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【冒険ファンタジー長編小説】『地下世界シャンバラ』6

第二章 洞窟への旅路

一、マール国にて

ここは闘林寺の東の平野にある大国マール国の首都、碁盤の目のような区画整理された広大な都の北端にある王宮、りゅう昇殿しょうでん、玉座の間。金色の服を着ている太った若い王は側女そばめを膝の上に抱きながら玉座に腰掛け、目の前にいる跪いた将軍アガドの進言を聞いていた。
「陛下、地下世界シャンバラに我が軍は侵攻すべきと存じます。シャンバラには多くの財宝があると聞いております。しかも、その財宝の中のひとつ、というか、最高の秘宝、黄金のダイヤにはそれを持つ者の世界征服を可能にする魔力があると言われています」
王は言った。
「世界征服か。そうすると余にどんないいことがある?」
王は膝に乗せた側女の唇を吸った。アガドは跪いて答えた。
「世界中の富が陛下の物となります。山海の珍味、世界中の女たち」
王は身を乗り出して言った。
「ほう、世界中の女たちか。この大陸中の女という意味か?」
「いえ、この大陸だけではございません。世界中でございます。西方世界にいると聞く金髪の白い肌の女や、さらに遠くの黒い肌の女なども手に入るということでございます」
アガドはニヤリと笑って言った。王も笑みがこぼれた。
「それは楽しみだのう」
若い王は側女の乳房をまさぐりながら言った。
「で、そのシャンバラへの入り口は見つかったのか?」
「まだでございます」
「なに?」
「しかし、手は打っております。スパイを山岳地帯に放っております」
「で、何か動きはあるのか?」
アガドは言った。
「山奥の小国、ラパタ国の王女ルミカが、シャンバラへ向けて出発するとの情報がございます」
「ラパタ国か・・・」
若い王は側女の下着の中に手を入れて考えていた。
「その王女はシャンバラへの入り口がわかるのか?」
アガドは答えた。
「霊感の強い娘でして、シャンバラで真実を探求したいとかいう小娘にございます」
「あー、真実か、余の苦手なタイプだな。そうだ、シャンバラに入るためには鍵が必要であるとか?」
「はっ、震空波という武術が鍵とかで、闘林寺の僧にその使い手がいるそうでございます。王女ルミカは闘林寺の者を同行させるとのことです」
「どうなのだ?その闘林寺の僧と、ラパタ国の王女を捕えて強制的にシャンバラへの道案内をさせては」
アガドはかしこまって言った。
「は、そうするという選択肢もありますが、その場合、僧や王女が協力しないという可能性がございます。シャンバラへ軍事的に侵攻すると言えば、その者たちは反対するでしょう」
「マール国王の命令でもか?」
アガドはさらにかしこまって言った。
「怖れながら陛下、陛下の権力はまだ、山奥の辺境までは充分に行き渡っていないのが現状でございます」
「そうか、そうなのか」
「それゆえ、陛下にはシャンバラの秘宝が必要なのでございます」
「なるほど、白い女や黒い女を抱くにはその秘宝が必要なのだな?よし、そちにすべて任すぞ。余はその秘宝以外いらぬ。シャンバラの財宝は、そちが兵士たちへの褒美とするがよい」
「は、ありがたき幸せ。では、失礼つかまつります」
アガドは玉座の間から引き下がった。
 アガド将軍は王宮を出るとその黄金の巨大な建物を振り返りニヤリと笑って呟いた。
「ふん、無能なブタめ、せいぜい女と戯れているがいい」


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