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わたしのいる場所

9月に入ってもまだ暑い日が続きますね。できるだけ炎天下を歩かずに美術館へ行くためのリサーチを欠かさない私です。今日は兵庫県立美術館へ行きました。こちらの美術館は阪神の岩屋駅が最寄りで、阪急沿線民は王子公園駅から坂を下りつつ20分くらい歩くわけですが猛暑の日に歩くと消耗してしまいますから、神戸三宮まで阪急で行き、そこから阪神の普通電車に乗り換えて2駅戻るという方法で行きました。
こちらの美術館は、今は特別展の合間でコレクション展のみを開催しています。

美術館入口の看板

兵庫県立美術館のコレクションルームは1階と2階にあり(入口が別)、1階に5室、2階には小磯良平記念室、金山平三記念室も合わせて3室あり、かなりの数のコレクションを見ることができます。
8月20日から始まったコレクション展Ⅱは「わたしのいる場所--コレクションから「女性」特集!」というタイトルで、女性画家の作品や、女性を描いた作品の数々を展示しています。

本多錦吉郎 羽衣天女 (重要文化財)

最初のコーナーは、新しく国の重要文化財に指定された「羽衣天女」のお披露目です。明治10年代は洋画排斥の時代で(新しく外から入ってきたものへのバックラッシュのようなもの)、第3回内国勧業博覧会でやっと洋画の出品が認められ、それの出品のために描かれたものだそうです。私は、これを初めて見た時にMOMATにある原田直次郎の「騎龍観音」を思い出し、なんとなく似ていると感じたのですが、調べてみたら騎龍観音も同じ内国勧業博覧会への出品作ということで、我が国における洋画の歴史がまだ浅かった当時の作品のテーマとして、日本画で描かれていたようなものをアレンジするというのは良くあることだったのかなと思いました。

そのあとのコーナーから「女性」特集が始まります。こちらの美術館の所蔵作家の1割が女性作家だそうで、今回は60人による女性作家の作品を、「わたしのいる場所--みるわたし」として女性作家が描くモチーフに着目し、生活に密着したもの、自分を描いたもの、風景を描いたものなど様々なテーマに分類して展示されていました。

木下佳通代 88-CA497

木下佳通代さんの上の作品は、一度描いた線を拭って薄くして、その上から線を引いたりしていて不思議な立体感が出ていて面白いと思いました。

田中敦子 作品

これ、かなり面白いです。今回のコレクション展のポスターや看板に用いられているもので、実物は合成樹脂エナメル塗料が使われていて赤い円はツヤツヤして少し盛り上がっていました。

草間彌生 Infinity Nets 1958
草間彌生 かぼちゃの神様

女性の作家が1割しかいないというのは、別に女性の芸術の能力が低いとかそういうことではなくて、女性が洋画を学べる学校がなかったということだったり、画家になったとしても結婚後は続けられなかったとか、色々な理由が考えられます。

また、2階の奥のコレクション展の最後の部屋には男性が描いた裸婦像のコーナーが設けられており、東京美術学校に西洋画科が設立された頃の裸体デッサンのための「裸婦モデル」という職業についての解説がありました。偏見の目で見られることもあったとか、「裸婦」として描かれた女性が一体誰だったのか、辿れないものが多いとか。
近代になっても女性は「描かれる」対象としての方が多いということ、ジェンダー論的な視点で考えさせられるコレクション展だったと思います。

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