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秋の腕時計 #秋の空時計   #毎週ショートショートnote

秋と別れた場所。

夏の思い出に一緒に海で遊ぶ予定だった。
2人で新しい水着を選んでいた時は
秋と別れるなんて、想像していなかった。

あの日、海での事故で
俺は助けを求める秋の手を掴めなかった。
自分が助かる事だけしか考ていなかった。

秋の葬儀を終えた朝
小さくなった秋と共に
俺はそのままの格好で海に来た。

黒の革靴と靴下を脱ぎ
黒のスラックを捲り上げて浜辺へ向かう。
小さくなった秋を抱きかかえて
浜辺へ向かう。

秋と2人波打ち際を歩く。

足先を海にむけて
くるぶしまで海に浸かる。
波は勢いよく膝まではね上がった。
少しスラックが濡れてしまった。

そのまま、紅く色付く太陽が
昇ってくるのを眺めていた。

波の音が心地よい。

スネに何かが当たった。波が引いたあと、
秋の時計が足の甲に乗っている。

何で、腕時計が。

俺は屈んで腕時計を手に取る。
針が取れてた、秋の カラ時計。

あの時、秋が付けていた腕時計。
俺のプレゼントした腕時計。

俺は、うずくまり秋と腕時計を
抱きしめ肩を震わせた。



秋の空時計

#秋の空時計   

#毎週ショートショートnote

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