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これからの音楽 #4

 90年代初頭にはこんな論争があった

「DJはミュージシャンか?」
「DJをミュージシャンのクレジットと並べていいのか?」

 DJは他人のレコードを使うだけの、他人のフンドシで勝負する奴らなんだから、楽器を演奏してるやつとは違う、と言うロジックでどちらかと言えば「DJをミュージシャンと並列で表記する」ことに対しては反対な論調が強かった印象がある。

 かくいう20代そこそこな俺も上記の様に先輩や業界の人に言われると
「そ、そっか、そうだよね、DJは楽器できないもんね」
となったし、
賛成派がこれから時代を作るのはDJだと言ってるのを聞くと
「た、たしかに下手なミュージシャンよりはDJのほうが面白い発信をしてるもんね」
となった。確かなことは
DJと言う業種が音楽シーンのど真ん中に出てきた
ってこと。

 DJと言う存在自体はもちろん50年代ラジオ時代からあった訳だけど、1990年前後に表に出てくる様になったのは2020年の現在から振り返ると象徴的だ。前回(これからの音楽 #3 )説明した様に80年代のド派手になる一方の「映像重視なキラキラポップス」に飽き飽きしてきた頃の話だ。J-POPしかり、世の中がマーケティングベースの音楽にどんどん傾き始めると、ある現象が起き始めたのだ。

新譜がどれも同じに聴こえる

 そんなキラキラポップスに対するアンチ的存在としてまずDJは機能した。Hip HopやTechno、Houseなどがアンダーグラウンドから徐々に世界へ広がっていく時期だし、かつレアグルーヴなどの形で旧譜再評価の動きもこの頃から大きく表のシーンにも影響を及ぼす様になる。

 DJは確かに(一部を除いて)楽器は弾けないけれど、旧譜〜既発楽曲の情報量がすごかった。その情報量が世の中に影響を与えた。音楽機材の情報更新もすごかったと言えるし、結果、毎年の様に新しいビートが生まれた時代でもあるし、現役の古いアーティストを引っ張り出して若手とコラボをすることで再評価を生み出すと言う流れも世界的に行われた。

 具体的に言うとUK発信のAcid Jazzムーヴメント、日本では渋谷系などが大きくシーンを揺るがしたし、コンピレーションや旧譜のCD再発なども沢山出た時代だね。フリーソウルなんてどれだけ俺自身影響を受けたことか。。。これまでヒットチャートばかり追いかけていた青年SWING-Oは、ここにきてついに
ポップチャートに上がらない、いい曲が沢山あることを知る

 ただ、個人的にはヒットチャートを追いかけていたマインドからの切り替えが必要だったのも確か。具体的には例えば
*良くできた曲であるかどうか?よりもフレーズ〜サウンド重視な感覚
*有名曲の有名バージョンよりも無名曲無名カバーバージョンを重視する感覚(昔から名盤とされるものはスルー)
、、、ここに「演奏力」「歌唱力」はほとんど含まれないのだ。

この感覚に変換できるかどうか?が、俺の同世代がその後の音楽シーンでも活躍できるかどうか?の関所になったと思う。
ミュージシャンにとっては不遇の時代の始まりとも言えよう。そんな、一躍時代の寵児となったDJたちは、世間がまだ気づいていない新旧の音楽を紹介する一方、ついに制作やプロデュースにも求められる様になる。

 そして、、、ミュージシャン主導による20世紀のポピュラー音楽は事実上幕を下ろした。いろんな音楽の融合は一通り終えたし、各種フォーマットも出来上がった。そして何より100年でもう充分すぎるほどのポピュラー音楽が誕生した。残されたのは再評価と再融合くらい。何よりその膨大な情報量を系統立てて各々が把握するのが難しい時代になってしまったということだ。

 そして21世紀も音楽はもちろん作られ続けて今に至る。21世紀はミュージシャンはどの様に存在し、音楽はどの様になってきているのだろうか??を次回考察してみよう。(あと1,2回で終われそうです 笑)

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■最後に一曲紹介

90年代は日本の音楽界はバブルが続いていたので、いろんなものが生まれては消えていった。そんな中、大して売れなかったけれど、一定の楽曲ファンがいたことで、ついここ数年で再評価〜初のレコード化なんてことが実現した人もいる。そのうちの一人がこの具島直子。アルバムにはAcid Jazzの影響をほんの少し受けたアレンジの曲もあったりするけど、ほとんどがこうした素朴でメロウな曲。俺もリアルタイムに出会って、めっちゃ好きで聴いていたもんです。。。そうか、20年経つとそういう再評価があるってことだね・・・20年周期はビジネス的には続くってことだな・・・

"So High So High" 具島直子 1996年
この素朴な曲が好きすぎて、昨年リリースしたソロピアノアルバムでカバーしちゃいました。よかったらそちらも聴いてくださいね。

Spotify
https://open.spotify.com/track/01pt0GpHXze2KT9jHAt3jW?si=fvWMu54fTua6LWV15ErgIw



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