『空中都市アルカディア』9
四、 マリシカ
マリシカがマネージャーになってからしばらくたったある日、学校の裏でカルスと他数名の不良少年たち五人が、彼女を囲んでいた。
カルスが言った。
「いいだろ?パンツの写真を撮るだけなんだ」
「やめてください」
内気なマリシカはぶるぶる震えて、小さな声で言った。
カルスはいやらしい顔をして言う。
「写真が売れればその売り上げの一部をあんたに払うぜ」
マリシカは震えて言った。
「やめてください」
カルスはスカートに手を入れた。そのとき。
「やめろ!」
校舎の表から声を掛けた少年がいた。
カルスは振り向いた。
「ライオス」
ライオスは言った。
「おまえら、その子から離れろ、消えろ、さもないと俺がボコボコにするぞ」
カルスは言った。
「人数見てもの言えよ。ホバーボードもないくせに」
それでもライオスは近づいて来た。
ケンカが始まった。ライオスは傷だらけになりながら、五人と戦った。ほとんど打ちのめされた。しかし、何度も立ち上がった。
マリシカは泣いて言った。
「ライオス先輩・・・!」
ライオスはマリシカの前に立って言った。
「この子に手を出すな。不良ども、去れ」
カルスは言った。
「不良か・・・。この真面目野郎が、おまえもポルノ写真くらい見るんだろ?その撮影を邪魔すんじゃねえよ」
ライオスは言った。
「俺はそんなものは見ない。俺は倫理の島アルカディアに行くんだ。清廉潔白な人間として生きるんだ」
そのとき、表から大人の男性の声が聞こえた。
「コラー!そこで何してる!」
カルスは舌打ちした。
「ちっ、先公だ。おい、みんな、逃げるぞ」
カルスは子分を連れて逃げてしまった。
男性教師はマリシカとライオスの所へ来て言った。
「きみ、大丈夫か?」
ライオスは笑って言った。
「大丈夫です、ぼくは。それよりこの子のほうがよっぽど怖い目に遭っています」
教師はマリシカに言った。
「何があったんだい?」
マリシカは言った。
「上級生の男子たちが、わたしのパンツの写真を撮ろうとして・・・そしたら、このライオス先輩が助けに来てくれたんです」
教師はライオスを保健室に連れて行き、マリシカを家まで車で送った。
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