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【俗見茶話】第2回

読者諸君はトレパネーションをご存じだろうか。世にも奇妙な民間療法の一種である。ようこそ俗見茶話(ぞっけんさわ)へ。ここではタイトルの通り、真に無価値な情報を私個人の独自の視点を通してお茶と共に紹介する。

お茶の紹介

 第2回のお茶はナナズグリーンティーより黒胡麻あん粒白玉ラテの豆乳変更。ナナズグリーンティーは木目調の落ち着いた質感を特徴とするカフェチェーン店で、ゆったりとした雰囲気が良い。2021年の秋ごろからドリンクメニューの乳を豆乳にするカスタムが可能となった点も評価したい。
 早くもお茶なのか怪しいが、今回書く話題もかなり疑わしい内容なので、記事全体で調子を合わせたとポジティブにとらえて欲しいところだ。

穿頭術

 穿頭(せんとう)あるいはトレパネーションと呼ばれるそれは、紀元前5000年頃のフランスの人骨でも施術の後が発見されるなどした、古来より存在する民間療法である。この記事では、現代において頭蓋損傷などによって脳に炎症が起きた際に一時的に頭蓋骨が取り除かれる、医療的治療を目的として行われる同名の穿頭については触れず、頭皮を切開して頭蓋骨に穴を開け、穴を塞ぐ処置をせずに頭皮を縫合する神秘主義的な穿頭について扱う。
 古代ギリシアの医者ヒポクラテス著書にも書かれているこの方法は、中世や近代ヨーロッパにおいては明確な根拠のないまま精神病の治療などに用いられた。開けた穴から悪霊が抜けて出ていくとされ、医学的な治療とは言い難かった。
 1960年代、オランダのカウンターカルチャー界の大御所であるバート・フーゲスは、意識の覚醒のために穿頭が必要だと説いた。1970年代に入って、イギリスの科学者であるアマンダ・フィールディングは自分自身に施術する様子を公開した。またアマンダは、穿頭によって脳の血流量(ブレイン・ブラッド・ボリューム)が増加することで大麻や幻覚剤によって起きる状態を永続的に保つことができると主張した。当時はカウンターカルチャー全盛期でもあり、神秘主義に傾倒したヨーロッパのインテリ層に受け入れられた。噂によれば、ジョン・レノンもまた穿頭を受けるために、バート・フーゲスの元を訪ねたとされる。
 穿頭の効果に関しては、より意識が明瞭になるという被術者からの報告がある一方で、脳外科医などの専門家からは否定的な見解が示されている。また、頭蓋骨が無いことによって細菌による感染症や、物理的に重大な損傷を負うリスクが存在することが指摘されている。
 一般的に多くの国で、このような明確な根拠の無い危険な手術は禁止されている。しかし穿頭の効果を認めるピーター・ハルヴォーソンによる国際トレパネーション唱道会などの主張があるため、南米にはこれを請け負う医者が存在するとのことだ。

穿頭の様子

おわりに

 インカ帝国の遺跡で発見された人骨には無数の穴が開いているそうだが、通説によると神秘主義的な穿頭とは無関係で、むしろ頭蓋骨の骨折に対する医療行為として穿頭が行われていたとされている。
 鬱状態からの回復が期待できるとする主張もあるため、気持ちが沈んでいる時には穿頭を実践しても良いかもしれない。それではまた次の俗見茶話でお会いしよう。

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