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映画 フロリダ・プロジェクト

1日1映画をはじめました。

今週は「猟奇的な彼女」「パターソン」と来て、今日は「フロリダ・プロジェクト」。特に今日の映画はすごく心を揺さぶられたので、この使命感と共に今noteを書いています。

フロリダ・プロジェクト」は「タンジェリン」のショーン・ベイカー監督の2017年の作品で、2018年のアカデミー賞とゴールデングローブ賞では 出演者のウィレム・デフォーが賞を取っています。

映画の舞台はフロリダディズニーランド付近のモーテル。そこで仕事もなく、その日暮らしの生活を送るヘイリーと娘のムーニーの物語です。

フロリダ・プロジェクト2

ヘイリーは決まった仕事もなく、モーテルの賃料をぎりぎり稼ぎ、あとは夜遊びをしたりして怠惰に暮らしていました。一方、ムーニーは毎日のようにモーテルの友達と自由奔放に遊び回り、冒険のような日々を送っていました。二人は貧しく、最低辺な暮らしをしていましたが、そんなことなど見えていないように、あるいは見ないように、毎日破天荒に楽しんでいたのです。

この映画でまず苦しかったのは、母であるヘイリーの「無知さ」です。口の利き方や態度の悪さからも滲み出るように、きっと彼女はちゃんと教育も受けず、子供の頃からこういう生活をしているのではないか、と推測させられます。

というのも、娘であるムーニーの振る舞いが、母ヘイリーにそっくりなのです。二人はもう、本当にコピーみたいに下品な言葉を吐くし、まず常識というものがありません。貧しく無教養な親の元に生まれてしまったら、子供もそのように育って、まともな働き方も喋り方も教えてもらえないような。生まれた時点で道を閉ざされ、そこに大きな社会のギャップがあるような、そんな気がしました。

ヘイリーは無知ゆえに後先考えずに犯罪行為も行うし、子供がいるのに売春までしてしまう。ムーニーも無知ゆえに火事を起こしてしまうし、母親の犯罪にも協力してしまう。

フロリダ・プロジェクト4

ヘイリーは無知ではあるのですが、大人です。なので犯罪をしているということは分かるし、売春行為を繰り返してこの先自分がどうなっていくかも、なんとなく想像はつくんですよね。なんとなく分かるけど、最悪な結末からなんとか逃げようと、必死にあがく。だけどそれは根本的な解決にはならないし、悪あがきなんです。それでも必死に生きて、必死に娘と一緒に暮らそうとするんです。

ヘイリーは最低な人間ではあるけど、劇中で娘のムーニーに対して一度も暴力を振るっていないし、同じレベルで一緒に遊んでいるんです。娘を置いて行けば自由に男と二人で暮らすことができるけど、それを選ばなかった。「娘を愛している」というベクトルまで、ヘイリー自身が親として成長はしていなくとも、「彼女は確かに娘のたった一人の母親である」という認識は持っていたのです。

最後のシーンで二人が児童相談所のスタッフや警察に激しく抵抗するシーンがありますが、あの二人は本当によく似ています。

国という信用できない得体の知れないものが、二人を引き離そうとしている。

冷静に見たら、ムーニーは新しい家族の元へ連れて行かれた方が、幸せで安定した未来が待っているはずです。でも、彼女にとっては母親と友達がすべて。このモーテルでの生活がすべて。そこから永遠に引き離す得体の知れない大人は敵です。

ムーニーはただ一人しか頼ることの出来ない友達の元へと必死に逃げます。友人もすべては理解できないけど、ムーニーのことを助けたい一心で、彼女の手を引きます。

そしてそのまま二人は夢の国へと突っ込んでいくのです。

その後のことは想像出来ます。きっとムーニーは児童相談所に見つかってしまうだろうし、ヘイリーも一人になって、どうなってしまうんだろう。胸が引き裂かれる思いです。

フロリダという、ホリデイをのんびり楽しむような観光地にだって貧しさは広がっています。すぐ周りを見渡せば、決まった家のない人たちだらけなんです。そんな生活を送らざるを得ない人たちが、仕事にもつけずにどうやってまともな生活を送れば良いのでしょうか。

彼女たちを根本的に助けてくれる人はいたのでしょうか。

無知は罪ということなのでしょうか。

ではなぜ無知になってしまったのでしょうか。

この映画は、経済大国アメリカの中で、当たり前に埋もれている社会問題を、無知で無邪気な親子を通して描いた作品です。

最後になりますが、支配人役のウィレム・デフォーがすっごく良かったです。(賞も総ナメだし!)

フロリダ・プロジェクト3

厳しいけど愛があるというか、彼女たち親子を一番近くで見守ってきたのは支配人のボビーですよね。親子が引き裂かれた時、ボビーも本当に辛かったでしょう...。

全体的には映像も綺麗で楽しく、ストーリーはリアルで、本当にポップなのに苦しい作品でした。

良い映画だった...!

みのり


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