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フエギアの香りを組み合わせてみる

 以前「香水を組み合わせてみる」でいくつか重ね付け案を紹介したけど、今回はフエギアだけの組み合わせネタが溜まったのでフエギアオンリー記事です。
 フエギアはもともと香りを重ねることを前提に作られているということで、創業者のジュリアン・ベデルも「いい組み合わせがあったら教えて!」と店員たちに言ってるそう。だから4月に彼が来日したとき思わず便箋にしたためて送っちゃったぞ。ニコニコで喜んでくれた😊 便箋のネコ柄にも喜んでくれた😸

ニコニコのジュリアンと恐れ多くて次元を歪ませた私(2023/4/8 伊勢丹新宿)


●私のやり方

 基本は同じ場所に1プッシュずつ。少しずらして重ねます。
 失敗したときはクレンジングで拭き取ればスッキリ。


●この記事の注意点

 香りのイメージを掴もうとすると、それが人物として浮かび上がってきて勝手に動き出すことがよくある。漫画家の言う「キャラが勝手に動く」みたいなかんじだ。必ずというわけじゃないし、重ねればどんどん変わっていく。
 香りのイメージとして伝わりやすいんじゃないかなと思うので、彼らの事もちょっと書きます。
 香水の名前は原語表記で書き、カタカナになったら人物の話。混じることもある。

 また今回は3つの組み合わせが多いのだが、その内の2つだけでも良い香りが出来る。分量も好みで調節すると楽しいよ!



Arábica + Biblioteca de Babel + Luna Roja

 スパイスの効いたコーヒーとワイン、ホカッと落ち着くくつろぎの時間。

 最初は伊勢丹新宿のポップアップで限定発売されたコンポジションセットII-XXIIIを参考にしようと思ってたんだけど、Tagore持ってないから代わりにBiblioteca、個性の強いXocoatlと甘いQuilomboはやめて代わりにLuna Rojaを呼んだらラインナップがすっかり変わってしまっていた。
 まあコンポジションセットはいっぺんに付けるのではなく、時間を置いて重ねてゆき、その移り変わりを楽しむものらしいので…うん、君たちはまた後でね。

 Bibliotecaのシナモンとウッディが暖かく落ち着いていて、Arábicaの苦みがコクを生み、その向こうでLuna Rojaの甘いワインの香りがゆらりと誘う。こりゃいいや。めちゃくちゃ幸せな気持ち。
 Tagoreはカルダモンとコリアンダーの清涼感スパイシーなので、シナモンとウッディのBibliotecaとはまた違うはず。次回サンプル買うとき頼もう。

 アラビカは黒人の男。スルッとヌルっとしてる。無口だが愛想ゼロじゃないし喋る、でもちょっとクセがあって付き合う人が限られてるかんじ。でも悪人というわけではない。独特な魅力があって、なんだこいつって思う人もいれば危ない雰囲気に惹かれる人もいて、ちょっと喋ってみるとあっさり打ち解けたりして…。モデルさんとかなのかな…芸能関係っぽいんだよな。

 ビブリオテカも無口で無表情な無愛想タイプ。でも優しさが溢れてる。体が大きくムスッとしていて見た目は怖いけど、気付くと猫や鳥が群がってるディズニープリンセス属性。だから彼の周りには人も集まるし、みんなほっこりしてる。悪そうな男もイケイケ美女も自然と集まっちゃう。こたつかな?

 ルナロハちゃんは小悪魔女子。黒髪ロングをゆるゆる巻いて絶妙なメイクの濃さと肌見せで多くの男に愛想振りまいてる。かわいくておしゃれでネガティブなこと言わないから女子人気も高い。頭の回転が早くて巧みな話術でみんないい気持ちにさせてくれる。は〜かわいい。

 ArábicaとBibliotecaだけだとダンディで物腰柔らかなおじ様になる。シダーが加齢臭みたいになるよね(笑)、これがいいんだ。
 この3つを合わせるともうそこは大人の空間…もう図書館じゃない、なんか…バーとかかな…(下戸で行ったことない)。暗い店内、木製の家具に染み付いた酒と煙草の匂い。大人だな〜。最高じゃん。可愛い子ちゃんがいてもバベルのこたつパワーで性的な印象も衝動性も抑えられてる。

 ちなみにLuna RojaをやめてQuilomboにすると、よりまったり、穏やかに。とても健全になります。


Arábica + Xocoatl + Tinta Roja

 甘く、輝き、かっこよく。ギラリと決めて。

 これは私の中で大ヒットの香り。オススメ!!

 XocoatlとTinta Roja。ティンタロハ酒!チュベローズの香りが好きでお酒も好きという方にぶっ刺さる、甘くおしゃれでつよつよな香り。これは男性にもやってもらいたいな。
 キーンとしたラムの強さをバニラとチュベローズのクリーミーさが包み込む。Xocoatl単体よりもアルコールを強く感じる不思議。

 ArábicaとXocoatl。キーンとした強いラムの響きにコーヒーの深みと酸味がマッチ。いつもならギラギラと目立つXocoatlが抑えられてズシッと落ち着き、辛口の酒に。 これはイケメン…。

 そして3つを合わせてみると…ショコアトルはなんも言わんが横の二人はええ…って顔してる。でも、これが最強無敵の3人になっちゃうんだな。派手だな~(笑)。
 土台をしっかり抑える重低音のArábica、でも癖があって簡単には近づけない悪い雰囲気。それを物ともしないXocoatl、度数の高いアルコールが圧倒してくる。でもTinta Rojaが花の甘さでふんわり包み込むと、ラムの強烈さを手懐けて膝で寝かせてしまう。滲み出したArábicaの油も回り、気づけば原色の渦の中、ビカビカ眩しく、ぐるぐる夢心地。泥酔。

 Xocoatlは私が初めて買ったフエギアの香りだったんだけど、ずーーーっと得体の知れない謎の生き物だったんだよね。どんなやつか想像してみても、なんか…謎の…ファンタジー世界のふわふわ浮いてるクリーチャーだったんだ。だから表情も考えも何も掴めない。
 でも、彼らを引き合わせたらやっと擬人化してくれた。めちゃくちゃ独特な感性を持った唯一無二のカリスマ男だった。やっぱ表情も考えも何も掴めないけど(笑)。いつも目ぱっちりで口だけニコニコしてる。すごく奇抜で派手な格好してるのにかっこいい。擬人化しても独特だったね…!
 アラビカくんはそんなショコアトルに通ずるセンスを持ってて、でもチャラチャラせず色やデザインを組み合わせてオシャレしてる。ティンタロハちゃんは何着ても似合うね。なぜか気が合う、不思議なイケイケ3人組ができちゃった…。


Arábica + Luna Roja + Tinta Roja

 悪い男と美女2人。ネオンきらめく夜の街。

 うーむ思った通り両手に花…色気がむんむんだよ…。
 Arábicaの癖のある深みが女子2人を刺激する。女子だけでもいいんだけど、やっぱ悪い男がいると違うね。Tinta Rojaには天然っぽい無邪気さがあるから、あけすけにエロいというより”ワルい”。ここはたくさんの人が楽しそうに行き交う夜の街だから、まだ変なことは出来ない。
 花の香り、果実の香り、うふふと顔を寄せ合って笑う女たちの高い声、酒が入ると気が大きくなって、男の誘いに乗ってしまう…。

 Tinta RojaとLuna Roja。ロハ姉妹と勝手に呼んでいる。他人同士だけど学園アイドルみたいな二人。
 ティンタロハはボリュームのあるオレンジっぽいブロンドで全体はゆったり毛先はくるくるのウェーブ。甘い目付きでニコニコ。胸も大きい。戦略的ぶりっ子。よく気が回るので嫌われにくい、というか嫌いにくい。実際かわいい。
 ルナロハはブルネットのゆるふわウェーブではっきり大きい目にダークな赤リップ。スレンダータイプ。知的で頭の回転が早く、それをうまく出したり隠したりして、より上位の男を狙う。社交的で女子人気も高い。
 お互いをライバル視するよりうまく付き合った方が都合がいい、ってんでよくつるんでる。特に仲良しではない(笑)。でも色違いコーデとかして一緒に出かける。パパ活なんかしてないし自分を売るような安い真似はしない。彼らが勝手に貢いでくれる😊

 この美女2人だけでももちろん、十分にいい香り。でも、この2人を隣に置けるほどの人物かどうか試されるよ。
 Tinta Roja、やはり彼女は華やかさが強くてすぐフローラルむんむんになった。それを増長させるLuna Rojaのアルコールもむんむんと立ち昇り、そして甘々にさせる。女子感がすごい。場違いにも飲み会でトップレベルにかわいい女の子に囲まれてしまった感。これが公開処刑ってやつなのね…。

 あとはこっそり、ArábicaとLuna Roja。この2人は恋人同士じゃなく…セフレっぽい。相性はすごく良くて…始めはルナロハちゃんが積極的に奉仕し、次にアラビカが荒々しく…彼女が声を上げて悶える…。うーんめっちゃエロい。本当にエロいです。これは必ず夜に、ベッドで。

 それにしてもアラビカくんって最初はもっとツンケンした無愛想な男だと思ってたんだ。感受性が高すぎて警戒心が強いから一人でいるってタイプだと…。気付いたらめっちゃモテてるな。なんでだ。


Oud Andes + La Cautiva + Amalia

 花とミルク、秘密。幼さを残した女子たちの部屋。

 Oud AndesにAmalia、アニマリックな癖のある香り同士馴染みやすいね。もう少し明瞭さも欲しくてLa Cautivaを呼ぶと、キュンと明るくなったのち、まろやかに落ち着いた。Andesがいることで、じっくりとそれぞれの良さが香ってくる。この独特さは時間が経てばウッディに落ち着いていく。
 ウードの複雑な芳醇さにジャスミンの癖がマッチ。ウードの発酵したようなフルーティな甘さにカシスの甘さがマッチ。ジャスミンとミルクもマッチ。このそれぞれの重なり合いが、うまいことチームワークを成立させている。

 アンデス嬢のお部屋にアマリアとカウティーバが遊びに来て、キャピキャピしている二人に、嬢がさぁ勉強しましょうか!とニッコリ。アンデス嬢はガリ勉。アマリアはのんびり天然男たらし。カウティーバは純粋世間知らず。後ろ二人はアホそうだな。嬢がいなかったら二人でずっと恋バナしてると思う。性的な話題がさっぱり分からないカウティーバ、無知をさらけ出しきょとんとしてると、嬢が嫌味もなく恥じらいもせず、スラスラ〜ッと説明しいろいろ教えてくれる。ほえ~っと素直に聞くカウティーバ。アマリアはうんうん私はこっちが好きと自分語りで合いの手。みんなマイペース。嬢も天然気味だけどこの中では重要なリーダー格。

 カウティーバとアマリアだけだとぽわっぽわしててちょっと危なっかしい。でもそれも良い。Amaliaが先だとミルクに押されてジャスミンが消えがちなので注意。
 もちろん、ジャスミンミルクティーだ!かなり爽やかですっきりしてる。軽くて甘くていい感じ。とても女性的だけどかわいらしくやさしい、コロコロと鈴を転がすような笑い声。


Amalia + Malena + Muskara Apis

 清流きらめく音、飛び跳ねる光、蜜のあふれる花の香り。

 すごくいいです。どうも蜂蜜=食べ物と思い込んでたがそもそもは花の蜜。花の香りと蜂蜜、すごく合う。当然だったね…!まあAmaliaは元々甘い香りだから少しくどいかもしれんが、Malenaで水分プラスされてちょうど良く薄まってくれる。
 Malenaの青さと柑橘でキュッと引き締まるところ、それがAmaliaとApisの甘さとうまくバランス取ってくれている。幸せな自然の香り。まだ厚めの上着が必要な春先に合う。気温が上がってくるとちょっと甘さがしつこいかもね。

 チャラ男のアピスと喪女のマレーナ先輩、そしていろんなタイプの男をとっかえひっかえしてるアマリアちゃん。マレーナとアマリア、なぜか仲良さそうなんだよな。幼馴染かなんか?
 アピスくん、チャラ男っていうか若くてフットワークが軽くて、少年アイドルっぽいんだ。まだ世間のことも自分自身のこともよく分かってないのにチヤホヤされてきたから無駄に自信過剰なところがある。自分がトップレベルのイケメンで歌もダンスもうまくて演技だって出来て、生まれつきのスゲー才能だ、賞ももらっちゃうもんねって、なんの根拠もないのに思い込んでる。世界中みんなが自分のこと知ってるつもりでいるけど、マレーナ先輩は彼のことをまったく知らない。興味もない。
 アマリアとは話が弾むし、雰囲気の合う彼女狙いと思われがちだが実はマレーナ先輩に恋慕。俺に興味ない女なんて…!とムキになってる。アマリアもそれを知っててフォローしようとしてるが、マレーナ先輩はめっちゃ無関心…少女漫画かな。

 少女漫画みたいなMalenaとApisだけど、このふたつはよく合う。Amaliaの他にはCactus Azul、Fueguier、Ballena de la Pampaとかでも合う。
というかApisがフローラルはもちろんグリーンやウッディともよく合うので、いろいろ試すと面白い。重ね付け要員として結構出番が多い。ただし甘い香りとだとクドくなるから、やっぱりそういう時は水分で薄めてくれるマレーナ先輩の出番なんだ。頼もしいぜお姉様。


Oud Andes + Cuentos de la Selva + Luna Roja / Malena

 別け隔てなく包み込む暖かさ。日向と夕陽、彼女。

 Oud AndesとCuentos de la Selvaの組み合わせが最高に合うんだ。フルーティウッディなウードに柑橘ミルク、いい!

 さらに甘さが欲しいならLuna Roja。合うわ〜!よりフルーティに、甘くアニマリックに。お酒の香りが入ったことで、ウードのアニマリックさがエロティックに変化。女性の芳しい体臭ってかんじ。あくまでCuentosのかわいらしいふわふわしたミルクの甘さがいるのでセクシーすぎない。好きな女の膝枕で耳掃除って感じかな…母性を感じる。

 逆に甘さを控えたい時はMalenaです。これも柑橘入ってるから合うんだ。他のグリーンな香りと比べて丸みがあるので女性的で、この組み合わせにはちょうどいい。水分量が増えて乳化したみたい。サラッとしつつ若干とろみがある。
 まろやかな甘さと酸味のあるグリーン、よくまとまってる。ウードの複雑さと酸味でより発酵したような雰囲気…汗臭さにも似た酸味とミルクの油膜…シトラスフレーバーの日焼け止めかな?女子の夏の肌だな。


La Luna + Xocoatl + Muskara Phero J.

 聖なる森に、天から差す陽の視線。舞台に導かれる神秘の獣。

 La Lunaを使いたいなと急に思いつくも、今日じゃないとスルーすること数日…。ついに今日こそがその日と感じると、パッと隣にXocoatlが浮かんだ。こういうよく分かんないけど導かれるような直感ってたまにあるんだ。大人しく従うことにする。
 ただXocoatlの印象が強そうなので、Muskara Phero J.も添えてみる。水彩絵の具に水を足してぼかすようなかんじだ。

 重ねてびっくり、こりゃすごい。Xocoatlのはっきりした強いラムの香りがバルサムウッディに包まれて大人しくなってる!いつもはほぼ感じられなかったカカオの香りさえ、バルサムに溶かされて伝わってくる…!おお~これはいい…。
 Xocoatlのキンキンしたアクの強さが抑えられて、しかし原色の派手さはそのままに、La Lunaの静かな木々の中でリラックスしてる雰囲気。いい〜。謎の獣も神聖な森では大人しくなるのね。
 加えて、私がMuskara Phero J.を使うと甘くフルーティなムスクになる。清々しい空気の中で、異形の獣はウトウトして丸まっている。今ならなでなでできるかも。


La Cautiva + Malón

 乙女を青年がつかまえる。乙女が青年をつれていく。

 公式カップルと言っていいお二人でしょう。これはもう…もう…ぜひみんなやって…!

 La Cautivaとは捕虜のこと。パタゴニア砂漠に暮らす先住民マプチェ族が連れ去ったスペイン人女性。そして、彼女を奪還すべく向かう男がマロン(襲撃)。
 アメリカ大陸における先住民族の歴史って北も南も本当に凄惨で、侵略と虐殺と文化破壊と民族浄化で…どこにもハッピーエンドはないし、現在純血の北米先住民はどこにもいない(混血が進んだ)事から「絶滅した」と言われているぐらい、中南米でも未だに…(ブツブツ)。
 なので史実を理解した上で、フィクションを楽しもう。ポカホンタスと同じ。

 はい、ということで乙女をイケメンが捕えるから先にLa Cautivaを付け、それからMalónと重ねる。ほぁぁ…!めっちゃいい…。
 は〜イケメンに優しいふわふわの甘さが乗るの最高だ。ふわふわの甘さにアニマリックな臭さが付くのも最高だ。若さとエロティックさがかわいらしくて良い!とても良い。

 キュンとしたカシスの甘酸っぱさが混じる甘いミルクの香り。うら若き純粋な乙女、彼女は心に熱く乱れた情熱を潜める。そこに飛び掛からんとする野性的な男のフェロモン、しかしいざという場面で男はひるみ、立ち止まってしまう。痺れを切らした女がそれとなく動いてみせると、男はプライドを刺激され、リードするのは自分だとたちまち動き出す。あとはそれがスムーズに行くよう、女が気を遣って相手してやる。これだけお膳立てされていることに男はまったく気付かない。自分のプライドが、自分は男で相手は女だから、遂に来たチャンスが!そんな必死な気持ちでいっぱいなんだ。このたくましい男は女の小さくやわらかな手の上で転がされ、そのうちに自信をつけ風貌に見合った精神を手に入れるだろう。男はいつまでも女によって育てられている。

 逆に…男がすでに頼もしく、小さく弱々しい女をしっかり包んで守るイメージであるなら、Malónを2プッシュするといいかも。Malónってウードだけど意外と1プッシュだと弱いんですよ。だから奥手な感じになっちゃう(笑)。


Xocoatl + Cruz del Sur + Oud Andes + Cactus Azul

 羽毛ある蛇、ケツァルコアトル。

 めっちゃ夏向きの香り。すごくいいぞ!
 ケツァルコアトルをテーマした推し香水ならぬ推し重ね付け。フエギアが中南米産だからやっぱメソアメリカ文明に合うんだなぁ。

 突き抜けるスーッとした香り、濃い青空がどこまでも広がっているような壮大さ。ラムの強さに体が火照り、じっとりと纏わりつく湿気でカカオもウッディにけぶる。じわりと侵食するサンダルウッド。汗が絶え間なく滴り落ち、充満する森の匂いに息が詰まりそうだ。サボテンを切って滴る水を飲むと、ミントとラムがキンキンと共鳴して頭がクラクラしてくる。異様な雰囲気にふらつく一方で凄まじい緊張感に震え、妙に意識が冴える。そこに何かいる。五感で捉えられない何かがいる。

 ケツァルコアトルは文化神で人間に火や玉蜀黍、そしてカカオも与えた。カカオの飲み物、つまりチョコレート=Xocoatl。xocoatlは”xoco(苦い)”、”atl(水)”という意味とされているけど、単語に含まれる”coatl”は”蛇”を意味する。そしてQuetzalcoatlとは”羽毛ある蛇”という意味。xocoatlという単語自体には関係ないけどリンクする。
 森の雰囲気が出せそうなCruz del Surに、アステカ以前から古く広く信仰されてきた意味を込めてウード。Cruzにもウード入ってるね。
 あと、アステカの民が定住する場所を求めて彷徨っていたら「サボテンの上に蛇を咥えたワシがいる、そこがお前たちの土地だ」というお告げを得てその地に建国したっていう神話がある。メキシコ国旗にもそのワシの絵が描かれてる。なのでCactus Azul。
 ちなみにアステカで飲まれていたお酒はもちろんラムではないけど、竜舌蘭(アガベ)から作られたプルケというお酒があった。後に蒸留方法の違うメスカルに取って変わられたけど、それは今もテキーラとして知られていますね。

 変更点あるとしたらOud Andesだけど…(アンデス文明じゃないし)Malónでもいいかなぁ。ケツァルコアトルは肌が白く髪が黒いっていう、スペイン人が勝手に付け足したんじゃないの?って感じの姿だともされてる。国を去った後復活するって神話もあるから、おかげでキリストと同一視されたりもして。羽毛ある蛇だけに胸毛もモジャモジャしてそうだからそれでもいいかも。
 テスカトリポカだと”煙を吐く鏡(黒曜石)”だから超スモーキーになるんだろうな。こういうの考えるの楽しい!


Rosa de la Patagonia + Arábica + Puro

 悪の華。

 ローズ苦手だけど、社交性半端ないアラビカくんならいけそうじゃないかと思って試してみた。さらにPuroも。
 これめっちゃヴィランのおじさん!癖の強い悪いおじさんだ。分量調節すれば私でも大丈夫そうだけどすごく贅沢で妖しい香りになったなぁ。
 要はローズの酸味がArábicaの酸味と親和し、油分で馴染んだんだ。そこにタバコも煙ってより一層苦味が増し、ディープでダークな妖しい雰囲気に。とっても…苦臭酸っぱ甘い(混雑)。

 焙煎されたコーヒーの深い苦味と全体を覆う酸味、タバコには煙たさよりも乾いた草を感じる。けぶるのはウードのほう。幾重にも重なる複雑な香りによって、ローズの妖艶さがより一層際立つ。妖しくも怠惰、秘密の部屋に集まりいけない煙を吸わされて、破滅の道に進んでいるような…うーんこれは悪い世界。独りよがりな理想の中で誇大妄想を膨らませ、我こそは真理を知る者と謳いながらも、破滅しか選べない。

 ウードとタバコがムワッと煙る暗い室内、妖しく危険な欲望を持った男がニヤリと笑う。変態だ。絶対変態だ。髭生やしてて三白眼でまぶたと目の下のたるみがドロンとしてる。眉毛はつり上がってる。ジャファーかな?


Dunas de un Cuerpo / Malón + Luna Roja + Puro

 年輪のようなあの顔で、見られただけでプレッシャー。お注ぎします、火をどうぞ…。

 ウードとタバコがもくもく煙る中、甘い酒の香りがゆらりと漂ってくる。いい…!激シブ。
 あくまで神聖なる寺の香りがベースなのでいやらしさがない。タバコにも乾いた風を感じる。Luna Rojaの甘さもかわいらしさが潜んでいるというんじゃなく、あくまで風味づけ程度。渋い。真面目で冗談が通じなさそう。冗談なんか言えねぇよこの人の前で。
 Dunasって女性的な香りのはずなのにこれはメンズだわ。イケメンっていうんじゃなくひたすら渋いわ。信頼できる人だけど厳つくて…やべぇ…何喋ったらいいのかなんもわかんねぇ…。強面の大物俳優か?それとも現場一筋のベテラン刑事か?
 面白かったのは、時間が経つにつれこの渋さが解けてきたこと。酒が入ったことで随分透明度が増して、ずっと顔しかめてたおじさんの心が開いたみたい。笑顔にはならんけど。

 DunasをMalónに変えるのもあり。同じウード系でもDunasは女性的だがとにかくウッディが強く、Malónは男性的でアニマリックだが少し控えめ。Malónバージョンの方がサラッとして纏いやすいね。
 Puroってウードと並べたら、意外と爽やかさすら感じるようなところがあって、サラッとしたLuna Rojaと合わせることでより流れるように感じる。それもよく伝わってくるな。Dunasのときのような渋さがなくスマート。こっちのおじさんの方がとっても社交的で付き合いやすく、笑顔もカッコいい。ただ偉いおじさんなのは変わらんので、油断して失態を演じないように。


Malón + Quilombo + Ballena de la Pampa

 いつも真面目で厳しい顔の上司の口ひげに、ホイップクリーム。

 ウードと甘い香りの組み合わせは至高。イケメンの芳しい体臭、ねっとりこぼれ落ちる練乳、ラムとタバコ…変な連想してしまったけど…こ、これいやらしさのないかわいいおじさんだ…!普段は渋くてかっこいい素敵な上司だけど実は甘いもの大好きおじさんだ…!

 Malónって単体だとイケメンの芳しい体臭って感じてうっとりするんだけど、こうして他の香りが混じると「その人物の一部」という特徴に変わってくる。日常からそんな香りがしてくる男ってどんな男?フェロモンむんむん?単に加齢臭?いやらしい?かっこいい?なんであれ、若い男じゃなく4,50代ってかんじだな。
 今回はクジラ紳士Ballenaのおかげでいやらしさのないおじ様となり、さらにミルキーQuilomboによってかわいらしさもプラス。なんて平和なんだ。普段はキリッとして真面目でちょっと怖そうな雰囲気すらある上司。でもなんか甘い匂いがしてくるから「あれ…?これ…この人から…?」ってみんな気付く。でもそんな雰囲気ないし聞けない。振る舞いとのギャップがかわいくてだんだんみんなほっこりしちゃう。

 ちなみに前にも甘いもの大好きおじさんを生成したことあるんだけど、その時はArabica、Biblioteca de Babel、NOBILE1942のCafe Chantanだった。重厚さがあってガッチリした書斎にいるかんじ。そこで真面目一辺倒なおじさんがこっそりおやつ食べてる。コーヒーもミルク砂糖たっぷりで飲んでる。みんなにバレると恥ずかしいのかなんなのか、一人でこっそりケーキとかシュークリームとかプリンとか食べてるんだよ。


Dunas de un Cuerpo + Komorebi + Muskara Apis

 肉体の苦痛から放れたどり着く、永遠の光が満ちるここは極楽か。

 想像が付きやすいですね。軽やか蜂蜜ウッディ。ウードの複雑な苦味を軽くするKomorebi、その間でキラキラとろけるApis。優しく甘い風の下、どっしりウッディなウードがいるの最高だねぇ…。
 最初はウードが強くて、そこに混じる蜂蜜のアニマリックさでちょっとむせそう。でもKomorebiの優しさでほっと一息。
 ムスカラシリーズってフレーバーが消えるの早いので、蜂蜜の纏わりつくような濃厚な甘さはそのうちフェードアウト。Dunasの長い歴史を感じさせる力強いウッディ、それを優しく和ませるKomorebiの風が心地よい。そして穏やかに、安らかに。

 は~ほんとDunasもKomorebiも、ただぼーっと座って自然を眺めてほっこりまったり幸せな時間を過ごす…そんな素敵な香りなので、一緒にしたらそりゃ至高の香りなんだ。極楽浄土に来てしまったのか?成仏したのか…。Apisのハツラツとした雰囲気が気持ちをワクワクさせて、より幸せ度を上げている。春のソワソワした雰囲気。

 ここにバニラ系の甘さがあったらもっとまったり落ち着くと思う。GUERLAINのSpiritueuse Double VanilleとかDIPTYQUEのEau Duelleとか。もっと馴染みのある幸せ甘々雰囲気になりそう…。そうか、所詮、物質世界に生きる我々にはまだ天上の精神世界は馴染めんのだ。食べ物が好きなんだ、花より団子だ酒だ、帰ってきたヨッパライ…。

 私はウード好きだからDunas強めApis控えめにして春爛漫な寺って感じだったけど、配合調節したらもっと付けやすくなる。
 ウードが苦手な方はDunas控えめにして、KomorebiとApisをしっかりめにすればもっと甘く爽やかに、咲き乱れる花を木陰で眺めてるような。ウードは隠し味程度でも十分コクになるので、より蜂蜜や花の甘さをグッとひと押ししてくれるはず。
 あと単純に付ける順番逆にしてもいいかと思う。寺好きさんはDunasを最後に付けるのがおすすめ。



 長かったね。以上です。おつかれ。


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