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会場専属カメラマン(結婚式撮影)

たとえば婚礼カメラマンには結婚式場の専属契約という道がある。会社でも個人でも専属カメラマンになれる可能性はゼロではない。

過去22年で10件以上の結婚式場さんから専属でどうかというお声がけをいただいたが結局ひとつも専属業者にはならなかったのは理由がある。持ち込みカメラマンとして初めて撮影に伺う会場だと当日必死に撮影場所を探してベストな場所を見つける作業があり、会場担当者さん、キャプテンさんと和めるように接して、新郎新婦様やゲストの方とも全力で良いカメラマンでお開きを迎えることができるように気配りして、大変だけど全てがハマると達成感が半端ない。

行くところ行くところが初めての会場だとその都度大変な事も多いけど、専属業者にはなりたくなかったのは、飽き性だから。

その会場でその日1日だけの撮影なら神経を尖らせて全力で頑張れる、それが2回目3回目と続いたり、専属業者になって同じ会場で年に100件とかの撮影をすることになると、言い方が悪くなってしまうがそれはただの被写体が変わるだけの作業になってしまう。同じ会場で毎週毎週撮影していればどう頑張ったってベストな撮影ポイントは決まってくるし、毎週同じ場所で撮影していたら想像力も膨らまなくなっていく。クリエイティブに見えてそれはただの製造業だ。

社会人の方に当てはまるようにわかりやすく言えば、毎日会社に出勤して同じ仕事をする作業と、出張へ出て出先の仕事に挑む気持ちだったり、転勤や転属して初日の意気込みだったりとは、同じ会社の仕事でも毎日同じ場所で行っている業務とは気持ちの持ちようが違うということはなんとなく理解ができるかと思う。

一人ひとりのお客様に目一杯神経を集中させて結婚式披露宴を撮影させて頂くことで料金を頂いているのに、毎週のことで慣れているからという気持ちで撮影するのは失礼な話しで、だから気持ちがそうなりかねない専属の契約は結んで来なかった。

ただ、もし仮に専属会場を作って1件10万円の下請け業務をして、毎週土日に4組のお客さんの撮影をすると土日で40万円、月160万円、2月8月は仕事が無いとして10ヶ月で1600万円の売上になる。

1600万円の安定した売上が担保されれば、スタッフを2人雇ってその会場専属のカメラマンとして1人500万円ずつお給料払っても1000万円、残りは600万円、これを10の会場で提携すれば売上は1億6千万円、スタッフさんの給料を差し引いた利益は年間6,000万円。

これがいわゆる経営だ、人に任せることができるということは自分の時間の余裕もできて人生豊かになる。

ただ、自分にはどうにもこのやり方は合わない。なぜか考えてみる。

趣味の山登りでは課題の決まったゲレンデクライミングがどうにも好きになれない。どう登るか自分で考えるバリエーションルート派だ。課題が決まったり、間違っているなどと他人に指図されることを極端に嫌う。

自分の事は自分で決めたい。

そう思うと、専属というスタイルは提携先の人気や業績による発注量で自分の売上も左右される、売上を自分で決めることはできない。売上が上がったら嬉しいが下がったらスタッフの給料は持ち出しだ。

そういうリスクも含めて経営をすると、リスクヘッジで売上から社内留保は残しておかないといけない。そうなるとスタッフへの給料は仕事に対する等価ではなく、リスクヘッジ分の担保を省いたものになる。

これでは近江商人の「三方良し」ではなく、経営者だけ良し。になる。

そもそも社会の構図に納得ができなかったからフリーランスになったから、経営者になりたいなんてただの一度も思ったことがなかったのを思い出した。

三方良しとは
売り手(商売人とその社員)良し・買い手(お客様)良し・世間(社会貢献)良し
で、カメラマンだと売り手良し・買い手良しまでは必ずできていないといけないけれど、結果的に社会貢献になる撮影というのはなかなか無いので、私は地元公益財団法人滋賀レイクスターズのブロンズ法人サポーターとして、地域のスポーツ振興、活性化のお手伝いをしている。

ひとつだけ誤解の無いように書いておかないといけないのは、持ち込み業者と専属業者だったら、その会場に慣れている専属カメラマンのほうがその会場に特化した知識を豊富に持ち合わせており、専属ならではの撮影ポイントなども抑えているはずなので、要望に応えてもらえる確率は専属カメラマンのほうが大きい。ただし、あまり大きな会場でカメラマンもたくさん居たりするようだと、まだ慣れていないカメラマンも居るかもしれないので、安心して任せられるカメラマンを指名したほうが良いというのも付け加えておきたい。

最後に補足として、専属契約をしなかったのにはもうひとつ、私の地域にはすでにたくさんの写真や映像の撮影会社があり、各会社が各式場と専属契約をしていたからという理由がある。すでに20年以上前から確立されている撮影業態であったので、他人の畑を荒らすような事をしていると、いつか自分に竹箆返しが返ってくると思っているので、常に今でも誰もやっていない隙間を縫って撮影業を続けるように努めてきた結果が今に至る。

ちなみに当時はホテルが顧客に撮影依頼をされて、ホテルが地域の撮影業者にお願いをするという形で写真館やビデオ制作会社が呼ばれて入っている、という今とは逆の構図だった会場も多かった事も面白い。当時はカメラマンと呼ばれる人も専門性が高くそれほど多く居なかったので、確保するのも大変だった(私は元ホテルマン)

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