紀尾井のい

書きます。 短編小説、アイデア、日記、エッセイ、感想なんでもあり。 なるべく毎日細…

紀尾井のい

書きます。 短編小説、アイデア、日記、エッセイ、感想なんでもあり。 なるべく毎日細々やりたい。

最近の記事

【小説】ファイブ★スタ #4<新任の大家と住人全員無職のボロアパートの話>

チッチッチッチと時計の音が部屋に響いている。しかし路偉は今が何時なのか分からなかった。多分、土曜日の午前中だと思う。ベッドに仰向けになっているので時計が見えない。 起き上がりもせず、仰向けのまま、天井を眺めた。リノベーションしたばかりの天井は白く、干した洗濯物が遮るのに任せて、陽の光がチラチラと揺れている。静かだった。あまりにも賑やか、いや喧しかった一昨日と昨日に比べ、本当に静かで、穏やかだった。路偉は一人、ほぅ、と息をついた。 ****** 路偉がファイブ☆スタに引っ

    • 【小説】ファイブ★スタ #3<新任の大家と住人全員無職のボロアパートの話>

      「おーいコンロくん、これどうすればいい?」 「コンロじゃないですよ!今野です!大物は一旦全部外に置いちゃってください!まだベッドが置けてないんです」 路偉は自室の103からひょいと顔を出し、ローテーブルを引越し業者と運んでくる相澤に向かって叫んだ。ファイブ☆スタの住人は今、路偉の引越し作業にあたっている。 「タヅさん、ヒメちゃん。ベッドの梱包外すのは後にしちゃって大丈夫です。すみませんが、ここにスペース作ってもらえますか?」 「ここね、分かりました」 「はーい!」

      • 【小説】ファイブ★スタ #2<新任の大家と住人全員無職のボロアパートの話>

        <新任の大家と住人全員無職のボロアパートの話> 「今野路偉です。叔父に代わってこのアパートの管理を任されました。大家として、今日から101でお世話になります」 「え、じゃあ今日からオタクが大家さんなの?」 路偉をなぜか「ヒメちゃんのパンツを購入した変態」だと思い込んでいた豊橋は気の抜けた声でそう言った。掴みかかろうと伸ばされていた手がストンと下りて、路偉は少しホッとする。 「はい。前任の浅田、ぼくの叔父なんですけど、その人が言っていませんでしたか?」 「ああ、確かに

        • 【小説】ファイブ★スタ #1

          【会社を辞めた男が無職かフリーターしかいないボロアパートの大家になる話】 「どこだよ、もう」 今野路偉(こんの ろい)はもう一度スマートフォンを逆さまにした。地図アプリの進行方向を示す矢印がぐるりと回転したが、これが合っているのかも分からない。路偉はもはや泣きそうだった。目的地にはもう近いはずなのに。しかしさっきから同じような道を進んだり戻ったりしながら、もう1時間以上は住宅街のど真ん中でさまよっている。   10月に入り多少涼しくはなったが、今日のように雲一つない快晴だ

        【小説】ファイブ★スタ #4<新任の大家と住人全員無職のボロアパートの話>

          【ホラー短編】おもて、うら、よこ

          ふわりと意識が浮上するように目が覚めた。さっきまでごちゃごちゃとした夢の中にいたせいか、頭はクリアだった。部屋が薄明るい。ちょうど目の前にあった目覚まし時計を確認すると、朝の6時半だった。大学で1限の授業がある日の起床時間は7時だ。もう少し寝れる。そう思い、わたしは寝返りをうった。―――なに、これは、なんだ……脚? 寝返りをうったその先に、女の脚が。脚があった。理解不能の物体が突如目の前に現れ、パニックになる。とっさに叫ぼうとしたのだが、声は全く出ない。それどころか指一本、

          【ホラー短編】おもて、うら、よこ

          文章練習報告『秋の牢獄』

          こんにちは、紀尾井のいです。 本日も文章力向上のために作品の模写を行いました。 使用した作品は恒川光太郎の『秋の牢獄』。 恒川光太郎は美しく静かで奇妙なSFホラーの名手です。今回は『秋の牢獄』に収録されている短編の『神家没落』を模写しました。神の家に閉じ込められて世間と隔絶してしまった男の話ですが、恐ろしさと一種の憧れを抱く不思議な作品です。この作品から学んだことは、 語彙や表記での個性の出し方 これです。恒川作品はあまり文体に特徴がないのですが、それでもどこか妖し

          文章練習報告『秋の牢獄』

          初めて行ったクラブで峰不二子になった

          こんにちは、紀尾井のいです。 前回、私は自分の文章の稚拙さに絶望し文章力向上を誓いました。 文章力向上のためにはいくつか方法がありますが、いろいろ調べる中で一番よく出てきた手法は「文章の模写」でした。  やり方は簡単。良文・秀文を書き写すのみです。ポイントは2点あり、1点目は文体が偏らないように複数の作家の作品を使用する事。2点目は語彙や句読点、文のリズムなどをよく観察する事です。  私が模写に選んだのはさくらももこ筆の「もものかんづめ」。 「もものかんづめ」はエッ

          初めて行ったクラブで峰不二子になった

          休職したばかりの女、文章力向上を目指す

          こんにちは、紀尾井のいです。 初めての投稿を見て下さり、ありがとうございます。 さて、私がnoteを始めたきっかけですが、これは純粋に文章が好きだからです。幼いころから本に親しみ、大学では文学を専攻。自己満足の文章もノートにちょこちょこ書くようなタイプの文章好き。 そんな私が一発目の投稿をするにあたり、自分の状況説明を書こうとしたのですが……下手な上に面白くない。 何も言わず、この文章を読んでみてください。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 休職

          休職したばかりの女、文章力向上を目指す

          自己紹介

          はじめまして、紀尾井のいと申します。 勢いでアカウントを作ったので「いきおいの『い』」、紀尾井のいと名乗ることにしました。 このページでは概要の通り、日記・アイデア・ストーリー・感想なんでも書きます。私のメモ書き・ノートを拾ったと思って読んでください。 【更新頻度】ほぼ毎日。2日くらい更新しないこともあり。 【好き】電車で本を読む/適当に料理を作る/酒を飲みながら音楽を聴く/ごみ捨て/猫いじり/海の生き物/ファンタジー 【嫌い】強烈な臭い/説明書を読んでその通りにする