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自由な空と籠の中

ある穏やかな午後、静かな図書館の窓際に座っていたカメがふと外を見やると、図書館の入口に佇むウサギが目に留まった。彼女は遠くを見つめ、空に思いを馳せているようだった。 やがてウサギは図書館の中に足を踏み入れ、カメと目が合った。

カメが「ウサギさん、入口で何を見ていたの?」と問いかけると、彼女は少し驚いたように、「あら、見ていたのね。私は空を自由に飛ぶ鳥を眺めていたの。あんな風に空を飛べたら、どんなに素敵だろうと思って。少しでもその感覚を味わえるように、鳥を飼ってみようかしら」と夢見るように答えた。

カメは優しく微笑みながら提案した。「それなら、分類番号646.8の書架にある本が参考になるね。鳥のことが分かると思うよ」ウサギは感謝の気持ちを目に宿しながら、書架の迷宮へと消えていった。

やがて本を抱えて戻ってきたウサギは、カメの隣に座り、ゆっくりとページをめくり始めた。その表情は、まるで物語の世界に浸っているかのようだった。

しかし、しばらくするとウサギは何かに気づいたように顔を上げ、「考えてみれば、鳥たちは空を飛ぶからこそ自由なんだわ。籠の中に閉じ込めることは、それを奪うことになるわね」と、腑に落ちた表情でカメに向かって囁くと、ゆっくり本を閉じた。

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