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スズメベースの現状とこれから(後編)

以前書いていたものは、半年くらい前に全削除してしまったので、改めて始めることになります。

東京・三鷹市で、スズメベースという場所をやっているsue(ローマ字読みなので発音はスエです)と申します。

スズメベースの回顧録は後にして、まずは「私とスズメベースの現状と、12月から始めること」を、前編後編の2回に分けて書きたいと思います。これは後編になります。

こだわりは必要と思っていたけど

三鷹市外に自分が転居したことで、何かと波乱があったり落胆もしましたが、そんな日々の中で1つ1ついろいろなことが起こっていきます。1つだけ見ると大したことではないけれど、それらが私の中で蓄積して、噛み砕いた時に希望の光が見えました。

①「経済の視点を持てば見える、地方の『幻想』をぶっ壊そう!!」「街づくりの幻想 地域再生はなぜこれほど失敗するのか」刊行記念講演で聴いたこと
②今年1月に開催した手帳の会での話
③夏にできた同ビル3階のビストロ店
④三鷹居住じゃないメンバーが増えた

この4つです。

そんなに大したことじゃなさそうですよね(笑)でも私にとって、そしてスズメベースにとっては、大きな転機になりました。

①刊行記念講演で聴いたこと

これは下北沢のB&Bさんの講演…というか対談でした。地方都市のまちづくりや、まち・店・地域の経済の話でした。その中で感心したことが4つありました。

🌟家賃が安いと、面白いものをやりたい人が来る。(特に若い人)

🌟「1ついい店ができると、それに引っ張られて2つ3つ面白い店ができる」⇒「まちが変わる」。それは「まちを変える」という大きなものよりも、確実路線。

🌟元々知り合いでもない、小さいものの集まりが、面白いものになったりする。

🌟まちの変化は地元の人が来るだけじゃダメで、まちの外の人を呼べるか…ということ。

これを聴いたのは去年の5月。そうか、そうなのか!と思ったけれど、そこから何かやる訳ではありませんでした。

②今年1月に開催した手帳の会での話

スズメベースの賃貸契約の更新は今年の4月だったので、去年の10月あたりから悩み始めて、今年の1月あたりは本当にかなり悩んでいました。更新して続けるとしても、もう完全に方向を見失っていましたから。

古本売買の箱貸しは、吉祥寺に有名店があるし、中央線沿線にいくつかおきにある状態。ハンドメイド系の箱貸しは、沿線にもあるけれど、三鷹中央通りに商店会が関わっているものが君臨している。

新型コロナの流行でテレワーク化が進んで、コワーキングスペースがかなり増えて、スズメベースくらいのシェア書斎は話にならない。

そんな中、自分がやりたいだけの気持ちで、「手帳の会」を開催してみました。手帳を買ったのはいいけど、毎年ほとんど白紙のまま終わるので、会を開けば必然的に記入するだろう…というもの。

2人出席の予定が、1人は体調不良でキャンセル、当日は出席者と私の2人開催でしたが、かなりよかったんです。いわゆる朝活ですね。

出席する予定だった人も含め、2人は三鷹でもなければ近隣の人でもなく、40,50分くらいはかかるんじないか?というくらいのところに住んでいて、30代前半の人でした。よくこんなところまで…と言ったら、全然遠くないですよ~とのこと。

スズメベースは見た目もシニア向けじゃないし、蔵書も比較的若い人向けだけど、やっているのが私だからなのか、年齢層が低くくない。20代の人は今までに片手で数えられるくらいしか、来たことがない。

三鷹は過疎化してる訳じゃない。若い子だって沢山いる。でも三鷹に住む若い子は、三鷹に関与したくないという、なんとも不思議な街なんだな。

スズメベースの前を通りがかる若手は「三鷹には珍しい店だね~下北沢とかにありそう!」とか言ってる人がわりといるんです。それっていい感じってことなの?でも結局はその言葉止まりでしたね。

③夏にできた同ビル3階のビストロ店

①の話に現実性をまず感じたのは、三鷹にLA CREPERIE さんが出来た時。行列ができるクレープ屋さんで、チェーン店ではなく、市外からの移転でした。プレオープンから行列ができて、三鷹でもすぐ評判になりました。

インスタLIVEをやったりして、三鷹にある古典的な店とは違いました。熱狂的なファンが移転前からいたようで、電車に乗って三鷹に来る。これは今までの三鷹にはあまりないことでした。「三鷹はわざわざ行かない街」であり、市内の人でさえ「三鷹(駅前)はいい店がない」が口癖ですから、わざわざ電車に乗って来るような街ではなかった。

でもいい店があれば、市外からも訪ねてくる人はいるんだなと、思いました。

そして少し間が空いたけれど、三鷹センター第1ビルの3階にビストロ「319」ができたことで、やっぱり❗❓️がダメ押しされました。

三鷹センター第1ビルはスズメベースがあるビルで、3階から上は居住用ですが、昔から碁会所やヨガ教室がありました。でも飲食店は1つも入っていませんでした。そこにビストロ。しかも、このビルは階段しかありません。

住民や周囲の人たちは、人が入らなくてすぐやめちゃうだろうね…と、オープン前から話していました。値段の設定も、三鷹としてはとても高い。こりゃダメだ~と思っていたら、プレオープンから満席。地元の子じゃない、しっかりおしゃれをした若い女の子の2人組が、続々と古い階段を上っていきます。三鷹の住民でさえ、ほとんどの人がプレオープンを知らないというのに。

2号店だそうです。

そうか。

でも、三鷹におしゃれしてわざわざ来る、そんなことがあるんだ!と思った時に、もしや三鷹は変わるかもしれないと、感じました。

④三鷹居住じゃないメンバーが増えた

旧みたかスペースあいでの地域図書館に始まり、スズメベースに場所を移してからも、完全無料の私設図書館を続けて、私は主に三鷹の住民のため、三鷹の街のため、そして建て替えられてしまうビルのために頑張ってきたけれど、そこに三鷹や近隣ではない会員さんが入ったことで、また少し私の感覚が変わりました。遠くからもわざわざ来てくれるんだ…と。

そして、今年の春まではそんなこと考えていなかったけど、なにより自分がスズメベースに遠くから来る身になりました。

対象を三鷹の人に限定して考えていたのは何だったんだろう?と、自分が考えていたことに違和感を感じ始めました。でも現実問題、面白い場所じゃなきゃ、わざわざ三鷹に行こうなんて思えないよな~と思ったので、焦ったり、真っ暗な気持ちになったりしました。

もう疲れた。
案も浮かばない。
これが潮時か…。
本当にそう思いました。

ただ、しぶとい私は、最後にスズメベースは本当にもうダメなのか、試してみたくなったんです。

「私の」から「みんなの」へ

人は死んだ気になれば何でもできる…というけど、スズメベースもやめた気になれば何でもできるんじゃないかと、思った瞬間がありました。

私は本と本棚があればいい。奥はゴーゴーリフレさんが借りている。数ヶ月に渡って2人で話し合いをして、今の負担額を払い続けて、危険な状態を進むよりも、他の使いたい人とスズメベースをシェアして、1人あたりの月々の負担を安くして、身軽で気楽にスズメベースを楽しみたい。…ということになりました。

それはお金のことだけじゃなくて、この停滞した空気をどうにかしたいということと、このままではスズメベースがもったいないと思ったからです。それだけ私たちは、狭くて古くて室温もままならないこのスズメベースを、好きだということなんでしょうね。

私とゴーゴーリフレさんは「私のスズメベース」を、「みんなのスズメベース」にすることにした訳です。これは口で言うのは簡単だけど、実際にやるのは難しかったりします。そもそもスズメベースは、過去に1回失敗していて、私は失意のどん底に1度落ちているので、「みんなのスズメベースだよ」と言い出すことに、ちょっとした恐怖がありました。

そして、私個人の名前で借りて、ダンナが保証人になっているスズメベースで、私はいっぱいの中の1人になるので本当にいいのか?という疑問は、やっぱりありました。私も損はしたくない。防犯や災害などの問題も出てくるかもしれない。

でも、このままにしていることはできない。やってから考えよう、みんなで。スズメベースはビジネスじゃないから、棚や箱は貸すんじゃない。仲間になった人に「販売やりたいの?だったらその棚を使いなよ!」というのを、時間がないので順番を逆にして、簡略化しただけ。

スズメベースという秘密基地を、場所と個人の持ち味を活かして使おう!とにかく人だ!!仲間だ!!!あとはそれからだ!!!!

私にしてはかなり珍しく、適当で、他力本願な道を選ぶことになりました。

とはいえ、本当にどうする?

じゃあ具体的にどうするのか。私はSNS創世記からずっとやり続けている、SNSのヘビーユーザーだけど、好きにやっているだけだから拡散力がない。ゴーゴーリフレさんはやらないんです。なかなか拡散が難しい。しかもスズメベースがやろうとしていることは、ネットでは伝わりづらいことだったり、書けないことだらけ。

それでもとにかく拡散しないことには、いつまで経ってもスズメベースを一緒に使う仲間なんか出てこない。自分のパワーやお金は底が見えてしまっていて、もう時間があまりないと思いました。

どうする?どうする??

ゴーゴーリフレさんはその辺のことにかなり疎くて、「◯◯さんに聴いてみる!」という完全昭和系なので、せいぜい数人くらい。それじゃ無理。

結局、最終手段でInstagramの広告を使いました。

以前、地域活動などの時は、Facebookの広告にしましたが、今回あれだと人は訪ねて来るけど、実は結ばないとわかっていたので、迷わずInstagramを選びました。

Instagramは付け焼き刃でもなく、これまでずっとやってきたので、広告を見て興味を持った人が、過去の写真を見ることもできるし、スズメベースの感じを少しは感じられる。

これは本当に正解で、知り合いからも全く知らない人からも、連絡が沢山来ました。

スズメベースの見た目が嫌いでなければ、条件はとてもいいはず。似たビジネスがあっても、それはビジネスだから利益が計算されているし、タバコ屋ほどの極小店舗を借りるにしても、家賃や契約時に払う金額はどうやったってある程度しますから。

まぁそれでも、うわっっこんなところ!と引かれることも多いし、折り合いがつかないこともある。私自身は儲けもなければ、どちらかというとリスクがあるかもしれない状態で仲間に入ってもらうのだから、変に計算高い人は絶対に嫌だし、性格が悪い人はもっての他だし、個性派は大歓迎だけど「自分さえよければ」はシェアには絶対に適さない。

仲間というのは何かな?と思ったりもしました。

結局は勘。そして話せる人。

事前に連絡をくれる人は、ほとんどSNSを見た人だから、会う前にその人のSNSを見ます。その後に会うので、まだ無理がない方ですね。直接来ちゃうと難しい。向こうはこちらのことを、ある程度読んで、知っている状態で来たのかもしれないけど、私からすれば全く知らない人なので、仲間にするかなんか、その場で判断することはかなり難しい。

でも仲間に入れて欲しいという人は、習い事かレンタルショップの入会とかと、あまり変わらない感じで来るのでちょっとこわい。秘密基地の仲間に入れるかどうかって、子どもでも凄く悩むところなんだと思うんですよ。

でも結局は勘と、会話がちゃんとできるかどうかと、性格かな…と思います。東大受験じゃないけど私の判断は減点法。スズメベースにはNGワードがいくつかあって、今回の仲間募集でさらにNGワードが追加されたので、そのNGワードを言うたびに、どんどん私の応対が適当になる。

商売じゃない仲間探しはそんなものですね(笑)

私は月額を稼ぐために、合わない人を入れようだなんて思わない。誰も出てこなければ、ゴーゴーリフレさんには悪いけど、やっぱりやめるだけだと思うし。

スズメベースはこれからどうなるのか

抽象的な表現じゃなく、スズメベースはこれからどうなるのか。抽象的な表現なんかじゃなく、みんなで秘密基地を楽しもうと、本気で思っています。何かやりたいことがスズメベースという場所や、スズメベースにある物やいる人でやれるならば、やればいいんだと思います。

今の人はルールややれることが、しっかり決まっているところに参加したり、決められたレールの上を~の方が、安全安定で好きな人も多いのかもしれない。自由だと決めなきゃいけないことや、やる事が沢山あったりするし、そうなるとまず考えなきゃいけないし。でもスズメベースは自由多めで始めたいと思っています。 

本当は募集のところに、棚使うとか、箱使うとか、書きたくなかったんです。そう書くと、スペース貸しですか?棚貸しですか?に、どうしてもなってしまうから。でもわからな過ぎても人がこないよ!と言われて、一応書きました。

会費も一律にしたい気持ちはあったけど、それはそれで不公平だし、かえって使いづらいかな~と思って、考え直しました。元々はほんの数人で共同書斎&店舗として使いたかったけど、月額が安くないから希望者が出なかった…。その時に聞いた話や、今まで聞いた様々な話を踏まえて、真剣度や使い方で会費に差をつけました。

スズメベースは1階の店舗物件だから、物販や対人サービスもできるけど、居場所が欲しいならば居場所にすればいいし、サークルを開きたいならば開けばいい。募集のチラシも置けるしポスターも貼れる、部室のようにも使える。

ネット販売をしていて、住所を自宅にしていて気になっているならば、登録をスズメベースの住所にすれば問題は解決。

ギスギスしたくないし、暢気にやりたい。メンバーが少なめで週7日なんか開かなくても、今までよりは開くだろうし、大勢のメンバーを募集するつもりはありません。まだ入れるな~と思ったら、メンバーを追加していくことにします。

甦れ、本棚~!

今回のことで、スズメベースをやめるのか、誰かに譲るのか、本は諦めたのか…等々、早合点というか、嫌みを言いたいだけ?という人もいましたが、本があるからスズメベースを始めて、本があるからスズメベースを続けているので、私にとって本のことをやめる時は、スズメベースをやめる時なんです。

だから本のことはこれからも続けていくし、何かいい方法があればスズメ通信か、それっぽいものを出すつもりでいます。

本の無料貸出をやめて以来、どんどん本が動かなくなって、かわいそうな感じになっていたので、また本が動くように、そして本に関係する会話で盛り上がったり、本に関係する集まりが開けたら嬉しいな~と思っていました。

そんな中、スズメベースで三鷹読書会を開きたいという話はとても嬉しかったし、文学フリマに出よう!という話も嬉しかった。

ありがとう、Instagramの広告!
ありがとう、SNS!!

自由といっても、場所をシェアするためには、ある程度ルールは必要。今はSNSの使い方、予約の入れ方、スズメベースの使い方、広報のことなどを整備中です。

現在メンバー13人。12月からボチボチやっていきます。

東京三鷹生まれの三鷹育ち。自分の居場所を求めて富良野、京都、東京多摩地区を転々としたのち三鷹に戻り、以降ずっと三鷹に在住。2016年2月、本好きと、長く続いた居場所探しの経験を活かし、地元でゆるい感覚のまちライブラリーをスタート。ひっそり人好き。地域クリエイター。