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本屋大賞が欲しい

私は小説家を目指しているのだが、以前は芥川賞を受賞したいと思っていた。しかし、私が志すのは既存の純文学というジャンルではなく、いわゆる物語である。
読んでいてワクワクするものを書きたいのだ。
芥川賞は華やかであの金屏風には今でも憧れているが、私が受賞したいと最近思うのは本屋大賞である。これは書店員が一般の読者に読んで欲しい物に賞を与えるという趣旨で作られたものと聞いている。だから、毎年その時期になると書店の店頭には受賞作だけではなく、ノミネート作品も平積みで並ぶ。まこと華やかである。
私がこの賞を知ったのは、第二回のときで、あのときは恩田陸の『夜のピクニック』が受賞したと記憶している。私はその本を読んで、「ああ、この人はそのうち直木賞を受賞するだろう」と予想した。私の慧眼は当たっていて、何年後か忘れたが彼女は『蜜蜂と遠雷』で直木賞を受賞している。私はどちらかというと『夜のピクニック』が好きだ。読んでいて楽しかった。あの読書体験の記憶は今でも残っているからたいした物だ。
他にも私は本屋大賞受賞作品やノミネート作品をそれなりに読んでいる。
和田竜という作家がいる。彼の『のぼうの城』も本屋大賞受賞作『村上海賊の娘』もまるでマンガを読んでいるような印象だった。これは褒め言葉である。私もマンガを読むような感覚で私の小説を読んで欲しいと思っている。『村上海賊の娘』はラストの辺りは、「ちょっとマンガ的過ぎやしないか」と思ったが、面白かった。ただ、私は芥川賞作品のようなずしんと来るテーマ性も欲しいと思う。いや、和田竜を責めているのではない。彼がその後どんな作品を書いているか知らないが、きっと面白いものを書いているに違いない。
辻村深月の『かがみの孤城』。これを私は古本で単行本を買ったと記憶している。そのあと、本屋大賞を受賞したと思う。これは面白く読めた。記憶にも残っている。しかし、また読みたいとは思わないし、一度読めば満足してしまう作品だろうと思う。謎解きを中心にした作品は大概そうだ。しかし、それが文庫化されたとき大きな書店の入り口付近にかなり広いスペースで平積みにされているのを見て、「いいなぁ~、俺の作品もああならないかなぁ~」などと羨望の眼で思った。
私にとって馴染みのある文学賞は、芥川賞、直木賞、本屋大賞、それからノーベル賞である。あとの賞は知らない。
芥川賞もそうだが、一部の作家が審査員になっている。そこには文壇というのが存在している。文壇で認められるかどうかが受賞かそうでないかが決められる点になる。そこには文壇の閉鎖性がある。私は文壇で認められる作品を目指したりはしない。多くの人が楽しめる作品を書きたい。そういう意味では賞をもらうとしたら、本屋大賞が一番魅力的に思える。

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