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旅費を払ってでも行きたい。「閉鎖宣言」で参加者が殺到したエコツーリズム


SWAQ TOKYOは、ファッションスワップの他に清掃活動も行っています。ECO WALK TOURと呼んでいる活動で、毎月第3日曜日の朝に有志メンバーが集まって、主な拠点になっている表参道、渋谷エリアを散策・交流しながら清掃を行うというものです。
自分たちが好きな街を少しでも綺麗にしたい。旅行者や初めて街を訪れる人なども含めて、もっといろいろな人に好きになってもらいたい。そんな思いではじめた活動です。今回は、世界が驚くようなダイナミックな計画でツーリズムとエコを結びつけた事例を紹介します。

大人気観光地の「封鎖」宣言

「週末に島を『閉鎖』します」
昨年、とある島の首相の宣言が、世界中を駆け巡り、ニュースやSNSで話題になりました。その島とはフェロー諸島。ノルウェーとアイスランドの間に位置し、18の島で構成されたデンマーク自治の島々です。温暖な冬と涼しい夏で知られ、ヴァイキング(9世紀から12世紀の間に西ヨーロッパとの交易を行って栄えたスカンジナビア半島の民)の伝統を残した豊かな文化や、北欧神話を思わせる幻想的な風景を誇る人気観光地。過去にはナショナルジオグラフィックトラベラーが選ぶ、世界一訪れたい島の一位に輝いたこともあります。

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なぜこんな宣言がなされたのでしょう。人の手の入っていない自然の風景が魅力のこの島々には、近年ある深刻な悩みが。観光資源が、観光客によによってじわじわと痛めつけられていたのです。人口わずか5万強のこの島々に訪れる旅行者は、年間約10万人。島民の二倍の数の人々が、島の外から訪れていることになります。観光地のメンテナンスが追いつかず、過去には止む無く人気観光地までの道を封鎖しなくてはならないこともありました。

旅費を払ってボランティア?

観光は島の大事な産業。魅力的な観光地としてイメージを損ねることなく、島の状態を保持するにはどうすれば良いか。広告エージェンシーがあるキャンペーンを打ち出します。ツーリズムとボランティアを掛け合わせた、ボランツーリズムです。週末の数日間、通常の旅行者を立ち入り禁止にする。その代わりに、清掃やメンテナンス活動をボランティアで引き受ける人だけを受け入れるというものです。首相の閉鎖宣言も、これを受けてのものでした。

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参加者の活動は無報酬。旅費なども全て自費です。果たして人が集まるのだろうかという懸念もあったそうですが、蓋を開けてみれば大盛況。わずか2日間で3500人の応募が集まり、早々に応募を締め切ることに。最終的には25の地域から100名のボランティアが選ばれ、活動に参加しました。


資源を守り、生かし、発信する「一石三鳥」

島の自然を守る取り組みはもちろん素晴らしいのですが、このキャンペーンの凄いところはさらに一歩踏み込んで、活動を効果的な宣伝につなげているというところ。「閉鎖」は500以上のメディアで取り上げられ、SNS上での反応は3400万を超えました。世界中で話題になったことで、広告費を一切かけずに島の観光PRにも繋がったのです。

https://www.dandad.org/awards/professional/2020/232735/faroe-islands-closed-for-maintenance/

逆光を逆手にとり環境保全と効果的な観光PRを実現したキャンペーンは今年、ロンドンにある非営利団体D&ADが主宰する権威あるクリエイティブ章も受賞しました。コロナ禍の厳しい観光業においてもヒントになる事例なのではないでしょうか。




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