現金10万円一律給付は正しい政策なのか~夫婦の夕飯談義~

日本のコロナ対策が諸外国に比べてお粗末な印象を受けていた中で、Twitterで#国民全員に一律給付をというタグを見つけたときに少し違和感を抱いた。仮に今自分がつい先日までと同じように日本で働いていても、コロナによって生きていくのが不自由になるほど困窮はしないだろうから、そんな自分にも一律給付するお金があるならばもっと困っている人に税金を回してほしいと思ったのだ。

そして今朝起きたら全国民に一律10万円を給付する政策が発表されていた。夕飯時に、私が日本にいたらあのお金ももらえたんだねえ、でも全員に支給必要はあるのかしら?と疑問を投げかけると、夫がものすごい勢いで反論してきた。

△じゃあ君は全員に渡さずにどうすればいいと思うの?

◇飲食店の人、それこそお茶の先生は茶会全部キャンセルされているしミュージシャンはライブもできないしイベントで生計立てている芸術家の人は今仕事がないから困っているはず。コロナで自粛を迫られて収入が減った人に支給すべきじゃない?

△じゃあその「誰に支給すべきか」はどうやって判断するの?その人の職業・コロナで収入が減ったかどうかはどうやって証明するの?対応はどこでするの?その申請の過程で3密は避けられるの?

◇・・・。確かに時間はかかるかもしれないけど、どうせこの全員の支給も夏頃に入るといわれているし、どっちみち時間かかるんだったら選別すればいいじゃない。

△選別するにしてもどこかしらでもらうもらわないの基準を作らないといけない。そのボーダーラインで争いや文句が生まれると思わない?

△今回の政策を立てた時期は遅いと言うのは同意する。けど、今すぐやれることで最も国民の理解が得られる経済的援助として一律現金給付は一つの方法としてアリではないかと僕は思うよ。

◇でも生活に困窮してる人に10万円渡したところでどうするの?家賃光熱費で終わりじゃん。最大公約数的に現金一律給付するならじゃあ20万にすれば?それなら一か月はどんな人でも食いつなげそう。

△1億人に20万円渡すというのは20兆円の予算が必要で、それは一年の国家予算の20%に当たる額だね。その分の予算増やすにしても財源はどこから持ってくるの?国民にお金あげるために国債発行して後で増税するなら国民が満遍なく借金するようなもんだよ。それに10万から20万に上げたところで、マクロでみて「困窮者を助ける」効果が大きく変わるとも思えないから費用対効果を考えるといい策ではないんじゃない。

◇じゃあ生活困窮してる人がたった10万円しかもらえないで、特にこれまでと給料変わらない人が10万円お小遣いもらう状況でいいの?

△生活が立ち行かなくなった人に対しては破産申請だの生活保護だの、日本には生活を守るセーフティーネットが沢山あるし、今回のコロナ禍を受けてさらにセーフティネットは拡充されているから、今回の10万円はそれを受け取る前のステップとしての意味合いもあるのかもよ。本当にお金に困ったときに、10万円あるかないかで次のステップを踏み出すまでの心理的負担がかなり違ってこない?「これまでと同じ生活をするため」、じゃなくて「生きるか死ぬか」のお金。まずはこのお金で生活をつないで、次のセーフティネットなり新しい政策に移行するための救済パッケージの一部でしかないんだよ。特に影響受けてない人が10万もらって違和感あるなら寄付するなり困ってそうな産業にお金落とすなりお金の使い道はいくらでもあるでしょう。

△余裕のある人が10万もらって少しでお金を使えば、それだけ経済は回るし、それによって困窮している人を救うこともできる。財源が許すならないよりはある方がましな政策だし、余計な手間を省いて全員がもらうことに意味があるんじゃない?

完全に言いくるめられて夕食は終わった。

つまり、お金に困っている人は誰だと探すと、事務手間が膨大になりマンパワーが足りなくなる上、もらう人ともらわない人が出てくるので国民間の軋轢も生まれる。一方、政府が誰にお金を支給すべきかと考えると対象は国民一択。ならばまずは一時金として手続きもなしでまとまったお金が手に入るこの政策はありなのかもしれない。

そして先ほど財務大臣が給付は希望者だけ、と提案したそうだ。今日の夕食の会話がなければ、うんうんそうだねえと言ってしまっていたと思う。

しかし、ここで希望者だけにしたら、条件付き給付にする場合と同じように事務手間は増え、本当に困っている人の元にお金が届くのはさらに先になるかもしれない。そしてあの人はもらった、だの、私は希望しなかったわよ、などど国民間の軋轢が生まれそうだし、給付を希望して受けることで「烙印」が押されるような機運になれば本当に困っている人が申請しにくくなってしまう可能性すらある。

「私は何もコロナで損していないのに。」「もっと大変な人はたくさんいるのに。」と受け取ることに違和感を抱く人は少なからずいると思う。図々しいを悪とする国民性だから当然だ。しかし、ここは戸惑わず10万円を受け取って、助けてあげたいところに寄付をするなり、納得のいくお金の使い方を考えてみてはどうだろうか。





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