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OTYKEN。シベリアの先住民の女の子たちが奏でるコンテンポラリー・ロック。


寒そうですね、睫毛まで凍りつきそう。もしかして零下40℃くらいあるかしらん。OTYKEN(チュリム語でchulym族の言葉で、戦士の友情と連帯を意味するそうな。OTYKENは、日本ではオティケン表記に落ち着いているのかな。もともとの発音はオー・トゥー・ケンらしい。)彼女たちはchulym族、Ket族、Selkup族などシベリア先住民たち、いわばシベリアのアボリジニたちの音楽を現代的に表現するグループです。バンドは2015年に結成された。どの音楽はどの曲もワンコード。もともとシベリアの音楽はそういうものらしい。それを近年のEDM、テクノ、トランスに乗せると、がぜんエキゾティックな魅力が生まれる。2018年にファーストアルバムをリリース。翌年、リハーサルや会議を主催するために養蜂場にパオが建設され、博物館で定期的にコンサートを開催するようになった。TikTok、YouTube、Spotifyをつうじて彼女たちはあっというまに世界中で大人気になった。




Otykenは、プロデューサー、マネージャー、ソングライターのAndrey Medonos によって設立された。絶滅の危機に瀕しているチュリム族の民間伝承、伝統、歌を保存するためのプロジェクトだ。メドノス自身はシベリア民族ではないけれど、かれらの一族がシベリアの荒野の養蜂家だったゆえ、養蜂のパートナーシップを維持していた先住民の文化にしたしみを覚えたそうな。(冬には零下40℃にもなるシベリアで養蜂がなり立っているのですね!)かれはチュリム人たちと狩猟をしたり、釣りをしたり、先住民の女性と結婚することを通じて、チュリム文化になじんでゆく。かれはクラスノヤルスク市に蜂蜜民族学博物館を設立し、先住民の文化を保存すると同時に、講義や集会を主催するディレクターになる。この活動をつうじて市民たちの、先住民たちの音楽を聴きたい、という要望が高まって、結果かれはOTYKENをダイレクションするに至る。かれの奥様も初期のOTYKENのメンバーであり、後に衣装制作担当になります。



なお、OTYKENのメンバー全員が、漁業、狩猟、採餌、農業、養蜂を通じて地元で食料が得られるパセクノエ村近くの小さな集落に暮らしていて。(シベリア先住民たちは鮭、トナカイの肉、コメ、ベニテングダケ、乳製品などを食べるそうな。)グループのメンバーはみんなバンドの外で忙しい生活を続け、コミュニティで働き、家族を支援していて。グループには約10人の主要メンバーがいるものの、各人の空き状況に応じて、コンサートに参加する人は少なくなる傾向があって、メンバーも時期ごとに入れ替わりがある。


シベリアも6月には春が訪れ、9月が秋で、10月から冬らしいですね。

新緑のなかで彼女たちは気持ち良さそうに歌い、はしゃぎ、演奏してますね。謎の発声ホーミー、そして口琴が使われていますね。シベリアとモンゴルの音楽的繫がりが感じられます。


OTYKENの快進撃が続きます。



ところが2022年、ロシアによるウクライナ侵攻によって、OTYKENはおもわぬとばっちりを受ける。西側諸国がロシアに制裁を課したことによって、2022年、OTYKENの PayPalアカウントがブロックされ、音楽やグッズの国際販売ができなくなった。また、OTYKENは、2022 FIFAワールドカップ・カタール大会の開会式に招かれていたにもかかわらず、開催直前にキャンセルされた。また彼女たちは2023年のグラミー賞の主賓だったにもかかわらず、それもキャンセルされてしまった。なんて理不尽なことだろう。そもそもシベリアは1636年にロシアの植民地となったのだ。そしてシベリアはロシア帝国時代から流刑地とされ、その後ソヴィエト連邦もまたそれを踏襲し、数多くの強制収容所をシベリアに作り、多くの政治犯を送り込んで、鉱山労働や森林伐採などをさせた。それに対して、OTYKENはロシアの先住民族音楽家集団である。彼女たちはけっしてロシア人を代表していないし、ウクライナ侵攻に至ってはなんの関係もない。まったく理不尽である。むしろ彼女たちの音楽表現は、政治的に力のある主流派民族たちによる公認芸術をひっくり返すものなのだ。


(この曲では、最後の方に、謎の日本語ナレーションが入っています。)


OTYKEN、これからも彼女たちの活動から目が離せません。



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