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誰が為の入浴か

もう3日は風呂に入っていない。

そう気がついたのは、なんとなく決めている頭のTo Doリストに追加された“入浴“の項目が、いっこうに消化されないまま残されていたからだ。

気分が落ち込んでくると、まず何よりも先に清潔行動がままならなくなるのはいつものことである。



全ての瑣事を放棄する為に、纏った洋服を脱ぎ捨てる。

求められた役割も、ぴんと張った緊張の糸も、どうしようもない自分自身すら。

そうして布団に入ってしまい、柔らかな重みを首元まで引き上げて、次回の空腹が訪れるまでぐっすりと眠る。

今が一体何時で、朝か夜かすら曖昧なまま、日々をただやり過ごすのだ。

何をしているかと問われれば、本当に何もしてない。

物語にすらならない小さな出来事を、そっと積み重ねて今がある。

知育玩具とも言われない、無垢の木切れに似た出来事の連続を、どうやって人に伝えたら良いのだろうか。

私の人生に訪れるようになった安寧は、温い肌の匂いを伴って現れる。

人間の尊厳など勘繰り捨てて、欲求の赴くままに生活をする。

そのあまりの無為さに耐えられなくなって、私は再び眠るのである。


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