が強いひとなので「障害のある人が自分らしく働いている“ふつうの日常”を顕在化させたい」という彼の想いは、ぼくがやってきたことと重なります。建築家として、個人として、この地域のために何ができるのかを考えて活動をしています。

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答えのない何かをその土地で暮らす人と作る

竹端先生:就労B型ってことは、障害のあるひとが継続して働くための就労支援施設ですね。滋賀での取り組みも面白いですが、岡山さんの事務所もユニークだと思いました。岡山さんは他者を受け入れることに抵抗感ってないのかな?

岡山:事務所を設立する前から「自分の家を開くことで、どれだけ他人が自分の家に侵入してくるか?」という個人的な実験をやってきました。そのときは京町屋に住んでいたので、知らない外国人と朝ごはんを食べたり、ぼくの家が待ち合わせ場所になっていたり、台湾人の学生が2週間ほど滞在していったこともあります。そういう偶発的な出会いって、面白いことがたくさん起きるんです。笑 

結婚したことをきっかけに実験の場を自宅から事務所に移したので、事務所を地域の交流スペースにして実験を続けています。答えのない何かをその土地で暮らすひととつくること。ぼくがずっと続けてきた実験です。

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竹端:答えがある方が楽で、答えがないものをつくる方が苦手だというひとはけっこういると思う。答えがないものをつくるのは、建築家だからできるのでしょうか?

岡山:誰かと寄り添っていくと新しいものができてしまう。できざるを得ないと思っています。建築家だからやってるつもりはなくて「わからない。けど、なにかやりたい。」というのは、まだ形に当てはまっていない状態。それはつくるしかない。

竹端:定型やフォーマットに当てはまらないものを考えることは、けっこうめんどくさい。自分の持っている型に当てはめるのではなく、相手との間で探るのはめんどくさくないですか?

岡山:めんどくさいですよ。笑 けど、新たな何かを生み出すことに興味があるし、やりがいを感じる。建築家の職能かもしれません。社会をつくっていく仕事だと思うから。新たな価値や動きを自分たちがつくるることで社会がつくられると思います。

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建築から福祉に越境する

竹端:岡山さんは建築から福祉に越境してきたひとだと思いますが、越境するときに自分の持ち味を生かしながら、相手の持ち味をいかすために、自分なりのブレンドはどうしていますか?

岡山:建築も福祉もすそ野の広い業界なので、越境しているつもりはなくて「気づいたらやっていた」という感じです。ぼくがやってきたことは変わらないし、京都の建築事務所もシガーシガの活動もみんな同じ。建築はひとを輝かすための背景をつくる仕事です。これからも多様な意見、立場、状況を受け入れることができる建築をつくりたいと思っています。

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【自主ゼミ2020】「DoingからBeingへ~福祉社会学者とともに、SWLABを探究する~」とは

正解なき時代を生きる私たちが他者や世界と向き合っていくために、ソーシャルワーカーとしての生き方・働き方、魅力や可能性をともに探索していく場。狭義のソーシャルワーカーの枠をはみ出したゲストの方々、そして参加者の皆さんと対話・共話を重ねることで、ソーシャルワーカーとは何かを問い直し、深めていく時間です。20年10月から21年3月までの半年間にかけて全10回開催しました。

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SOCIAL WORKERS LABで知る・学ぶ・考える

私たちSOCIAL WORKERS LABは、ソーシャルワーカーを医療・福祉の世界から、生活にもっと身近なものにひらいていこうと2019年に活動をスタートしました。正解がない今という時代。私たちはいかに生き、いかに働き、いかに他者や世界と関わっていくのか。同じ時代にいきる者として、その問いを探究し、ともに歩んでいければと思います。




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