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鳴らないゲーム機 #着の身着のままゲーム機 #毎週ショートショートnote

『無人島に1つだけ持っていけます。
貴方は何を持って行きますか?』

確か、そんな話を昔した気がする。
あの時は、何て答えただろう。

天高く馬肥ゆる秋。
そんな秋空の下、公園のベンチで
俺は着の身着のままゲーム機
だけを持って座っていた。

え?持っているのはスマホに見える?
ああ、確かにスマートフォンだな。

自問自答に、くすっと笑い
空を見上げる。

アイツと出会うまでは
家族も心配しなくなるほど
やんちゃ……いや、悪事に手を染めていた。

中途半端な半グレってやつだ。
クズの集まりだった。
でも、居場所の無い俺には
そこが丁度良かった。

自分が必要とされず
いつ消えても、誰も悲しまない
そんな場所だった。


アイツに会って、恥ずかしいが
運命ってやつ?を感じた。
アイツを守らなきゃ。
一緒に、いたいって心がざわついた。


アイツの笑顔を見るだけで
薬キメてる時より
脳内はピンク色に染まっていた。


俺のスマホは、
もうアイツからの着信音が鳴る事はない。
ただのゲーム機になった。


【409文字】


#着の身着のままゲーム機  
#毎週ショートショートnote

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