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人魂屋2

前回の物語↓

2の主な登場人物

笹本穂乃花 中三 内気な性格でいじめの対象者に。
芽愛 穂乃花とは同じクラス。代表委員会委員長。
直斗 事なかれ主義の男性。穂乃花の担任

⒉ 勇気

よし。意を決してドアノブをつかむ。
ガラッ!
私が教室に入ると一気に教室が騒ぎ始めた。
「またあの子来てる。」
「不幸虫よ」
「嫌ね~」
私は穂乃花。中三。毎日行くのが憂鬱だった。
いじめられていると言っても母は「何言ってんの。さっさと行け」と言われてしまう。
直斗先生は『事なかれ主義』だし……
教室に入った瞬間に私に聞こえるように男子も女子も悪口を言う。
「ちょっと穂乃花!私の席の隣に来ないでちょうだい!」
「不幸虫はあっちに行ってろ」
「そーよ。しっしっ。」
仲間と感じている人はいない。皆、私を嫌っている。
でも、味方はいる。
「テメエら。また何やってんだ」
「だ、代表委員会委員長!」
この子は芽愛ちゃん。リーダーシップのある女の子。
ちなみに権力ありの代表委員会委員長。
芽愛ちゃんはいつも助けてくれていた。あの日が来るまでは。


「芽愛ちゃんが事故?」
そう。5月の半ばごろ。芽愛ちゃんが事故に合った。
入院になったが大きな損傷は見つからないらしい。
芽愛ちゃんは毎回「ごめんね」としか言ってくれない。
何で謝るの?私が原因なのに。
学校に行っても敵しかおらず
「ブス。来るなよ」
「だっさい髪型~」
「机に触らないでよ!不幸が付いちゃう」
と、この通り心ない言葉を投げつけられる。芽愛ちゃんがいなければ永遠に続く。先生は見て見ぬふりだ。
私はある休み時間。ついに自殺しようと考えた。
もうこれ以上傷つくのは無理。
だって本当に不幸虫だから。
小学生の担任は全員事故に合ったか重い病にかかった。
中学一年生の担任は亡くなった。通り魔に合って。
中二の先生はまだあってないけどきっと……
全部私のせい。誰も知らない中学に行きたかった。受験をして、落ちた。
周りには知っている人ばかり。もう嫌。私なんか捨てる。
私は屋上に行った。バババッ。という風の音が耳に響く。
そして息を吸い込んで。手すりに手をかけた。
「お姉さん。自殺しようとしてるのかい?」
甘い声が聞こえて振り返った。そこには4歳ほどの少女が立っていた。
「君、だあれ?」
「あたしはあなたの願いをかなえに来たのさ。『人魂屋』の女将さ。真相を知りたけりゃあ、あそこにおいで」
そう少ししわがれた声で言って指さした先にはテントがあった。『人魂屋』とたどたどしい字で書かれている。
私は中に入った。中にはテーブルとイス、天井につり下がってる炎があり、イスの一つに女の子が座っている。
「ほら、おいで。」
私は引き込まれるように座った。
「お姉さん、あたしが叶える願いは……」
「いじめをなくしてくれるの?!」
「まあそれも含めて勇気を入れてあげる」
「そんなことができるの?」
「ええ。簡単だよ。そのサブレと引き換えね。」
ひよこのサブレのことだろう。こんなのよりいじめを無くしたい!
私が押し付けるようにサブレを渡すと彼女は細く短い筒に飴を刺した。
その飴は透き通るように綺麗だった。
その子がふうっと息を吹きかけるとその飴に炎がともった。
そしてその炎は黄金色に輝いていた。
私は魂が吸い付けられるようにその飴をまじまじと見た。
「はい。人魂飴『勇気味』熱くないから。炎と一緒に食べなね」
その子に言われるがままに食べた
この炎には何が宿ってるのだろう。私の好きな甘ったるい砂糖菓子のようでありながら、本物の炎のようだ。
すべて食べ終えると私は走り出した。どうしてもこの気持ちを伝えたかった。
教室に行くとありったけの力で話した。
「直斗先生!」
「穂乃花?どうした」
「私、もう我慢ができません。皆が私のこと嫌ってて、仲間がいません。芽愛ちゃんにも迷惑かけたくありません!どうにかしてください!」
突然こんなことを言われて直斗先生は目をパチクリ。だけど状況を察して私の頭をなでてくれた。
「いいままで頑張ったな。先生が怒っとくから。」
その日、私のクラス中の男子、女子は私と芽愛ちゃんをのぞいて叱られた。
芽愛ちゃんも良かったという顔をしている。
皆誤ってきたが全て無視した。
そのあと屋上に行った。あの子にお礼を言いたかった。
「あれ?」
そこには女の子どころかテントもなくなっていたのだ。
直斗先生にそのことを言うと
「人魂屋?噂なら知ってたぞ。あるお菓子で願い事をかなえるそうだ。だが60年前の怪奇現象だったが……」
「ええっ!」
ろ、60年前!?私が生まれるもっと前じゃない!
でも、あの子は神様よ。きっと。もう一度会いたいなあ……
そしたらあの子にいろいろ質問する。

5月28日
笹本穂乃花 15歳 夜風中学校屋上でひよこサブレと引き換えに人魂飴『勇気味』をもらった女

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