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夫の微糖コーヒー

急な夫の旅立ちに
残された子供達と
日々暮らしていくのに必死だった。

少しづつ日常を取り戻し
視野を広げていく。

やっと夫の部屋を
片付ける事ができた。
夫の好きだった微糖のコーヒーが
ケースで積み上がっている。
ケースで注文して、
一人で自室で飲んでいた。

私はブラック派、
子供には、まだコーヒーは早かったので
私達は飲んだ事がなかった。


賞味期限に、余裕があったので
冷蔵庫で数本冷やしてみた。
1本はコーヒーゼリーにしてから冷やした。


夕飯の後
コーヒーゼリーに
コンデンスミルクをかけて
子供達のデザートに出してみた。
私はコップに微糖コーヒーをそそいで、
美味しそうにゼリーを食べる子供達を
眺めていた。

家族で、テーブルを
囲んでいる時のようだった。

飲めないと決めつけていた自分。
飲ませられないと決めつけていた自分。
家族で楽しむ事ができたのにと
過去の自分に伝えたかった。
微糖のはずのコーヒーから
少し塩味を感じた。

ケースに残っていたコーヒーを
冷蔵庫で冷やした。

真夏の暑い中
宅配に来てくれた方や、
早朝学校の道路当番の方、
隣の敷地の工事をしている方々に配った。

夫の微糖コーヒーに
みんなが笑顔をくれた。
笑顔で私も笑顔になった。
私の笑顔に子供達も笑顔になった。
夫が子供達の笑顔をくれた。

賞味期限の切れた最後の1本は、
夫の写真の隣に、今でも置いてある。


#やさしさに救われて

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