見出し画像

半導体チップ(CPU)のWafer価格見積もり

はじめに  

 今回は、ちょっと興味があったのでざっくりと計算してみました。実際にはパッケージコストや実装部品がありますがざっくり計算なのでその部分は考慮していません。時間があったら調べてUpdateしたいと思います。

 今回の調べてたのはintelのCore i9 14900KというCPUです。実際の販売価格とdie sizeからおおよそのWfコストを逆計算しています。

自己紹介

日本の大学でPhDを取得し、日本の会社に就職するも会社の方針転換で一年も経たずに外部に出向し、先行きが見えないため別の日本企業に転職。なぜか転勤族になり西の方に移住。英語を勉強して外資系に転職しVISAをサポートしていただきUSに移住。その後GCを取得しBay Areaの大手テック企業に転職して今にいたります。専門は半導体のプロセス設計です。
 転職に関する自己経験なのどは別のnoteにまとめていますのでご興味がありましたらご参照ください


対象チップの調査

 まずはベンチマークの対象となるチップに関して調べてみます。といってもGoogleで検索して、自分の肌感覚や知っている知識と合っているものを選んでいます。その中でこちらのものがわかりやすかったのでリンクを貼っておきます。

 このサイトによると、die sizeは257mm2で販売価格は$587ということがわかります。かなり大きいdie sizeで結構な価格ということがわかります。
 ポイントはCPUという汎用的な製品で、世界中に販売して数も出ている製品でこの値段ということです

Waferコストの逆算方法

 どのようにWaferコストの逆算を行なったかを簡単に説明しておきます。冒頭にも書きましたが、CPUの販売価格は調査できますが、パッケージコストや基板についているコンデンサー等の価格がよくわからないので無視しています。というのもCPU価格の半分が基板だったりパッケージ費用というのは考えられれないので、CPU販売価格のほとんどはCPUチップの価格であろうと想定してたからです。ここら辺が調査してわかればもう少し精度が上がるかと思います。

 では具体的に自分が計算してみた結果となります。

ざっくり計算した結果

一枚のWaferからいくつチップが取れるか

 これは単純に使用しているWaferの面積を計算しています。12inch waferを使用していると想定し、単純に半径 x 半径 x πで計算しました。
 そこから参考としてサイトに記載されていたチップ面積で割り算をすると、理想的に幾つのチップが1 waferから取れるかが計算できます。計算結果は257 chipsです。
 ただ、実際にはこの数は取れません。理由はスクライブラインの面積やWafer edgeではチップが欠けていたりするのでそれを考慮する必要があります。die sizeがかなり大きいのでFill factorとして80%のFill factorを想定しました。チップが小さくて、スクライブラインの幅が狭いとこの数字は上がっていきます。
 結果として、だいたい1 waferで220チップができるのではないかと予測できます。

実際に動作するチップ

 有名な話でintelは動作速度や消費電力の結果をもとに製品群を分けていることが知られています。動作が早いと上位のチップとして、遅いともう一段落とすなど。そこ判別基準やパーセンテージは不明なので、おおよそ85%はなんだかんだで出荷するだろうと想定しました。もしかしたらこれよりも低い値かもしれませんが、製造の観点からいうと、85%は欲しいかなぁという感じです。
 そうすると、動作して出荷可能なチップはおおよそ1 waferで187チップ取れることがわかります。

1 lotの価格計算

 次に販売価格と先ほどの計算結果から1 lot (25 wafers)の価格を計算します。歩留まりのところにも書きましたが、チップ性能により価格を変えているというのもあるので、今回は少し安めのチップ価格を想定しています。
 そうすると、だいたい1 wafeのコストは$98Kとなります。これが25枚あるので1 lotではだいたい$2.4Mとなります。
 今回は売値からの計算なので、この中には販売費や開発費、それに関連する人件費や販売促進費などが含まれています。intelの決算を見ると営業純利益率はおおよそ50%近いというのがあるので、エイヤーで原価率として50%をかけました。もしかしたらもっと高いかもしれません。そうするとおおよそ1 lotの価格は$1.2Mということになります。

まとめ

 今回はざっくり計算で1 lotあたりどの程度の価格となるかを計算いたしました。かなりざっくりなので細かいことは抜きとして、肌感覚を掴むという点では良いのではと思います。

余談

 なぜEUVのような高価な装置を買ってでもTechnology Nodeを推し進めたいかわかりますか?今回の計算を逆算していくと自ずとわかってきます。製品としていくらなら買ってくれるかはマーケティングでわかります。CPUとして$1,000以上払うのはかなり特殊と言えます。なので$500ぐらいが限度となります。
 そうすると、die sizeはほぼ固定か、装置価格上昇分を吸収させるためにもっとdie sizeを小さくし、取れるチップ数を増やす必要があります。Functionを減らすのは市場は受け入れられないので、同じFunctionまたはそれ以上のFunctionを実装する必要があります。そうするとGate数は増えることになります。それを考慮すると微細化は必須となることが自ずとわかってきます。
 ある日突然天才が現れて、CPUのアーキテクチャーが刷新されて微細化に頼らないというのがあれば別の話ですが・・・。

アメリカSilicon Valley在住のエンジニアです。日本企業から突然アメリカ企業に転職して気が付いた事や知って役に立った事を書いています。