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白鳥静香先生のノートより 17 古代の道徳、現代の道徳 (モンテカルロ・ノートより)

白鳥静香先生のノートより 17 古代の道徳、現代の道徳 (モンテカルロ・ノートより)

倫理学において、

道徳というと、

いろいろな思想がありますが、

私たちが普段、

道徳といわれてまず思い浮かべるのは、

「相手のいやがることをしない。」

とか、

「隣人に親切にする。」ということだと思います。

それはもちろん道徳的なことですが、

でも現代、

それだけでは道徳は足りない時代になってきて

いるのではないでしょうか?

普段、

私たちが道徳と考えている

「隣人に親切にする。」という道徳は、

古代*にできた道徳の延長です。 

20世紀を代表する哲学者のひとりであったヤスパースが、

「枢軸時代*」と名づけた時代の道徳です。

*(紀元前500年頃を中心に前後300年くらいの範囲をいう。

インド、中国、ペルシャ、ギリシャ、パレスティナ
などの各地で、

その後の世界に多大な影響を与える、哲学、宗教、科学などの
思想が一挙に形成された時代。)

なぜこの時代に

道徳ができたかというと、

都市や大帝国の形成という、

いわゆる、現代、「文明」といっているものが、

この時代にできているからであるでしょう。

まったく異なる文化や習慣を持つ

部族や民族の人たちが、

同じ都市でともに暮らしてゆくには、

共通の道徳を制定する必要があったということです。

そして

もっというならば、

それらの文明同士の接触や衝突などが活発になってきたことも、

共通の道徳思想の必要性を高めたのでしょう。

でも、

現代はもう、

環境が変わっています。

現代の社会が、

古代、道徳思想が形成されはじめた時代の社会と
最も違うのは、

現代の社会が、

民主主義の社会になっているということでは

ないでしょうか?

(インターネットの普及により、
世界における民主主義化はさらに加速しているでしょう。)

民主主義とは、

私たちひとりひとりの決断が、

世界全体のあり方に影響を与える政治制度です。

その政治制度を運用してゆくためには、

私たちひとりひとりに、

世界全体のことへの広い関心と、

自分の決断が世界にどのような影響を与えるのか?
ということにたいする見識(知識)が、

(具体的には経済や政治や歴史の知識ということに
なるでしょうが。)

絶対に不可欠です。

18世紀末、

フランス革命の時代、

哲学者であり、

革命政府の議員のひとりでもあったコンドルセは、

国民全員に平等な普通教育を与えることを、

共和制(民主主義)の大前提としました。

このことは、

民主主義を運用してゆくためには、

国民ひとりひとりに一定以上の見識が不可欠である

ということを、

コンドルセをはじめとする革命政府の人たちが

自覚していたからであったのでしょう。

民主主義の時代である現代、

私たちひとりひとりの決断は、

確実に世界全体に影響を与えてゆきます。

現代、

道徳はただ、

自分自身の近くにいる人に親切であるという以上に、

世界全体のことを考える広い関心と、

自分自身の決断が世界全体にどのような影響を与えるのか
ということにたいする

見識(知識)が大切になってきているのでは

ないでしょうか?

現代、

知ということと道徳ということとは、

けして切り離すことのできないものとなって

いるのです。

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