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【SVJPイベントレポート】トレジャーデータ創業者 芳川裕誠さん - Ask Me Anythingセッション

2020年10月20日〜10月22日にシリコンバレー・ジャパン・プラットフォームと世界最高峰の起業家育成プログラムを提供する米国アクセラレーターであるY Combinatorが共催した、シンポジウム「Road to Silicon Valley-世界から求められる日本のテクノロジー-」。YC出身の起業家2名と海外で活躍する日本人起業家がホストとなって、参加者からのさまざまな質問に答えるAMA(Ask Me Anything)セッション。ホスト1名に対して参加者を20名に限定したセッションで、Treasure Dataの創業ストーリーから始まり、参加者の悩み、質問に対して考えやアドバイスについてお話いただきました。

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芳川 裕誠
Hironobu Yoshikawa
Treasure Data 創業者

日本生まれの起業家で、現在シリコンバレー在住。2001年より米Red Hatで勤務。2007年より三井物産のベンチャーキャピタル事業に所属しソフトウェアを中心とした技術投資を担当、2009年にシリコンバレー事業所に転勤。2011年、マウンテンビューにて米トレジャーデータ社を共同創業し、創業以来CEOを務める。同地の著名VCなどから複数回に渡り合計5400万ドル(約57億円)を調達し、売上数百億円、従業員数400名超まで成⾧。2018年7月、英Arm社が米トレジャーデータ社を総額約6億ドル(約660億円)で買収。

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Q1. 日米の投資家が起業家に求めるものに違いはありますか?米国の投資家を入れるメリットやバリューはあったと感じますか?

"VCに求めることは日米で変わらない"


トレジャーデータは初期の段階で日本の投資家はほとんどいなかったので、初期の資金調達では日米の違いはよくわかりません。もちろん人にもよると思いますが、米国のVCは資金調達の方法や選考方法など場数が多いので、がある程度パターン化されやすいのではないかなと感じています。

ただ、当時は投資を受けるにあたってボードの構成はすごく気にしていました。特にアメリカの投資家のいるボードミーティングは常に緊張感は高かったものの、今考えると常にサポートしてくれたし、実際に多くの顧客や人材を紹介してくれたなと感じているので感謝しています。日本でもアメリカでもVCに求めることは同じだったので、結論からいうと、米国も日本もあまり変わらないというのが僕の実感です。


Q2. 米国にチームを作る予定です。米国でチームづくりは日米で大きく異なるのでしょうか。


"なぜ自分のスタートアップに入社するのかを見極める"


あまり日本人とアメリカにいる人たちの違いを意識しすぎない方が良いかなって思います。日米関わらず、自分の経営のビジョンや価値観を作り、それに沿った仲間を採用していくことがファウンダーとしてやるべきことだなぁと思います。

よくメディアや記事等で出ている、シリコンバレーでは人材の流動性が極めて高いというのも半分本当で半分は嘘です。(笑)もちろん米国には日本企業のような終身雇用があるわけではありませんが、普通にGAFAのような大企業にいる人のうち、上に昇進していく人はあまり辞めない印象が強いですね。

そういう意味では、スタートアップに入る人との面接の際に、企業ビジョンへの共感だけでなく、なぜ自社に入社したいと考えているのかという点を深く掘り下げて聞いた方が良いと思います。やはり人材のミスマッチは防ぎたいですし。本当なら知り合いからの紹介があれば尚良いですね。あとは、オファーにエクイティや報酬はしっかりと準備することも大事ですね。失敗したくないですが、そこで報いれることもあるので。

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Q3. スタートアップがグローバルエクスパンション(海外展開)を検討するタイミングはどこか?その際にどのようなチームを組成したか聞かせてください。


"日本ではなく米国で起業をすること"


GoogleやZoomのような企業を創り上げるためには、日本ではなく米国で起業することが重要だと考えています。米国の人口比は日本の約3倍でGDPは約4倍ありますが、IT産業のマーケットサイズ比率は日本の方が大きいんです。ただ、ソフトウェアやアプリケーションのシェアを日本で獲得したとしても、言語やUIの文化等を考えると、なかなかグローバルに展開していくことは難しいと思います。米国で起業するメリットの1つは、ある程度事業が軌道に乗ると、自然と国外の顧客も増えていくということです。トレジャーデータは特別海外展開を意識したことはないですし、その点で、事業のグローバル展開を検討している日本企業は思い切って米国に進出しても良いのではと思っています。

Q4. スタートアップを始めたばかりのタイミングで、現在プロダクト・マーケット・フィットについて常に悩んでいるが、トレジャーデータ創業時、PMFについて確信を持てた時期はどのタイミングなのでしょうか?


”プロダクトマーケットフィットとRepeatability”


何をもってPMFとするのかについては議論があるものの、よく言われるのは利用者のユースケースや営業の仕組みという点での"Repeatability"だと考えています。特に自分たちはデータベース企業なので、データベースの使い道は非常に多くあって、そういう意味では、ある程度の事業方向性は事前に決定していた節はあったのかなと感じています。

"我々のソリューションを誰が実際に欲しがっているのか"


一方で、トレジャーデータがアプリケーション・スタックの方向に進んだ理由としては、エンジニア向けだけに商売するのは難しいと判断したからです。GoogleやAmazonのようなメガベンダーがコモディティ化を進める中で別の道を模索すべきだと考えたんです。そこで、我々のソリューションを通じて得られるデータを本質的に欲しがっているのは、実はマーケティング部隊だったり経営陣だということに気づいたんですよ。じゃあそういう人たちをターゲティングしていこうとすると、売価が10倍〜20倍程度にまでアップしたんです。意味もなく値段を上げている訳ではなく、提供するものもそれに応じて大きくなるんですけど、結果的に顧客の目線を上げて良かったと考えています。そういう意味では、トレジャーデータはもともとある程度のプロダクト・マーケット・フィット(PMF)は考えていたものの、実際にビジネスを進めていくうちにPMFを修正していった企業だと言えるのではないでしょうか。

“小さな施策、インサイトを積み重ねる"


起業して4,5年くらい、順調に成長していてはいたものの視野・視座・視点を意識的に1つあげてみようと思ったことがありました。開発を始める前に、お客さんと沢山話したり、プロダクトのパッケージを変えたり、ソリューション名を変えてみたり、UIを少し変えてみたり、少し対象とする顧客(マーケッター)向けに小さな施策を積み重ねてみて、”これはいけるね”と確信をもてるようになりました。それで始めて、コアの開発の方向性を変えて進んでいきました。

※本記事は、2020年10月22日に参加者を限定開催したのAsk Me AnythingでのQ&Aのやり取りの一部抜粋です。

SVJP Entrepreneur Program “シリコンバレーへの挑戦“のイベント全体のレポートは以下リンクよりご参照ください。


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