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短歌と絵画のコラボレーション

アーティストの内田すずめです。日本橋三越で開催中の内田すずめ特集ー消えない星ーでは、歌人の野口あや子先生の短歌が絵画に添えられています。これはひとつひとつ新規に書き下ろして頂いたもので、私が完成した絵を画像でお送りして、それに野口先生が短歌を返信する、というかたちをとってきました。2019年の1年間、お互いの間を行き来するそれは季節の便りのようでした。

今回の展示では「消えない星」、つまり心の中で輝き続ける思い出といったふんわりしたものをテーマにしています。絵画は鑑賞者個人の解釈で物語がひろがっていくものですが、その手助けをしてくれたのが短歌だったと思います。

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とうめいなさかなの群れはひるがえりここから生まれてみたいとひかる
絵 内田すずめ  短歌 野口あや子

例えばこの絵のタイトルが「川」だったら。ここに流れるものは何だろう、なぜ川なんだろう、とぼんやりとした思考で鑑賞が立ち止まってしまうかもしれません。

それが、短歌がタイトルになると「とうめいなさかな」の正体への疑問とともに、何かクリアな物体が絵の中にひるがえってゆく。その中央、水に浮かぶ少女から生まれるいのちのきらめきのようなものが見えてはこないでしょうか。

私にとっての短歌の魅力とは物語のほどよい拡張力です。小説ほど長くない、しかし単語よりは長い、57577。これが絵と組み合わさった時に、想像の翼を大きく広げてくれたようなそんな気がしています。

野口さんには、基本、具体的なリクエストは告げずにポンと絵を送るだけにしてきました。それでも、こちらが期待していた以上の短歌という球を心の真ん中めがけて打たれてきた思いです。毎回ホームランだよ。

詳しく説明しなくてもなぜか伝わってしまう人という存在が、人生の中で何人がいます。彼女はそのひとりです。

大人になって彼女に会えてよかった。彼女の存在と短歌とに心から感謝申し上げます。また一緒に何かできたらいいな。


--展示のお知らせ--
三越美術特選会
内田すずめ特集 ー消えない星ー
2020年1月15日(水)~1月20日(月)
10時〜19時 最終日は18時閉場
日本橋三越本店 本館7階

--イベントのお知らせ--
内田すずめのドロドロドリーム
ゲスト 歌人 野口あや子
2020年1月19日(日)17時~19時
トークショー17時~18時 / 懇親会18時~19時 / 開場16時30分
東京都中央区銀座8-9-4 ザ ロイヤルパークキャンバス 銀座8 2階
参加費 1500円ワンドリンク付き
お問合せ先 dorodorodream@gmail.com

〉内田すずめさんの個展「消えない星」が、日本橋三越で2020年1月15日(水)~1月20日(月)まで開催されます。
油彩画と鉛筆画の約10点の展示となり、歌人の野口あや子さんが絵に寄せて短歌を詠んでくださいました。光の洪水に溶け込むように輝く少女と鳩の肖像―そこにどんな歌が添えられるのか。
個展開催を記念して、お二人のトークショーを企画しました。当日は、お二人がコラボレーションするに至った経緯や、作品に込めた思いを存分に語っていただきます。豪華対談を、お見逃しなく!

プロフィール
内田すずめ アーティスト。自身の内面と向き合って生み出された作品には光と闇が共存しており、理想的な美しき世界とエゴに揺れる生々しい女の世界を見せようとする。 筑波大学芸術専門学群卒業。Yohji Yamamotoと合作した服がパリコレクションで発表され世界各国で発売中。レスリー・キーのフォトブックに作品起用。FIGARO japonで齊藤工とコラボレーション。VOGUE JAPAN、GQ JAPAN掲載。小説「邪し魔」「恋塚」に装画提供。画集「美人画ボーダレス」「写実絵画の麗しき女性像」掲載。幽霊画展2014大賞受賞。画廊、百貨店、国内外アートフェアなど展示多数。

野口あや子(のぐち・あやこ) 1987年岐阜県生まれ、名古屋市在住。 「未来」短歌会会員。2006年、「カシスドロップ」にて第49回短歌研究新人賞を受賞。第一歌集『くびすじの欠片』にて現代歌人協会賞を最年少受賞。ほか歌集に『夏にふれる』『かなしき玩具譚』『眠れる海』、三角みづ記との電子書籍に『気管支たちとはじめての手紙』。「小説新潮」2019年11月号「ジュリアナ様」にて小説デビュー。エッセイ、コラボレーション、朗読、レクチャーなど、幅広い活動を展開している。

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私は作品を通じて「生きながら生まれ変われる」ことを証明したいのです。そのためには「命のありか」と「心のありか」を解き明かさなければなりません。2020年は自分の子宮の音を録音する予定。いつか子宮コンサートを開きたい。頂いたサポートはそれらの研究費用とさせて頂きます!