西欧文明の理解
私達は、明治の文明開化の後は
文明と言えば西欧文明
と考えています。これは、画一的な学校教育などの影響で
それ以外の文明を認めない
ほど私達に染み込んでいます。しかしながら、歴史的に見たら
西欧の一部で成立した文明
を
人類普遍の価値
と思い込む危険性を、もう少し考えるべきではないかと思います。
それでは、西欧文明について、もう少し見ていきましょう。まず、地理的な条件を見ていきます。西欧は、ヨーロッパ大陸の西側です。しかし、もう少し言えば、アジア大陸そしてアフリカ大陸からも地続きです。私達のように、島国に生きている人間は、このよう大陸での生存について、理解していないことがあります。それは
大陸では常に異民族の侵略に脅かされる
侵略者との戦いに負ければ
奴隷になる可能性もある
こうした過酷な条件を、私達は理解できません。しかしながら現在でも
ウクライナとロシアの関係
を見れば、侵略については明らかです.また、第2次隊戦時の終戦後の、ソ連による、シベリアでの強制労働は、奴隷制の発想の現在版です。
特に、西欧文明を理解するためには
奴隷制
を知らないといけません。もう少し一般化して考えると
支配者と被支配者が明確
な点を、私達日本的発想と違う面として、理解しておく必要があります。
例えば、私達は歴史学と言う学問を
昔あった事実を知る
学問だと思っています。しかし、西欧文明の歴史学の役割は
支配を正当化するための歴史的経緯を記述
と言う側面があります。世界最初の平和条約である、ヒッタイトが古代エジプトと結んだ
オリエントの宗主権条約
でも、最初の項目には
(支配を正当化する)歴史的経緯
が出てきます。こうした、支配者的発想が、西欧文明に存在するのです。
ここで一つ注意しますが、西欧文明が力を持ったのは、せいぜい16世紀ぐらいからです。中世では、イスラム文化圏が科学的に優れ、中華文明も19世紀末のアヘン戦争での敗北までは、西欧からの侵略をはねつけていました。
さて、西欧文明の歴史的な流れは、以下のようになります。
古代ギリシャの哲学とギリシャ正教
ローマ法の支配とカトリック教会
ラテン語の文明ゲルマン世界とプロテスタント
学問の世界
また、この前にオリエント文明があり、古代エジプトの幾何学は、古代ギリシャの哲学に大きく影響しています。
さて、私達は西欧文明と言っても、米英仏独のゲルマン民族しかみえていません。
例えば、1.の古代ギリシャの文明は、東ローマ帝国として1453年まで続いています。コンスタンティノープルは、古代ギリシャ以来の都市国家として、強固な城壁で守られていましたが、1453年にオスマントルコに攻略されました。私達は、こうした都市国家(ポリス)についても、言葉で知っているだけでしょう。このような「都市国家」は、私達の知っている、京都・大坂・江戸とは全く違います。都市の周りには城壁があり、その城壁の中で
侵略者と戦うのが市民
なのです。
更に、ローマ帝国が、ヨーロッパを支配します。そこでは
法による支配
が成立します。ローマの皇帝の権力の下に、個別の暴力的な解決から、法による解決が育ちます。更に、皇帝の権威はキリスト教が裏付けするようになります。なお、ローマ帝国は、東西に分裂します。宗教的には東ローマ帝国はギリシャ正教に、西ローマ帝国はカソリックとなります。私達は、西ローマ帝国の流れしか見ていない人が多いですね。
さて、西欧のゲルマン世界では、ルネッサンス時代から、自然科学を応用した、色々な武器を含めた道具が発達します。また、宗教革命から、プロテスタントが生まれます。
これに対応して、市民の概念が、商人や職人を中心に育ってきます。現在私達が当然と思っている「市場経済」も、金儲けを悪とみない、プロテスタントの教えが必要でした。
この後、ポスト・モダン市民社会は
個人を基底とした社会
になります。
しかしながら、西欧文明には
支配者と被支配者の壁
が残っています。古代ギリシャの哲学者プラトンは
本質を見る力のある哲学者の支配
を理想としました。現在では、これをそのまま通用するわけではないですが、アメリカの学者は日本の社会を見て
経営幹部や官僚指導者に博士号取得者が少ない
と馬鹿にしています。この逆に見ると
アメリカでは高学歴者支配
が行われているのです。人種による差別は、許されないが、学問知識の差という「合理的」な理由で、支配者の優位性を示しています。
こうした西洋文明の性格を、私達は見直すべきでしょう。
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