おかあさんゆび(第8話)
その日(表彰式)の夜・・・
ユミ「え~、これより第113回、家族会議を開催いたします!!」
華「いや、ユミさん、家族会議なんて初めてでは・・・(という前に私は家族として認めてもらっているのでしょうか。何でしょう、このジワっとくる嬉しさは・・・。)」
ユミ「今日の議題は、①100万円の使い道 ②留学って何? ③あなたのお名前なんて~の?」
華「なるほど。それでしたら私からも話がありまして・・・。」
ユミ「ん?じゃあ先に聞こうか。」
華「ほんとに受賞できるとも思っていなかったので・・・。でも賞金はともかくとして、留学のことはぼんやり想像してたんです。『あ、みんなで海外で勉強しながら生活できたらないいな・・・』って。でもほんとに想像のレベルだったので。でもこれが現実になったので、家に帰ってくるまで色々考えたんです。」
ユミ「うん。それで?」
華「ユミさん、一緒にドイツに行って下さい!!」
ユミ「はぁ?なぜドイツ?しかもなんであたしが一緒なんだよ。あたしは一応あきらの・・・」
華「もちろんあきら君も一緒です!! お願いします!!」
ユミ「いや、その愛の告白スタイルで急にぶっこんでくるの止めてくんない? ぶっちゃけ現実味ないだろ?」
華「留学は1年間なんですけど、その間の生活費も月に20万円出るんです。当然充分ではないですが、バイトしながらなら3人で一緒に暮らせると思って・・・。」
ユミ「いや、養ってくれって言ったけど完璧にヒモになりたいって事でもないからさ~。ってその前にドイツって言葉分かんね~しさ~。」
華「言葉は私話せるんで大丈夫です。あと、あきら君もだいぶ話せるんで・・・。」
ユミ「ウソ?マジ?華はともかく、なんであきらドイツ語話せんの?」
華「はい。私は父がドイツ人なので。仕事の関係で日本に来た時に母と出会って結婚して・・・。今父は宇都宮で餃子を焼いているので日本にいるんですけど・・・。」
ユミ「は? ドイツ人とのハーフ? で餃子? マジ混乱してきた・・・。って待て待て、で、何であきらまで?」
華「はい。私が父と電話しているのを聞いて興味持ったみたいで、この半年ぐらい教えてたんです。あきら君覚えがすごく早くて私もビックリなんですけど。あ、あとあきら君、ロシア語も少し分かってましたよ。何でかは分りませんが・・・。」
ユミ「(店長の愛人か・・・。店でずっとカタリーナに面倒見てもらってたからな・・・。)」
華「ですので言葉の壁はクリアですし。あ、ユミさんは・・・私が通訳します!!」
ユミ「あたしはいいよ。多分華とあきらが大丈夫なら自分のことは何とかなるから。あ、でもあたしの最後の試合の相手ドイツ人だったからなぁ。見つけたらリベンジしてしまいそうな気もするけど、それでもいいか?」
華「いや、襲い掛かるのはダメですけど…。でも一緒に行ってくれるって事でいいんですか?」
ユミ「まああたしは特にやりたい事もないし。あきらも1年だったらその後小学校でちょうどいいだろ。まああきらは華に懐いてるから、華の行く所ならどこでも行くだろうしな。」
ユミ「あと、これ1番大事。華が行きたいんだろ?」
華「はい! 行きたいです!」
ユミ「じゃあ行こうぜ。人はさ、やりたい事がある時は絶対やった方がいいと思うんだよ。店に来る客なんてさ〜、毎日毎日あれもこれもやりたくないって奴ばかりでさ〜、じゃあ辞めちまえって話なのによ、辞める勇気もないんだよ。だからこの前本気でケツにミドルかましたら、そいつ泣きながらトイレ入って出てこなくなってよ〜、あたしがその後トイレのドアを蹴破ろうとして…」
華「あ、ユミさん、その話は次回改めて…。」
9話に続くよ♪
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