月星真夜(つきぼしまよ)

風を感じながら走るのも、異国の香りや風景を自分の中に刻むのも好き。けれど、そんな冒険の…

月星真夜(つきぼしまよ)

風を感じながら走るのも、異国の香りや風景を自分の中に刻むのも好き。けれど、そんな冒険の合間には、図書館で本のページをめくる音や、美術館で絵画に向かって深呼吸する静けさが、私の心を落ち着かせてくれます。日々の中にある小さな奇跡を、いつも感じられる心を持っていたいな🍀 ̖́-

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ウサギの自己紹介

こんにちは!元気いっぱいのウサギです。 いつも読んでくれてありがとうございます。ここで自己紹介をさせてくださいね。 私はいつも何か新しいことを見つけては、ワクワ…

タローのダンス

その日、ウサギとカメは不思議な力に引かれるかのように、表参道の岡本太郎記念館を訪れていた。降り続く小雨を置き去りにして、二人はそっと傘を閉じ、館内に用意されてい…

主役が餃子なら…

まるで夏のような熱気が、涼しい風に変わる夕刻に、ウサギとカメは駒澤大学駅にそっと降り立った。駒沢オリンピック公園へと続く小道では、賑やかな声が響き渡り、人々が楽…

モダンガールライフ

ウサギとカメの目の前には、「ホテル雅叙園東京」の百段階段がひっそりと続いていた。1935年に出来た雅叙園で現存する、唯一の木造建築を仰ぎ見ながら、ウサギは小さく呟い…

鯉のぼりを見上げて

その日、つつじを見るために訪れた根津神社は、境内に足を踏み入れるのも一苦労なほど人で溢れ返っていた。二人は人混みをかき分け、やっとの思いで遠くからつつじの花を眺…

ふしぎなたけのこ

その日、ウサギは駅へと続くいつもの道を軽やかに歩いていた。道の両側には若葉がきらめく木々が立ち並び、風が穏やかに吹いていた。彼女はその風に長い髪を揺らしながら、…

美味しいものは半分こ

「ソフトクリームを食べたあとだし、お土産は和菓子よね」というウサギのこだわりで、ウサギとカメは「つづみ団子」というお店の前で足を止めた。「あ、きびだんごがある」…

「うなも」との出会い

おめで鯛焼き本舗で、思わぬ性格判断をしたウサギとカメは、長い戸越銀座の反対側まで歩いてきていた。あたりを見回していたウサギの目に留まったのは、「紫色のスライム」…

本当の私を解って

その日、ウサギとカメは軽いお散歩のつもりで戸越銀座を訪れていた。戸越銀座駅にある案内板を読んだウサギは、いきなり目をぱちくりさせた。「戸越銀座って、東京一長い商…

図書館は私の宝物

「今日は何の日か知ってる?」カメは、図書館の中庭でアールグレイをそっと持ちながらウサギに尋ねた。 彼女は長い髪を春風になびかせて、「4月30日と言えば…、もちろん図…

夢見ヶ崎動物公園

数日前、ウサギは図書館で動物図鑑をめくっていた。ページをパラパラと進めるたびに、彼女はいろいろな動物に夢中になっていた。「久しぶりに動物園に行きたいわ」と、彼女…

紅茶とクッキーのご褒美

その日の朝、カメはレース会場に向かうサイクルロードでゆっくりペダルをこいでいた。道の脇には黄色や白の花が咲き乱れ、一面に春の息吹が満ちていた。彼はふと、駒沢公園…

協力か それとも犠牲か

その日、ウサギとカメはロードバイクに乗って名栗湖周辺を疾走していた。カメは前を走りながら、時折振り返ってウサギの様子を確認した。彼女は遅れることなく、しっかりと…

海と星空の冒険

その日、夕暮れの図書館の中庭はオレンジ色の光に包まれており、静かに本を読むカメの背中を照らしていた。彼は分厚い本に視線を落としながら、いつも通りの穏やかな表情を…

水しぶきとの抱擁

「おはようございます!今日もウサギのティースプーンのお時間がやってきました」と、ウサギはいつものようにラジオ番組を始めた。今日のテーマは「旅のびっくり体験談」で…

しずくのぼうけん

今朝は雨が降っている。ウサギは部屋の窓辺に座り、じっと雨の音に耳を傾けていた。彼女の目の前で窓ガラスを伝う水滴は、それぞれが小さな旅をしているかのようにゆっくり…

ウサギの自己紹介

ウサギの自己紹介

こんにちは!元気いっぱいのウサギです。
いつも読んでくれてありがとうございます。ここで自己紹介をさせてくださいね。

私はいつも何か新しいことを見つけては、ワクワクしながら飛び込んでいます。「退屈」という言葉は私の辞書にはありません。時に人は私をちょっと無謀だと思うかもしれませんが、私にとって毎日は楽しい冒険なんです。

夜明けって素敵だと思いませんか?
新しい一日が始まるあの瞬間、目覚める世界の

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タローのダンス

タローのダンス

その日、ウサギとカメは不思議な力に引かれるかのように、表参道の岡本太郎記念館を訪れていた。降り続く小雨を置き去りにして、二人はそっと傘を閉じ、館内に用意されているスリッパに履き替えた。そして、ゆっくりと、絵画が待っている2階へと向かった。

「岡本太郎にダンスって、なんだかイメージがなかったけれど…」ウサギはそう言いながら、目の前の絵をじっと見つめていた。絵の中の色彩は激しく、それでいてどこか憂い

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主役が餃子なら…

主役が餃子なら…

まるで夏のような熱気が、涼しい風に変わる夕刻に、ウサギとカメは駒澤大学駅にそっと降り立った。駒沢オリンピック公園へと続く小道では、賑やかな声が響き渡り、人々が楽しそうに行き交っていた。二人が目指している CRAFT GYOZA FESの会場に到着すると、そこは餃子を堪能する人々で溢れ、さらなる賑わいを見せていた。

「今日は暑かったから、この時間に混んでいるのかしら?混雑が予想された昼間は避けてき

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モダンガールライフ

モダンガールライフ

ウサギとカメの目の前には、「ホテル雅叙園東京」の百段階段がひっそりと続いていた。1935年に出来た雅叙園で現存する、唯一の木造建築を仰ぎ見ながら、ウサギは小さく呟いた。「ここを登り切ると一階に着くの?不思議な建物ね」

隣に立つカメが静かに口を開いた。「ここは、目黒駅から行人坂を下りて来た場所。急な斜面に沿って建てられているから、99段の階段で繋がれた七つの部屋が、時間を縫うように斜めに連なってい

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鯉のぼりを見上げて

鯉のぼりを見上げて

その日、つつじを見るために訪れた根津神社は、境内に足を踏み入れるのも一苦労なほど人で溢れ返っていた。二人は人混みをかき分け、やっとの思いで遠くからつつじの花を眺めて楽しんだ。その混雑から抜け出し境内を後にすると、二人は思わず深い息をついた。「ふう、やっと一息つけるね」とカメが言うと、ウサギは「本当だわ」と安堵の笑みを浮かべた。

千駄木駅に向かって歩いてきた二人は、「団子坂 菊見せんべい総本店」の

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ふしぎなたけのこ

ふしぎなたけのこ

その日、ウサギは駅へと続くいつもの道を軽やかに歩いていた。道の両側には若葉がきらめく木々が立ち並び、風が穏やかに吹いていた。彼女はその風に長い髪を揺らしながら、こんもりと繁る竹林に差し掛かった。

ウサギはふと足を止めて、竹林を見つめた。彼女の目の前のたけのこは、数日前に見た時よりもずっと大きくなっていた。「こんなに早く大きくなるものだったかしら?」と彼女は心の中で問いかけた。その小さな疑問は、静

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美味しいものは半分こ

美味しいものは半分こ

「ソフトクリームを食べたあとだし、お土産は和菓子よね」というウサギのこだわりで、ウサギとカメは「つづみ団子」というお店の前で足を止めた。「あ、きびだんごがある」と静かにショーケースを見つめるカメの隣で、ウサギは「どれがお勧めですか?」と冷静に店員に聞いていた。

店頭に並べられた和菓子の中から、ウサギはようやく三つを選び出した。そしてカメに向かって少し申し訳なさそうに、「どうしても食べたいものが三

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 「うなも」との出会い

「うなも」との出会い

おめで鯛焼き本舗で、思わぬ性格判断をしたウサギとカメは、長い戸越銀座の反対側まで歩いてきていた。あたりを見回していたウサギの目に留まったのは、「紫色のスライム」だった。

「うなぎいも? ってなに?」彼女は店頭にあるタペストリーを読み始めた。 「鰻の頭や骨を肥料にして栽培したサツマイモだから『うなぎいも』なのね。どんな味なのかしら?」ウサギはカメの手を引きながら、軽やかに店の中へ入っていった。

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本当の私を解って

本当の私を解って

その日、ウサギとカメは軽いお散歩のつもりで戸越銀座を訪れていた。戸越銀座駅にある案内板を読んだウサギは、いきなり目をぱちくりさせた。「戸越銀座って、東京一長い商店街なのね。全長1300メールもあるわ」

気合いを入れ直した二人が、最初にたどり着いたのは「おめで鯛焼き本舗」というお店だった。「お好み鯛焼きが人気みたい」とカメが言うと、「新製品の広島風お好み鯛焼きっていうのもあるわよ」と、ウサギが指を

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図書館は私の宝物

図書館は私の宝物

「今日は何の日か知ってる?」カメは、図書館の中庭でアールグレイをそっと持ちながらウサギに尋ねた。 彼女は長い髪を春風になびかせて、「4月30日と言えば…、もちろん図書館記念日ね」と言葉を弾ませた。

カメは静かに話し始めた。「今の時代、図書館に来れば、誰もが当たり前のように本を読むことができる。けれど、本がこんなに自由に読めるようになったのは、19世紀の後半からなんだ。長い人類史でみれば、それはま

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夢見ヶ崎動物公園

夢見ヶ崎動物公園

数日前、ウサギは図書館で動物図鑑をめくっていた。ページをパラパラと進めるたびに、彼女はいろいろな動物に夢中になっていた。「久しぶりに動物園に行きたいわ」と、彼女はそっとつぶやいた。隣に座っていたカメは静かに笑みを浮かべながら、「夢見ヶ崎動物公園に行ってみようか」と彼女に提案した。

急な階段を上がって迷路のように入り組んだ住宅街を抜けると、二人は動物園の入り口にたどり着いた。園内を歩き始めると、ウ

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紅茶とクッキーのご褒美

紅茶とクッキーのご褒美

その日の朝、カメはレース会場に向かうサイクルロードでゆっくりペダルをこいでいた。道の脇には黄色や白の花が咲き乱れ、一面に春の息吹が満ちていた。彼はふと、駒沢公園でウサギに言われた言葉を思い出した。「ギリシャの兵士のように走ってね」と。

スタートの号砲が鳴ると、カメは静かに足を踏み出した。まずは、自分の体調を確かめてみる。脚は軽やかに動き、呼吸も穏やかだ。「調子は良さそうだ」そう心の中で小さく呟く

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協力か それとも犠牲か

協力か それとも犠牲か

その日、ウサギとカメはロードバイクに乗って名栗湖周辺を疾走していた。カメは前を走りながら、時折振り返ってウサギの様子を確認した。彼女は遅れることなく、しっかりとカメの後ろをついてきていた。風の抵抗を少なくするために、二人は20センチの間隔を保ちながら、先頭を交代しながら走っていた。

「近藤史恵さんの『サクリファイス』を読んでいたら、久しぶりにロードバイクに乗りたくなったの」と、誘ったのはウサギだ

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海と星空の冒険

海と星空の冒険

その日、夕暮れの図書館の中庭はオレンジ色の光に包まれており、静かに本を読むカメの背中を照らしていた。彼は分厚い本に視線を落としながら、いつも通りの穏やかな表情を浮かべていた。そこへウサギが軽やかにやってきて、彼に声をかけた。

「カメくん、ウサギのティースプーンへのメールありがとう。そのことでちょっと聞きたいんだけど、北海道まで泳いだって、あれは本当なの?」ウサギは、ずっと心に秘めていた疑問をそっ

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水しぶきとの抱擁

水しぶきとの抱擁

「おはようございます!今日もウサギのティースプーンのお時間がやってきました」と、ウサギはいつものようにラジオ番組を始めた。今日のテーマは「旅のびっくり体験談」で、リスナーから寄せられた様々なメールを前に、彼女の声は弾んでいた。

「次にご紹介する体験談は、ラジオネーム『図書館大好きなカメ』さんからです。『僕のびっくり体験は、青森から北海道まで泳いだことです』とのことです。えっと、北海道って泳いで行

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しずくのぼうけん

しずくのぼうけん

今朝は雨が降っている。ウサギは部屋の窓辺に座り、じっと雨の音に耳を傾けていた。彼女の目の前で窓ガラスを伝う水滴は、それぞれが小さな旅をしているかのようにゆっくりと動いていく。窓から見えるいつもの景色は、雨の日は少し特別に見える。彼女は、そんな雨の日が好きだった。

ウサギはふと思い出したように、本棚から一冊の本を取り出した。「雨の日に読むなら、この本だね」と彼女は呟いた。その本の表紙には、一輪の赤

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