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別世界で暮らしてみたい

こんです^^

「こん^^」とか「ノシ」みたいな挨拶をネットで聞かなくなってもうしばらく経つ気がする。

そもそも最近はネットやってて挨拶をしなければならないような状況ってほとんど発生しないですからね。ツイッターとか特に。
俺がこういうネット式の挨拶文化を修得したのも古の時代(俺が小学校高学年の頃)に手を付け始めたネトゲでの経験がきっかけでした。


サムネにアニメの画像を貼り付けておいてなんですが、アニメの話ともちゃんと関連があることなので、まずそのネトゲの話から…

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ネトゲ、特に自分がやっていたMMORPGというジャンルにおいてチャットという機能はかなり重要な位置を占めており、モンスターとの戦闘における意思疎通から通りすがりの人との何気ない雑談に至るまで、あらゆる場面で人と人とを繋ぐ役割を果たしていました。

ゲームにインすると、まずクランメンバーやフレンドに「こん^^」と挨拶を飛ばす。その後日課のクエストをこなすため街の中心部へと足を運ぶと、サーバーの全体チャットに卑猥な言葉を連呼する荒らしが湧いていたり、アイテムの競売やパーティメンバーの募集を呼びかけるチャットが飛び交っていたりして、それを雑に読み流しながらクエストの受注先まで移動する。受注が終わると、フレンドと個人チャットで今日あったことを話したりしながら、だらだらとクエストをこなす。

ゲーム世界の何気ない日常を彩ってくれるこのチャットという文化が、自分は好きでした。

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何度話しかけても同じセリフを喋り続けるNPCとは異なり、チャットを使って言葉を発する画面の中のキャラクターたちはみな紛れもなく一人の人間です。

そんなキャラたちが暮らすネットゲームの世界は、あくまで作り物の世界ではあるものの、しかし確かに別世界、ここ(=現実世界)ではないどこかで暮らす人間の生を、内包していました。

自分や多くのネトゲプレイヤーにとって、ネトゲをプレイするということは、単にゲームをプレイするということを超えて、そういう別世界、「ファンタジー風の武器や防具に身を包みながらその中身は現実世界の人間であるという奇妙な人々が暮らす別の世界」を生きるということでもあったのです。

さて、ここではさもネトゲが特別であるかのような言い方をしてしまいましたが、ネトゲに限らずノベルゲーやオフラインRPG、アニメや漫画、小説など、物語的要素を含むあらゆるものにはそういう「自分たちが生きているのとは別の世界の生」を提示するようなものとしての側面があると思います。

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モンハンであればモンハンの世界に生きる人々の、ハルヒであればハルヒの世界に生きる人々の生のあり方があるわけで、そういう「別世界の生」を体験することの面白さというのは、モンハンであればアクションの面白さ、ハルヒであれば物語の面白さのような「本筋」の魅力とは別に、独立した一つの魅力としてあるのではないでしょうか。だからこそ、モンハンのこんがり肉を食べられるコラボカフェがウケたり、ハルヒの聖地巡礼が流行ったりするわけで…

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そして、そういう「別世界の生」を描くことに特化したのがいわゆる「日常系」の漫画やアニメなんじゃないか、とも自分は思っています。日常系への批判の中でもよく取り上げられることですが、日常系の作品には上記のような意味での「本筋」というものがほとんどないか、あっても通常の作品と比べて起伏に乏しいものとなっています。激動のドラマや壮大な伏線回収などの面白みはなく、ただ淡々と何気ない日常が続いていくだけ。
ただ、それは作品世界の中でキャラクターたちが生きる様子を描くことに比重を置いた結果であって、その様子が見事に表現されているとき、そういう「何気ない日常」は「本筋」と呼んで差し支えない魅力と価値を持ったものになっているはずです。

というか実際面白いんですよ、そういう作品は。本筋に比重を置いた派手な作品の方に慣れてしまっていると、そういう地味な面白さを見過ごしてしまいがちなだけで…

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この記事のサムネに使ったのは小人の日常を描いた『ハクメイとミコチ』というアニメなのですが、アニメを観終わった俺がホクホク顔でAmazonの星1レビューを見ると「内容がない雰囲気アニメ」や「毒のないご都合主義のアニメ」などの批判コメが書き込まれていました。馬鹿どもが。
俺が思うに、ハクメイとミコチの神髄はその「雰囲気」の妙にこそあります。以下ネタバレには踏み込まずに書くので、興味のある方は参考にしてください。

『ハクメイとミコチ』の魅力は「雰囲気」、この記事の言葉で言い換えるなら「『現実世界とは別の世界を生きる人々の暮らし』を垣間見ることの楽しさ」にあるのですが、それを支える要素として、この作品では食事と仕事のシーンがめちゃくちゃ描かれます。アニメの九割は食べるか仕事してます。

そもそもこの作品に登場するキャラクターは基本的に自立した大人なんですよね。
働くことで小人の社会に根を張って、働き、食を楽しむ。そんな彼らの日常はまさに生きることそのもので、観ているとこちらも自然と「こんな世界で暮らしてみたいなあ」という気持ちが湧いてきてしまいます。

そんな世界を補完するのがED中に流れる「足下の歩き方」。

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作中で登場した街の成り立ちや登場人物のバックグラウンドなど、本編で語られなかったこまごました設定を紹介してくれるのですが、ただ淡々と設定を開示するのではなく、この世界で生きる人々の顔が見えてくるような生き生きとした語り口でやってくれるのがめちゃめちゃいい。ハクメイとミコチは「ここ」で生きてるんだよな。(しみじみ)

ふう…

というわけで、「ここではない世界」での暮らしに魅力を感じる自分にとって『ハクメイとミコチ』は本当に魅力的な作品でした。皆さんも日々触れている物語の、その世界で生きる人々に目を向けてみると、また違った角度から物語世界を楽しむことができるのではないでしょうか。それでは…

(^ω^)ノシ

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