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映画『オレの記念日』の衝撃:不運は不幸ではない

疲れ果てている。精神科のクリニックで処方される薬は増え、もともと弱いお腹は下痢を繰り返している。情けないが現実だ。

そんな折、金聖雄監督から「ぜひ観てほしい」と言っていただいたドキュメンタリー映画『オレの記念日』(監督:金聖雄/2022/104分)を観た。正直なところ、すがるような気持ちを抱きながら。

被写体である桜井昌司さんの人生は凄まじい。間違いなく、誰もがそう言うと思う。

違法捜査による逮捕、殺人犯の汚名、無期懲役、29年間に及ぶ獄中生活。

さらに凄まじいのはそこに悲壮感がないからだ。「不運は不幸ではない」「冤罪で捕まってよかった」、清々しく噓のない笑顔で語る。「冤罪被害者」という言い方でいいのかと混乱してしまう。

明るく、頭の回転が速く、いつもユーモアに溢れ、サービス精神を絶やさない……ように見えるし実際そうなのだと思う。けれどやはり、そのすぐ裏側にある張り詰めた思い、想像を絶する怒りや悲しみ、絶望を思わずにはいられない。

時折ちらりとだけ見せる涙があまりにも重い。桜井さんには「考えすぎ」なんて軽く言われそうだが。

桜井さんは29年間という獄中生活をどう乗り切ったのか。過去も未来も考えず、ともかく「今」に楽しみを見つけ、今日1日頑張ったと言えるように生き続けたと言う。それは修行であり、「自分自身を自分自身にした」年月だったと言う。

スウィングのポリシー、Enjoy! Open!! Swing!!! 。Enjoy! に込めた意味は、世界はクソッタレで人生なんてさして素晴らしいものなんかじゃない。だからこそどうにか楽しもう。
僕と桜井さんとは全然違うが、ここだけはちょっと似ているのかなと思う。けれど末期ガンに侵された今現在も「人生はいいことばかりじゃつまらない」と楽しむ桜井さんの一方で、いつまでも中途半端にうだうだやっているのが僕だ。仕方ない。僕は噓なく僕を生きるしかない。

桜井さんの姿が脳裏に焼き付いて離れない。やっぱりニコニコと笑っている。何かが少し楽になり、同時に何かを問われ続ける。


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