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【KHM期スタンダード】グルールフード調整録【PTトップ4入賞】

0.前書き

こちらで記事を書くのも実に10カ月ぶりとなってしまった。
昨年5月に前回の記事を書いた直後、MTG人生で初となるPT(現在でいうChampionship)に参加し6-9という箸にも棒にも掛からない成績を残して以降、ジェットコースターのように時間が過ぎていったような気がする。

PT前にスタンダードの練習がてら出たShowcase Challengeで棚ぼた的にMO Showcase予選の権利を得たかと思えば、8月の同大会で優勝。Magic Onlineの世界選手権的立ち位置であるMOCSに招待された。

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そしてその副賞として12月のZNRCSに出場。1度目は世界の舞台に立てるだけで嬉しかったが2度目となると話は違う。今度こそ仕留めるつもりで同じく権利を持っていたRedbull Untapped2020チャンプのテルテルさん(@teruteru8140)、日本選手権2020秋チャンプのナダルさん(@Re_nadal_go)と共に初のチーム調整を行った。
…が、まさかのチーム全員初日落ち。スタン&ヒストリックの混合フォーマットの難しさ、そして世界の壁を感じる苦い結果に終わってしまった。

2連続で結果を残せなかったことによる燃えつき症候群で一度は休止も考えた。が、2週間後のアリーナPTQを抜け3度目のPT権利を獲得した。正直これに関しては今でもバカヅキでしかなかったと思っている。マジックは中々離してくれない。

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MOCSとKHMCS、同時に二つの大型大会を控えることとなった自分はこう考えた。

「これ、一人でやるの無理では?」

何しろ、フルタイムで労働している自分にとってモダンとヴィンテージキューブ、そしてスタンダードとヒストリックというそれぞれ全く性質の異なるフォーマットを短期間で極めようとするには圧倒的に時間が足りない。

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労働は悪

そこで今回調整に付き合ってもらうことになったのが、近年オンライン上で目覚しい活躍を見せるチーム、通称Akio Prosの面々だ。
実はZNRCSの権利を獲得した辺りから調整Discordへのお誘いは頂いていたものの、こちらから発信できることが少なくサーバー内で空気と化していた。だが今回はチーム内で自分含め権利持ちが5人いることもあり、何か力になれればと思い本格的に調整に参加することにした次第だ。


ということで前置きが長くなってしまったが、今回の記事ではチーム内から使用者をトップ4に送り出したスタンダードのグルールフードについて、同デッキをサブミットするに至った経緯や構築思想を中心に解説していく。私自身は結果を残せなかったものの、デッキの初期案からサイドボードのカード選択に至るまで、調整の大部分に携わったプレイヤーの視点として読んでほしい。

4/4追記 先ほど、久代さん本人執筆による記事が公開された。


こちらの記事ではヒストリックフォーマットも含めたチームでの調整録がより詳細に記してある上、有料部分では久代さんがPT出場のためにこれまで取り組んできたという、普遍的なマジック上達のためのアドバイスが書かれている。当記事のデッキガイドと合わせて楽しんで頂けると幸いだ。

また、後半の有料部分ではボーナストラックとして現環境での各マッチアップのサイドボードやプランニングをより詳しく解説していくつもりだ。記事を読んで少しでも興味を持った方は購入やサポートで応援していただけると嬉しい。(大部分は無料で読めるのでそうでない方も最後まで読んでくれると嬉しい)
日本選手権本戦、MOPTQと環境末期ながら競技イベントは少なくない為、まだ使うデッキが決まっていないという方も是非参考にしてほしい。

1.環境の把握

『カルドハイム』リリース以降のスタンダード環境は混迷を極めていた。
近年では連日行われるオンライン大会によるメタゲームの高速化により、一週間前に勝ち組だったデッキが既に時代遅れということも珍しくない。
更に上位デッキがブラッシュアップされ切った環境末期ともなれば、環境から弾き出され使用するに値しないと判断されるデッキが出てきたり、所謂一強環境になってしまうのが最近の流れだが、今回は少々話が違った。

度重なる禁止改訂でカードパワーが均衡状態になったことで、未だメタ外も含め多種多様なデッキに可能性が残されていたのだ。

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こいつらの前では

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どんぐりの背比べ

この辺りの環境の変遷は原根健太氏による公式連載記事(第5回:『カルドハイム』期スタンダードの「始まり」と「今」を追え)(第6回:「なんでもあり」の『カルドハイム』期メタゲームを紐解く)を読むのが分かりやすいと思うので各自参照していただきたい。

それだけならまだしも、上位デッキ間で見逃せない相性差が存在しているのも問題だ。
ライフゲイン手段に乏しく大振りなアクションが多い【スゥルタイ根本原理】は【赤単】や【白単】の単色アグロに弱く、逆に単色アグロは《恋煩いの野獣》《砕骨の巨人》要する【ティムールアドベンチャー】を乗り越えられず、それを飛行トークンのチャンプブロックで受け流せる【サイクリング】【ナヤクラリオン】が食い、それを全体除去や必殺技で咎める【スゥルタイ根本原理】が食い……といった感じで、あちらを立てればこちらが立たず。何を選んでも裏目が発生するジャンケン環境。それが《カルドハイム》期のスタンダードだった。

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国内最後のスタンダード大会であるSekappy COLOSSEUMが終わった時点でチーム内評価が高かったのは二つ。【サイクリング】と【ティムールアドベンチャー】だ。

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サンプルリスト 第二回 Sekappy COLOSSEUM優勝 tanastria1224#83381

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サンプルリスト 第2回Sekappy COLOSSEUM Kumazemi#96615

だが自分はこの二つのデッキに対して以前ほどの魅力を感じなくなっていた。
というのも、環境の一角として意識されてしまったことで世間一般で有利とされているデッキに対しても、そこまで圧倒的な相性差がついていないと思ったからだ。

例として【サイクリング】は【スゥルタイ根本原理】に有利とされているが、メインとなるトークン戦略がマナ加速からの全体除去や《出現の根本原理》に間に合っていないことも多く、結局ゲームを決めるのは終盤の《天頂の閃光》頼りになりがちだ。この辺りからスゥルタイ側のリストが最適化され始め、メインから《エルズペスの悪夢》を置かれたり《強迫》や《否認》をサイドインされたりし始めたのも不利だと感じた理由で、それに対抗しようとこちらもメインボードから《否認》や《中和》などのカウンターを入れようとすると今度は単色アグロへのサイドが足りなくなる。使いたい理由を見失った。

【ティムールアドベンチャー】にも同じことが言えた。【サイクリング】や【ナヤクラリオン】に対抗しようと専用サイドを入れると今度は【スゥルタイ根本原理】相手のカウンターが足りなくなる。
またメイン《アールンドの天啓》4枚の形が主流になりつつあるのも個人的には疑問だった。序盤を出来事カードやタップインの処理に使いたいデッキの都合上、予顕コストで置いておく暇はなく《黄金架のドラゴン》のマナ加速が無ければ唱えづらい。オーバーキルか唱えても負けになりやすいカードという印象で、本来有利なはずの単色アグロや【スゥルタイ根本原理】にもこのカードが嵩張ったせいで負けることが増えてきた。
とはいえミラーマッチではこのカードの枚数差が勝負を分けそうなのはいただけない。こういうデッキがミラーで食い合うようになったら終わりだと思っているので、できれば別のデッキを使いたい。


この時点でサブミットまであと一週間。賞金やPT権利の期待値が高いMOCSに向け別フォーマットにオールインしていた自分はいよいよ路頭に迷った。

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ちなみにMOCSは2-4で賞金上乗せ無く死亡しました。右下のジャパニーズが僕です。(引用元

2.環境の伏兵

そんな時、調整サーバーに前環境終盤久代さんが使っていた【グルールフード】のリストが貼られているのを発見し天啓が降りてきた。

参考:久代さんによるNote記事

【スゥルタイ根本原理】が出現して以降、文字通り賞味期限が切れたと思われていたフードデッキ。

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だが研究しているプレイヤーがいないだけで、よく見れば現在の環境に必要な要素が殆ど揃っているではないか。

1.単色アグロに強い→出来事クリーチャー、《意地悪な狼》

2.トークン戦略で詰まない→《貪るトロールの王》《エンバレスの宝剣》

3.クリーチャーデッキ対決でリソース負けしない→《パンくずの道標》《グレートヘンジ》

既存のデッキで全てに有利を取ることが無理なら新しく作り出すしかない。こうして【スゥルタイ根本原理】以外に有利な理論上最強デッキ、【グルールフード】の調整が始まった。


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元が緑単ベースな為、様々な色の組み合わせが考えられたが、自分はまずカウンターをタッチしたティムール型から調整を始めた。《ケトリアのトライオーム》《寓話の小道》は元々入っていた枠で、そこに両面土地を足すだけで《出現の根本原理》に対抗できるなら色は足し得だと思っていた。
だが程なくしてデッキの欠陥に気付く。そもそもカウンターが【スゥルタイ根本原理】に対して強くないのだ。
【グルールアドベンチャー】ほど序盤のクロックが早くなく速攻クリーチャーもいないこのデッキでは全体除去が致命的な為、そこにカウンターを使わされる展開も多い。そもそもサイド後は《長老ガーガロス》《鎖を解かれしもの、ポルクラノス》等の生物でこちらのクロックを止めてくるプランに変わり、通すとダメなカードが多すぎて1枚や2枚カウンターを引いたくらいでは勝利に直結しない。中~終盤の展開を6マナ域のクリーチャーに頼っているのに、《ギャレンブリグ城》を4枚取れないのも痛い。この案は没だ。

他の調整メンバーは黒を足してハンデスや《フェイに呪われた王、コルヴォルド》をタッチしていたがこの案も最終的には没になった。

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ハンデスはカウンターと同じような理由で有効ではなく、唯一メイン採用できそうなハンデスである《エルズペスの悪夢》も単純なカードパワーの面で赤いカードに劣ると判断された。
ジャンド型はマナベースの不安定さ以前に、《フェイに呪われた王、コルヴォルド》が環境的にマッチしていないように感じた。《魔女のかまど》+《大釜の使い魔》のコンボがない現在のスタンダードでは、自分の土地やクリーチャーを不確定なドローに変えるリスクの高いカードでしかなく、キャストや攻撃のスタックで《厚かましい借り手》や《巨人落とし》を合わせられると目も当てられない。

次に自分が回したのはグルール2色に纏めた形だ。

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クロックが少ないなら入れてみようということでサイドに《山火事の精霊》を4枚採用したが期待していたほどの活躍はせず没。《恋煩いの野獣》が殴りやすくなる点は評価できたものの、土地が余らないデッキの都合上後引きが許容できず、序盤に出しても全体除去でついでに流されるだけのカードに4枚も枠を割く余裕はなかった。

しかし、感触に反してラダーでの勝率は圧倒的だった。

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そもそも【スゥルタイ根本原理】に当たっていないというのもあったが、メインデッキの強さと環境的な立ち位置の良さを確信した自分は、この時点で赤緑の2色にほぼ確定。以降は対【スゥルタイ根本原理】のプランを確立すべく、サイドボードを煮詰める作業に入った。

3.環境の解答

ダイレクトマッチでひたすら【スゥルタイ根本原理】とやり合った結果、徐々に有効なサイドカードが見えてきた。
《ガラクの先触れ》《乱動する渦》の二つだ。

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《ガラクの先触れ》は全体除去でしか処理されない高クロックかつ、後続のクリーチャーを確保してくれる点で優秀。《乱動する渦》はカウンターやハンデス以外で《出現の根本原理》に対抗できる唯一のカードで重ね貼りしても強いため、ほぼ専用サイドながら枚数を採る価値はあると感じた。

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更に追加で《解き放たれた者、ガラク》を1枚採用。《古き神々の拘束》されても3/3トークンが残り、全体除去にも耐性があるこのカードはサイド後のプランにマッチしていた。
3つのカードに共通しているのは、サイド後増えるであろう相手の除去に対して裏目を作れる点だ。このプランにより、マナ加速から最速で《出現の根本原理》を撃たれる展開以外なら最終的に押し切れると判断した。

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そしてこのタイミングでサイドに《アクロス戦争》を2枚追加した。《パンくずの道標》で探せる各種クリーチャーデッキへのキラーカードであることは勿論、これもまた【スゥルタイ根本原理】のサイド後の《長老ガーガロス》へのカウンターとなるカードだからだ。

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サブミット直前のラダーでは【スゥルタイ根本原理】に3-0しつつ13-1と圧倒的な勝率を叩き出し、初めてミシック1位を取ることもできた。
こうして【スゥルタイ根本原理】以外に有利、【スゥルタイ根本原理】にはメインを落としてもサイド後2本取り返せる環境の解答が遂に完成した。

4.提出したリストと各カードの採用理由

そしてこれが最終的にサブミットしたリストだ。今回同デッキを使った4人のうち自分のみメインボードの構成に若干差異があるのでその辺りも解説していく。

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・インポート用リスト

デッキ
4 意地悪な狼 (ELD) 181
1 漁る軟泥 (M21) 204
4 金のガチョウ (ELD) 160
4 砕骨の巨人 (ELD) 115
3 グレートヘンジ (ELD) 161
4 カザンドゥのマンモス (ZNR) 189
4 岩山被りの小道 (ZNR) 261
2 ケトリアのトライオーム (IKO) 250
4 寓話の小道 (ELD) 244
4 ギャレンブリグ城 (ELD) 240
7 森 (ANB) 112
3 山 (ANB) 114
2 髑髏砕きの一撃 (ZNR) 161
4 恋煩いの野獣 (ELD) 165
2 エンバレスの宝剣 (ELD) 120
3 貪るトロールの王 (ELD) 152
1 魔女のかまど (ELD) 237
3 パンくずの道標 (ELD) 179
1 長老ガーガロス (M21) 179
1 巨大猿、コグラ (IKO) 162

サイドボード
3 乱動する渦 (ZNR) 156
1 漁る軟泥 (M21) 204
1 レッドキャップの乱闘 (ELD) 135
2 アクロス戦争 (THB) 124
3 ガラクの先触れ (M21) 185
2 運命の神、クローティス (THB) 220
2 火の予言 (IKO) 116
1 解き放たれた者、ガラク (M21) 183

・メインデッキ61枚とマナベース

リストを見てまずメインボードが61枚なことに目が行かないプレイヤーはいないと思う。これは調整チームに久代さんがいるからというだけでなく、一応60枚教の皆さんを納得させられるだけの理由がある。

主な理由はマナベースの問題だ。4枚入った《ギャレンブリグ城》の為に森カウントは減らしたくなく、かといって《ケトリアのトライオーム》を増やし過ぎると序盤の《寓話の小道》含めタップインが多くなりすぎてしまう。
《漁る軟泥》の起動コストや《ギャレンブリグ城》を引いていない時の《貪るトロールの王》の受けを考えると両面土地や《寓話の小道》はなるべく緑で置きたいが、《エンバレスの宝剣》《髑髏砕きの一撃》と赤のダブルシンボルを要求するカードも入っている。このデッキは見た目以上にマナベースがタイトなのだ。
そこで私達はメインボードの61枚目として土地を追加することに決めた。スペルを削ることも一応考えたが《パンくずの道標》で比較的1枚積みカードを探しに行きやすいこのデッキでは《魔女のかまど》や《漁る軟泥》をメインに差しておく恩恵は大きい。
また《グレートヘンジ》を4t目に出したい関係で《カザンドゥのマンモス》はできるだけクリーチャー面でプレイしたいことや、5~6マナ域が複数入っている都合上土地を多めに入れてフラッドするよりもスクリューして何もできず負けるリスクを減らすべきだと思ったのも理由だ。
チーム内にデッキ枚数を増やすことに抵抗がない人間が多く、ここの部分だけは特に反対意見が出ることもなく一致したのは興味深かった。

・メインボード

《金のガチョウ》4
《意地悪な狼》4
《恋煩いの野獣》4
《砕骨の巨人》4

デッキの根幹。お馴染みの出来事生物に加えたフードパッケージのおかげでクリーチャーデッキに有利を取れることがコンセプトなので枚数を減らそうと思ったことはない。この構成の《恋煩いの野獣》は自身の出来事でしか1/1を出せないのは注意。

《パンくずの道標》3
《魔女のかまど》1

フードパッケージその2。《パンくずの道標》は元々4枚だったが1枚引ければ《金のガチョウ》《貪るトロールの王》で充分アドバンテージを稼げること、2t目にこれからスタートして強いデッキが環境に殆どいなかったことから被るリスクを考慮し3。
《魔女のかまど》は相手の《厚かましい借り手》《砕骨の巨人》等を腐らせたり《貪るトロールの王》を複数回リアニメイトしたり《意地悪な狼》のサイズを一気に上げられたりする便利カードだがこれも被ると弱いので1。

《エンバレスの宝剣》2

赤を足す理由。元々は【サイクリング】や【ナヤクラリオン】などのトークンデッキを乗り越える為にタッチしたが【スゥルタイ根本原理】のフルタップを咎めたりキルターンを早くする点でも非常に有用だった。横並びするデッキではない点と《パンくずの道標》で探せる点から2枚が適正枚数と思われる。

《漁る軟泥》1

サイド枠の節約兼、メインボードから【青黒ローグ】や【サイクリング】に対してメタカードを取りたかった為1枚採用。

《貪るトロールの王》3
《巨大猿、コグラ》1
《長老ガーガロス》1
《グレートヘンジ》3

フィニッシャー枠の配分はチーム内で意見がかなり割れた部分だ。
最終的にチーム内の他の3人は《貪るトロールの王》3枚目と《グレートヘンジ》3枚目を、それぞれ《長老ガーガロス》2枚目と《巨怪な略奪者、ヴォリンクレックス》に変更したのだが、この配分にした自分なりの理由を書いていきたいと思う。

《グレートヘンジ》を3枚にしたのは、クリーチャーデッキに対して取りこぼしたくないという意思の表れだ。単色アグロは構造上有利なのだが、《グレートヘンジ》が貼れていないことでライフが足りなくなったり手数で押し切られる展開も少なくなかった。また、同じ《グレートヘンジ》デッキである【ティムールアドベンチャー】や【ナヤクラリオン】にも、片方が《グレートヘンジ》を貼れていないとそれだけで一方的な展開になることが多く、様々なクリーチャーデッキに対しゲームプランの要になるカードだと判断。被るリスクを負ってでも3枚目を採用したいと考えた。《巨大猿、コグラ》を最後まで残したのも《グレートヘンジ》同系を見据えての事だ。

《貪るトロールの王》3枚目は単純に食物シナジーを減らしたくなかったこともあるが、5~6マナ域の中で一番除去の裏目が少なく、また警戒持ちで相打ちしても損しない攻守に優れたカードなのでその点を評価している。
また、ミッドレンジ同系など消耗戦になるマッチでは《貪るトロールの王》を何度も墓地からリアニメイトさせる展開になるので重なっても強い点も枚数を減らしたくないポイントだった。
特に対【青黒ローグ】では、1枚目が打ち消されたり切削で墓地に落ちてもどこかで《貪るトロールの王》を通せれば即座に2枚目をリアニメイトできる疑似脱出クリーチャーとして使える為、3枚目を採用することで専用の脱出カードを採らなくても勝率を担保できていた。

似たスペックを持っていて、より1t残った時に勝ちやすい《長老ガーガロス》は《厚かましい借り手》や《巨人落とし》された時のテンポロスも大きいハイリスクハイリターンなカードだと考えたので1枚に抑えた。ただ、《黄金架のドラゴン》が止まらなすぎることは事実なのでここはリスクを負ってでも2枚採用するべきだったかもしれない。

・サイドボード


《乱動する渦》3
《ガラクの先触れ》3
《解き放たれた者、ガラク》1

主に対【スゥルタイ根本原理】。《ガラクの先触れ》は対【青黒ローグ】や【4cドゥーム】に対してもサイドインできるので4枚目を入れたかった。

《レッドキャップの乱闘》1
《火の予言》2

軽量除去枠。アグロには元々有利なので最低限に、3マナ以降のカードが多いので軽いカードを優先。《焦熱の竜火》との比較は被った時弱い、重いカードをボトム送りにできる《火の予言》に軍配が上がった。

《漁る軟泥》1
《運命の神、クローティス》2

対【青黒ローグ】【サイクリング】など。墓地デッキは数を減らすことが予想されたのでなるべく他のデッキにも入れられる広いカードで代用。

《アクロス戦争》2

前述の通りで、直前に増やして大正解だった枠。現在は【スゥルタイ根本原理】のメインに《長老ガーガロス》が入っていることや、今後ミラーマッチが想定されるのでメイン採用も視野に入れている。

5.大会結果とこれから

結果から言うと今回のPTは、個人としてはスタンダード1-2 ヒストリック0-2の惨敗に終わってしまった。自信のあったスタンダードで【ティムールアドベンチャー】に2回マッチし、2回とも惜しい展開でこちらの致命的なプレイミスにより負けてしまったので悔いが残る。(一つは後述のTips集に戒めとして書く)

しかし…同デッキを使ったチームメイトである久代さんこと茂里憲之選手が見事トップ4に入賞!

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スイスラウンドではスタンダード6-1,ヒストリック4-3とスタンダードで大きく勝ち越しているのが分かる。
そしてチームメイト4人で同じデッキを使い、Day1,Day2合わせて11-5。勝率換算すると68.75%と、明確にデッキ勝ちしたと言える結果になった。
世界最高峰の大会で自分たちのチームが取り組んできたことが正しかったと証明されたことが何より嬉しかったし、若いプレイヤーの活躍にも刺激を受けた。
一旦PT権利は無くなってしまったものの、今回のチーム調整を通して学んだメタゲームに囚われないデッキ選択を活かし、再びこの舞台に戻ってきたいと思う。

6.終わりに

さて、今回は自身3度目となるPT出場に向けた取り組みと思考の過程を記事にしてみたがいかがだったろうか。
久しぶりに記事を書いたこともあり、個人の思考、チームの調整録、デッキガイドの要素が複合的に混ざった読みづらい記事になってしまったかもしれない点は反省している。次回以降に活かしたい。
そして、今回調整に付き合ってくれた久代さん(@kushiro_mtg)、そーとりゅ~さん(@mtgreew)、てる公さん(@Mmmttg
)、藤江竜三さん(@mtg07643192)及びAkio Prosメンバーにこの場を借りて感謝の意を述べたいと思う。

記事に書いていないことで、何か個別で質問があればこの記事のコメントか、私のTwitterアカウント(@BWD_shine)にリプライやDMを飛ばしてくれれば可能な限り対応する。最近は中々時間が取れていないが、稀にTwitch(twitch.tv/azatoyellow)で配信もしているのでそこでのコメントや質問も大歓迎だ。
また重ね重ねになってしまうが、追記には上記のリストでのサイドボーディング&マッチアップガイドを書いた。デッキに興味を持ってくれた方、記事を楽しんでくれた方は購入やサポートで応援してくれると非常に励みになる。

というわけで、ここまで読んでくれた方はありがとう。
この記事がPTを目指す貴方の助けになっていれば幸いだ。

7.ボーナストラック~サイドボーディング&マッチアップガイド~

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