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ずっと一緒に #優先席の微世界先生 #毎週ショートショートnote

『微世界』の科学者である妻は
今日も楽しそうに研究室へ向かう。

『微世界』は地球の危機的状況を
救う手段として注目されてきた。

幼い頃から研究所で
『微世界』について学んできた
妻は、独学で自身の『微世界』に
ついての論文をかきあげ、
実際に『微世界』の扉を開けた。


俺は主夫として、妻を支えている。
午前中に家事を済ませて
昼食の弁当を広げる。
彼女に作った弁当と同じもの。

研究熱心で食事を忘れる妻に
「俺が、せっかく作ったんだから
食べて欲しいなぁ」
とお願いした。

それからは、忘れずに
ちゃんと食事を
取ってくれるようになった。


新婚の頃、
研究所で倒れた妻を迎えに行った。
腹が空いているのも
気づかないくらい集中していたようだった。

恥ずかしそうに笑う妻を
抱きかかえて、車のシートへ運ぶ。

家に帰り、あたたかいスープを飲ませ
日差しの気持ちいい
優先席へ彼女を運ぶ。

ポカポカと優しい光が当たる。
寝息を立てる優先席の微世界先生に
ブランケットをかけ
俺は、側で読書を始めた。

【414文字】


#優先席の微世界先生  
#毎週ショートショートnote

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