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SW/AC Library |鹿子裕文『へろへろ-雑誌『ヨレヨレ』と「宅老所よりあい」の人々』

実際にSW/ACの本棚にあったり、相談員らが参照する読みものを紹介するSW/AC Libraryです。

SW/ACがつなぐ福祉/介護/障害/対話/アートの領域などなどをテーマに、それぞれの分野に馴染みのない人にも接点や関心を持つきっかけになる書籍などが登場します。執筆は相談員の小泉です。

対話形式の文章です。訪問者がこられたら、SW/AC でどんな相談の場をつくるのかも垣間見えるかもしれません。

〈以下の相談内容は実際の相談ではなく、架空の創作です。また紹介する書籍の文章表現を尊重して文章を構成しています。〉

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相談者の方がSW/ACに来られました。会社員として働きながら、休みの日は京都で舞台稽古に励む人たちの写真や映像を撮って、編集するのが好きなのだそうです。

相談者:今度関わる作品には、おばあさんが出てきて、これから一人で暮らし続けられるのか迷うという場面が出てきます。介護施設は街の中にいっぱいありますよね。中がどんなふうなのか全然知らないな、おばあさんをどんなふうに撮ればいいのかなとふと思って。何か参考になるものはありますか?

SW/AC:高齢者やその生活、介護のことを考えてみたいという感じでしょうか。今は季節柄、施設を訪問するのも難しいので、鹿子裕文さんの『へろへろ-雑誌『ヨレヨレ』と「宅老所よりあい」の人々』(筑摩書房、初版ナナロク社)を読んでみてはどうでしょう。

IMG_5809のコピー

なんかゆるいタイトルですね。装丁も独特。

挿画イラストは、奥村門土(モンドくん)。高齢者介護に関わる本とは知らずに、なんだかページをめくりたくなって、鹿子さんの言葉のジェットコースターに乗せられてどんどん読んでしまう、そんな本ですよ。

宅老所って昔の介護施設のことですか?

そういうものが全国にあった、という話ではないんです。デイサービスの施設や特別養護老人ホームなどが少なかった時代に、街に住むある一人の「ぼけたばあさま」を介護する場所をつくろうとして、つけた名前が宅老所よりあい、だったようです。名前もそのばあさまにお伺いを立てて、彼女からの一言で固まったのだとか。

どのあたりが面白いですか?

宅老所よりあいを取り巻く人たちが奮闘する様子ですね。「人に沿い、混乱に付き合う」というテーマで彼らは動いておられます。人に沿うというのは、「寄り添うのではない」と鹿子さんは言います。私もこの本を読むまでは違いを考えたことがなかったのですが。

沿うというのは、川に沿って歩くように、相手に合わせてこちらが歩調や道筋を変えていくことなんですよね。

人に沿うということはどういうか、奮闘される様子がレポートされています。ジャム作り、人集め、話し合い、掃除などなど全てが創意工夫の塊です。著者の鹿子さんは、宅老所よりあいのおもしろい雑誌『ヨレヨレ』編集長なのですが、彼も人に沿い、混乱に付き合って雑誌をつくることになったようです。

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だんだんなんの話かよくわからなくなってきましたけど、登場する人たちに興味が湧いてきました。

ぜひ読んでみてください。人と人とが付き合うことから何をなしうるのか。反省や希望も湧くたくさんのアイディアが詰まっています。登場する人たちが向ける人々へのまなざしが本当に素敵です。




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