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没後50年 福田平八郎

大阪中之島美術館で「没後50年 福田平八郎」を見ました。
お天気は良いけれど冬のように寒い大阪です。できるだけ日差しのある道を選びながら中之島の川沿いの道を歩いて美術館へ。
大阪中之島美術館の2024年度の展覧会は、木下佳通代や醍醐寺国宝、モダンアートコレクション、国芳など今年も面白そうなのでメンバーズを更新しました(というか忘れていて自動的に更新された感じかも)。

さて、今日は福田平八郎です。彼の作品は国内の公立の美術館のコレクション展を見に行くと何作品か展示してある、程度の認識しかありませんでした。昨年MOMATで「重要文化財の秘密」を見た中に「漣」があり自分の中で強い印象として残りました。その「漣」を所蔵しているのが大阪中之島美術館なのです。


入り口にて

福田平八郎は大分市に生まれ、18歳のときに京都へ出てきて絵を学びました。学生の時には方向性を模索するような作品を多数描き、卒業制作をする時に師から対象と客観的に向き合うことを提案され、自分の進むべき方向を見定めたようです。写生を一生懸命して観察し、写実表現に徹した作品が多くなってきます。

安石榴

第2章「写実の研究」の展示の中には、皇居三の丸尚蔵館収蔵の「鯉」が展示されていて、これが3月24日までの展示になっていますのでご覧になりたい方は急いで見に行ってくださいね。まさに誠実に写実に徹した鯉で、美しかったです。

昭和7年の帝展に発表したのが上の「漣」で、これまでの日本画では殆ど見ることのなかった水だけを対象にした作品で(伝統的なテーマではないという意味)、しかも単純化された線による描き方だったので賛否両論を巻き起こしたのだそうです。
この漣に関しては大下絵やスケッチの展示もあって、平八郎が水面をじっくりと観察をしてスケッチをし、推敲に推敲を重ねて線の位置を的確な場所に決めて挑んだことが分かりました。これは、きわめて写実的に水面を描いた作品なのです。
この時期から平八郎の作品は装飾的な表現が際立つようになります。

新雪

こちらの「新雪」も、白い紙にグレーで丸を描いただけでは決してなくて、下地に胡粉を置いて刷毛で叩くことを繰り返して雪の質感を出したり、地面に積もる雪と石に乗った雪の色合いを変えるなど、対象を観察する写実の描き方を生かしているのです。

游鮎

釣りが好きだった平八郎は、鮎をテーマに何枚も描いています。鮎が5尾いるものが多いように思ったのですが(その他、鳥が5羽というのも多かった気がする)配置しやすい数字なのでしょうか。

大分県立美術館以外では初公開「雲」です。
はっきりとした色と単純化された形、びっくりするような大胆な構図。福田平八郎の、特に人生の後半に描かれた作品は可愛らしさがあったり、スタイリッシュだったりですが、その魅力は徹底した観察と写生を繰り返してきた結果であって、円山応挙からの京都画壇の流れに連なるものであると言えるのですね。先日福田美術館で見た応挙~竹内栖鳳~最後が福田平八郎という流れに納得しながら美術館をあとにしました。

帰りは、土佐堀川の川面がキラキラと光っているのを見ながら歩きました。上手く撮影できませんでしたが、平八郎はこういう水面を眺めて光の部分と影の部分を何度も何度もスケッチしたのだろうと思いました。

福田平八郎展、5階で行われているモネ展よりもゆっくりじっくり見られると思います。かなりおすすめです。5月6日までです。

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