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「ベニシアの『おいしい』が聴きたくて」(梶山正著)を読んで

京都大原でハーブ研究家、英会話講師として活躍し、NHKEテレ等での番組「猫のしっぽ カエルの手」に出演されていたベニシアさんをご存じで、番組をご覧になっていた方が多いかと思います。
ベニシアさんは、昨年6月に、PCA(後部皮質萎縮症)、後に誤嚥性肺炎のため、72歳で天国に旅立たれ、パートナーだった山岳写真家の梶山正さんが「彼女が歩んだ軌跡を残そう…、書いて残さなければ…。ベニシアのために。見守り続けてくれた家族や友人たちに」と、8年間の介護生活を、ベニシアさんから「おいしい」の言葉を聴きたかった気持ちを籠めて、標記のご本に纏められ、今年3月に出されました↓

お二人は、正さんが経営していたカレーショップで出会い、南アルプスの仙丈ヶ岳の頂上で結婚式を挙げました。



第1章 ベニシアを介護しながら歩んだ最期のとき    
    失われゆく視力に不安を抱きながら
    生きるベニシアとの日々

べニシアさんの40年来の友人、アメリカ人のライター、ナレーターのキャシー・アーリン・ソコルさんが、ある日、ベニシアさんに寄り添い、温かい言葉を伝えながら、インタビューして記録した映像です↓
ベニシアさん。
「かつて私は何かをするとき、人の助けになればいいと思って行動していました。でもいまは私のために、何かをして欲しいと思っています」
――後段は、命に向き合っている故の切迫感からだと思います。
「私は死にたいわけではありませんが、死んでしまっても、それはそれでいいのです。私はベストを尽くしました。自分にできることをしようとしました」
「私は怖くありません。起こるべくして起きたのだと思います。だから、これから1日、1日、どうなっていくのかみてみましょう」
――来たるべきものに、冷静に向き合える強さ。

ベニシア・スタンリー・スミスさんが語る「現在の思い」 Venetia Stanley-Smith【Special interview】

ベニシアさんは、次第に目が見えなくなり、正さんが介護を行うようになりましたが、正さんは腰痛に悩まされ、不安で眠れない日々を過ごしました。医師のアドバイスを受けながら、必要なトレーニングを受けて、介護に取り組みました。ベニシアさんは周囲の意向を受け入れ、施設入所しましたが、最期は自宅で過ごすことができ、正さんが献身的に寄り添い続けました。
2023年6月21日朝。
ベニシアさんの横で寝ていた正さんは、ハッと目が覚めました。
ベニシアさんの顔は温かくとも、「ベニシアは息をしていない」。
「ハッと目が覚めたのは、ベニシアが呼んでくれたのに違いない。
よくやった。よく頑張った。最後の最後までよくぞ生き抜いた。おめでとう」
「ベニシアに朝陽が射していた。
生き抜くことの尊さを、彼女は身をもって教えてくれた。最期まで人生をまっとうしたあなたに強い存在を感じる。
彼女は天上へ旅立った。静かに光るベニシアを感じる。ベニシアは神様になったのだろう。
ありがとう」

第2章 ベニシアの「おいしい」が
    聴きたくて
    僕は夢中で料理を作った
     故郷の食べ物を囲んで、
     友人たちとわいわい語るのが好きだった

正さんは、ミディアムのロースト・ビーフを無心に食べて、幸せなベニシアさんの顔を見たくて、挑戦し、作れるようになりましたが、叶いませんでした。

お二人の生き方は愛情と思いやりに溢れ、ベニシアさんは、日々の生活を慈しむこと、自然との調和や、ゆとりのある生活の大切さを示してくれました。

あとがき
「7月と8月の間、僕は抜け殻状態だった。
 べニシアのあとを追って僕も死ぬつもりでいた。
 8年間の介護生活を通して、人を深く愛することと信じることの尊さを、ベニシアが教えてくれた」

ご参考までに。昨年、上映された映画「ベニシアさんの四季の庭」の予告編です。

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番組「猫のしっぽ カエルの手」の挿入曲、BGMを担当されたのはピアニストの川上ミネさんで、どの曲も大原の自然、お二人がお住まいだった築100年の古民家にマッチして素適で、番組のテーマ曲「道」↓に出会い、川上さんの大ファンにもなりました。
ベニシアさんと川上ミネさんは不即不離です。
「馨」はアルバムタイトルです。

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