見出し画像

癌も「ただの風邪と同じ」時代がやってくるのか?

元の記事をどこで見たのか忘れてしまったのですが、2016年ごろからips細胞を応用したがん治療のニュースを目にする機会が増えたような記憶があります。2016年の記事を探したところ次のような記事が見つかりました。そこから7年・・・科学技術が大幅に進歩したように感じられます。

諸器官が再生する際には、その「種」となる幹細胞と、幹細胞が増えるための「畑」となる「ニッチ」が必要となります。安藤教授はその「ニッチ」に着目し、東海大学先進生命科学研究所の平山令明所長や宮田教授らと共同で、「PAI-1」という物質が幹細胞の働きを抑える働きを持っていることを世界で初めて明らかにし、その働きを抑える薬の開発に取り組んできました。
安藤教授は、「ニッチの働きを自由に制御できるようになれば、手術に頼らないがんの治療も可能になる。近年の研究では、がん細胞にも幹細胞が存在することが明らかになっています。したがって、薬でコントロールできるようになれば体内に幹細胞が残ってしまった場合でも再発を防げるようにもなります。今後もニッチの謎を解明し、創薬につなげることでがんを薬で治せる時代をつくりたい」と話しています。

安藤教授が協力している白血病の治療薬の治験が進んでいます

免疫療法の技術

神戸大学の研究グループは、体内にある「ガンマ・デルタT細胞」をiPS細胞で増殖し体内に戻す方法を発表しました。「ガンマ・デルタT細胞」はリンパ球中に5%程度しか存在しない希少な細胞ですが、様々な方法でがん細胞を認識する能力をもつ免疫細胞です。

神戸大大学院医学研究科の青井貴之教授(49)らの研究グループが23日、ヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)から、さまざまながんを攻撃する「ガンマ・デルタT細胞」を作製することに世界で初めて成功したと発表した。
ガンマ・デルタT細胞は白血球の一種で、さまざまな種類のがんを攻撃でき、正常細胞は標的としないなどの特性がある。

世界初、iPSからがん攻撃細胞を作製 大量生産可能、免疫療法への定着目指す

一方でカリフォルニア大学は2012年に発表されたクリスパー・キャス9の技術を応用して、遺伝子操作されたT細胞を利用するCAR-T細胞療法を発表した。

クリスパー・キャス9の最大の特徴は、狙ったゲノムの場所を簡単に改変できる点にある。クリスパー・キャス9では、細胞の中の核に含まれるデオキシリボ核酸(DNA)を切断する機能を持つ人工酵素「キャス9」でDNAを切断し、切断した部分の遺伝子の働きを失わせたり切断部に別の遺伝情報を挿入することで遺伝子を改変する。
 効率的な改変は、キャス9を改変したいDNAの配列まで案内するリボ核酸(RNA)である「ガイドRNA」と組み合わせたことで可能となった。

【ノーベル賞解説】「クリスパー・キャス9」って何?

遺伝子操作されたT細胞を使う治療法は「CAR-T細胞療法」と呼ばれ、全身を循環する血液がんやリンパがんの治療では有効とされていますが、固形腫瘍では難しいと考えられてきました。CAR-T細胞は腫瘍細胞の表面に発現しているタンパク質にのみ有効なこと、固形腫瘍では表面に発現するタンパク質に個人差があることが理由です。さらに白血球の一種であるT細胞は血流で腫瘍まで運ばれますが、腫瘍細胞が免疫を抑制する化学シグナルを出すこともあり、その場合は腫瘍に近づくとT細胞の機能が低下してしまいます。

がん細胞だけ攻撃する免疫細胞をオーダーメイドで作ることに成

免疫療法の弱点

一方で、免疫療法には弱点があることも分かり始めています。再発したガンは免疫療法が効きにくいことがわかっていたようですが、その原因も明らかになりつつあります。

再発生したがん細胞の約半数が互いの内部に入り込む「細胞内細胞」を構築していることが判明します。
また細胞内細胞を詳しく観察すると、1つまたは数個の細胞核が、複数の細胞膜の層によって取り囲まれている様子が確認できました。
さらに、仲間の細胞に潜り込んだがん細胞たちは、サイズを縮小させてはいたものの、1つの細胞としての独立性を維持し続けていました。
つまり免疫療法を経験したがん細胞たちは、ある種の「マトリョーシカ化」を起こしていたのです。

がん細胞は「マトリョーシカ化」して免疫療法に耐えると判明!

薬物療法の技術

免疫療法以外にも薬物療法の技術も発展しています。東京大学はたんぱく質分解誘導薬を研究しています。たんぱく質分解誘導薬とはユビキチン・プロテアソームシステムを応用したものです。そのシステムは不要になったり合成に失敗したり、変性したたんぱく質にユビキチンを結合させてマーキングし、プロテアソームという酵素複合体で対象のたんぱく質を分解するものです。がん細胞化した病原たんぱく質を破壊することで治療を図るようです。

それでもまだ薬がない患者がいる。検査で病原タンパク質の種類がわかっても,それに対応する分子標的薬がない場合がある。免疫チェックポイント阻害剤も,免疫細胞の働きなどによっては十分な効果が得られない。
内藤が研究する「タンパク質分解誘導薬」は,これまで「薬ができない」とされてきた病原タンパク質が新たに治療の標的になるとして注目される。これまでの抗がん剤には,病気の原因になる機能を阻害して作用するという共通点がある。病原タンパク質は,抗がん剤に阻害された状態で,相変わらず細胞内にとどまったままだ。分解してしまえば一掃できる。

病原タンパク質を狙って分解

またコロナワクチンで一大躍進を遂げたmRNAワクチンも、その効果が期待されています。こちらは脳梗塞や心疾患などの治療にも期待されていてその期待値の高さがうかがえます。また、応用の簡単さも魅力の一つのようです。

「メッセンジャーRNAというのはたんぱく質の設計図、その情報の部分はいくらでも書き換えられる。ですから患者さんのがん組織を直接とって、その異常な部分を調べて、それに対するワクチンを1人1人に設計して、それをメッセンジャーRNAの形で投与する。この細胞は敵だぞ、やっつける相手だぞという風に体の免疫システムに認識させて治療に役立てる」
「薬を作ってこれをみんな使いなさいではなく、1人1人の患者さんのがん細胞に合わせたワクチンを作ることができる。そこがメッセンジャーRNAの一番の特徴」

世界初の「がん治療ワクチン」近く実現へ mRNAで脳梗塞・心疾患治療も

ウィルスを使って治療する方法

名古屋大学では遺伝子改変を行ったヘルペスウィルスでがん細胞を狙い撃ちにする方法を発表しています。

名古屋大学(名大)と東北大学は8月3日、がん細胞の表面に出てくることが多いとされるタンパク質「ポドプラニン」を見分ける「キメラ抗原受容体(CAR)-T細胞」を作り出すことに成功したこと、ならびにCAR-T細胞と同時に、腫瘍細胞のみに感染し壊す作用を持った遺伝子改変ヘルペスウイルス「G47Δ(デルタ)」を投与すると、最も悪性の脳腫瘍である「膠芽腫」の成長を抑え、生存率を高める可能性をマウスの実験で明らかにしたことを発表した。

がん細胞だけを攻撃する人工免疫細胞と人工ウイルスによる治療法、名大などが開発

終わりに

ここ10年で科学技術は大幅に発展を遂げました。コロナウィルスなんかも2000年代に発生していたらもっと多くの死者を出していたのかもしれません。
私の周囲を考えてもガンで亡くなった人が何人もいます。救える命が一人でも多く助かるように、今後の医療発展に期待し続けたいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?