孫への伝承 #サイコの鶏唐 #毎週ショートショートnote
孫の為に手斧を握る。
「肉が美味しいか、そうじゃないかは
血抜きができているか、どうかで決まる」
気合いを入れて、片手で押さえこみ
一気に手斧で首を落した。
しばらくピクピクと動いていたが
バケツの上に吊るせば
首から血が流れ落ちてくる。
『血を素早く抜くのは、
雑菌が繁殖する前に肉を冷やす為だ』
親父の言葉を思い出す。
大鍋で煮たあとは、
手斧から出刃包丁に持ち替え
足首から切り落としていく。
腹に切れ目を入れてから
太ももの根元の骨が出るくらいまで
開き骨に沿って、切り取っていく。
両足ももが外れたら
肩の根元付近に包丁を入れ、
腕の部分を押さえながら
肉を引き剥がした。
※
孫の結婚を祝って
親戚が各自持ち寄った料理を並べる。
どれも美味かった。
「おばあちゃん美味しいよ」
孫が美味しそうに頬張る。
「サイコの鶏唐も美味しいぞ」
孫の作った料理も
ずいぶんと上達した。
肉の臭みもない。
「鶏は合格だな」
俺の言葉にサイコが涙を流した。
これで、ばあさんも成仏できる。
【毎週ショートショートnote】『ショートショート書いてみませんか?』お題発表!8/6|たらはかに(田原にか)
https://note.com/tarahakani/n/n208add4b74cb
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