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ピンクが好きだけど憧れるのは水色のワンピースの少女

「今日はピンクじゃないんだね」

私の友達の1人であるMちゃんは、私の服装を見ると毎回"ピンクチェック"をする。ピンクチェックとは、私の服装にピンク色が含まれているかをチェックする行為である。

私はピンク色が好きなので、普段からピンク色の持ち物が多い。そんな私を見ていて、Mちゃんの中では"私=ピンク色"のイメージが強いらしく、私がいつもピンク色を取り入れたファッションをすると思っているようだ。そのため、私のファッションを毎回チェックし、ピンクが含まれていないとちょっと不思議そうな顔をして、「今日はピンクじゃないんだね」と言うのだった。

だけど私だっていつもピンクの服ばかりを着ている訳ではないし、実はMちゃんの想像とは裏腹に、ピンク色のワンピースよりも水色のワンピースの方がたくさん所有しているのだ。

ブラウスやTシャツなどを選ぶ時はピンクを選ぶのに、なぜかワンピースを選ぶ時は水色に惹かれてしまう。

理由は自分でも定かではないのだけれど、なぜか私は"水色のワンピースの女の子"に憧れがある。

清楚で知的そうでありながら、春色のかわいらしさも持ち合わせている水色。そんな色を全身に纏える女の子になりたいという気持ちが強くある。

水色のワンピースを着る時、私はお嬢様の気分になれる。そして心做しか所作も丁寧になるような気がする。自分がそのファッションを作り上げているのか、ファッションが自分を作り上げているのか。服を着る時、その日1日の自分のキャラクターが決まるのだった。

今年も春が来て、新しい服が欲しくなった。春の服は好きだ。パステルカラーでふんわりとしたデザインの服が増えるから。見ているだけでも嬉しくなれる春服を買いに、1人でショッピングに出かけた。

気になったワンピースのカラーバリエーションは、黒、グレー、水色。その3色の中から、やっぱり私は水色のものを手に取った。鏡の前で試着もして比べてみたけれど、やっぱり水色がしっくり来るのだった。

水色のワンピースを着る時、私は『ピーターパン』に出てくるウェンディを思い出す。ディズニー映画の『ピーターパン』では、ウェンディは薄い水色のワンピースを着て登場する。そしてティンカーベルの妖精の粉を浴びてキラキラ輝きながら空を飛び、ネバーランドを訪れる。

ウェンディは作中で、子供から大人への階段をのぼる直前の女の子として描かれる。「大人になんかなりたくない」「もっと子供でいたい」という感情と、「明日で大人になってしまう」という現実の狭間にいる女の子だ。いつまでも子供ではいられない。だけど純粋な子供のままでいたい。そんなウェンディの少しメランコリックな少女性が、私は好きだ。永遠に子供でいたい気持ちに、なんだかとても共感できるのだった。

ずっと子供のような純粋さを忘れないでいたい。妖精の粉で空を飛んだ夜のことを忘れたくない。そんな気持ちで、私は水色のワンピースを着ている。だから、ピンクが好きな私だけれど、ワンピースを選ぶ時だけは、水色に惹かれてしまうのだった。水色のワンピースを着て街を歩く私は、ウェンディになれているだろうか。


自分の書いた言葉を本にするのがずっと夢です。