見出し画像

【BL掌編】アイスクリーム頭痛の治し方

僕は草食男子と呼ばれている。生真面目すぎて疲れないか? って腐れ縁のチャラ男が僕をイジるのだが、確かにそうだ……疲れる。

僕は生きるのに疲れを覚えていた。無意識に深くため息をついたら、チャラ男が「はい、あーん♡」と棒アイスを差し出してきた。
食べかけだ。

「なんだ」
「お疲れのようだから糖分をさー」
「おまえの食いかけだろ」
「えー? 気にしちゃう? 意識してんのぉ? かーわいい」
チャラ男の僕イジりが始まったか。反論しても面倒臭いことになるのを予想し、僕は差し出されたアイスを一口かじる。

キーンとした。
アイスクリーム頭痛。

額を押さえて無言で頭痛に耐えている僕を、チャラ男が心配そうな顔で覗き込んだ。

「そうゆう時はさ、デコにアイスくっつけるといいって聞いたことある」
「いやそれ棒アイスだろ……」
棒アイスをどうやって額にくっつけるのか。ベチャベチャになる。

「あーそうか。そうだよなー」

チャラ男は何を思ったか、冷たさを我慢するかのような表情でしばらくアイスを口に咥えていた。

「……どうした?」
「ん、もうひょっと待って」
口に咥えている上にアイスの冷たさでうまく喋れないようだ。チャラ男はようやくアイスを離すと、僕の額に冷えた唇をくっつけた。

「──は?!」

何やってるのだこいつは。
目を白黒させていると、チャラ男は面白そうに笑って僕から離れた。

「頭痛、治ったー?」
とっくに治っていた。なんならチャラ男がアイスを咥える前から治っていた。しかしそんなことよりも、なんでいきなり額にキスなどされなければいけないのかと僕は混乱していた。

「いやだって草食くんの頭痛治そうとしてさー。あ、これってちゅーだな! わー照れちゃう♡」
勝手に照れてろ。ふざけた奴だ。

「顔真っ赤」
「うるさい黙れ」

後に僕たちは、何故か付き合うことになる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?