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シャクヤクとインドクレープ「ドーサ」

シャクヤク(芍薬)の花が美しい。清楚で気品がある。もうすぐ季節が終わるとおもうと、ますます美しい。シャクヤク栽培は支那の宋王朝にはじまる。(それはイネの水耕栽培がさかんになった時期でもありました。)近年シャクヤクは外来種も増えて、Poppy & Peonies と呼ばれたりします。「サラベル(サラ・ベルナール)」なんて品種もある。サラ・ベルナールは、普仏戦争前後に活躍した舞台女優で(なんとも業の深いドラマ)『サロメ』を演じて人気を博した。どこの国の男も、美女に夢を見て妄想を抱き、花を美女に見立てるもの。日本にも美女を讃える言葉に「立てばシャクヤク、座れば牡丹、歩く姿が百合の花」がありますね。



他方、イケイケの女たちは内心おもっているでしょう、「あたし自身が花だもん、あたしにとっては花より男子♡」なお、肉団子もあればアズキの団子も、はたまた泥団子とて交じっていることでしょう。どうぞ、お気をつけください。



芍薬はその名に薬があるとおり、その種は漢方に使われますね。そう言えば、インド食材店のスパイスの棚にはも(クミンシードやターメリックパウダー、レッドペッパー、コリアンダーなどに混じって)、ポピー・シードも置かれています。ポピー・シードって、どんな料理に使うかしらん? 



そのとき時刻は午後5時半。ぼくは近所つきあいをしている西葛西Taaj Palaceに伺って、料理長に訊いてみた。かれは答えた、「ポピーシードは(インドのクレープ)ドーサに使うんだよ。プレーン・ドーサ、マスール・ドーサ、マサラ・ドーサ、作り方はみんな違うけど、いずれもポピー・シードを使う。」



ぼくはお礼を言ってレストランを立ち去ろうとしたところ、かれは言った、「やきそば食べてかない? いまケータリングでいろいろ大量に作ってんだよ。」もちろんぼくは快諾した。しばらくしてかれがふるまってくれたインド中華のやきそばには、ソースとしてダル(あれこれ豆のスパイシー煮込み)がかかっていた。ぼくは笑った、ほんらい「インド中華」には醤油と味の素は使っても、ダルのような純正インド料理を併せはしないもの。あきらかに料理長はぼくにいたずらを仕掛けていて、ぼくはその趣向を大いに楽しんだ。おっと、シャクヤクの話がドーサを経て、「やきそばダルソース」の話になってしまった。



シャクヤクの花は美しい。もうすぐ季節が終わってしまうとおもうと、なおのこと。


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