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【新潟県十日町市・夏】棚田は米をつくる場所であり、多様な生きものが棲む場所でもあると知りました。

令和5年7月13日㈭~16日㈰の4日間、新潟県十日町市にある池谷・入山集落に旅行してきました。

今回の旅の目的の一つに「棚田を『多様な生物が棲む場所』という視点から見てみる」ということがあったのですが、7月16日㈰に十日町市立「森の学校キョロロ」の学芸員の方たちが池谷集落に出張してきて「棚田で生きもの調査をする」というイベントがあったので参加してきました。

棚田に棲む生きもの達

AM9時30分。

私たちが宿泊場所にしていた池谷分校(NPO法人地域おこしさんの活動拠点)に隣接する溜池で生きもの調査を開始。

キョロロの学芸員に教わりながら、みんなで生きものを捕獲しました。

この溜池にいたのは約30分くらいだったと思います。

キョロロのK先生

その後、池谷分校に戻って、キョロロの学芸員に捕獲した生きものについて解説して頂いたのですが、この短時間で確認できたのは23種類にのぼりました。

みんなで捕獲した生きものたちを確認しながら解説
溜池で確認できた生きものは23種類

トノサマガエルが絶滅危惧種になった理由

水掻きがない!

トノサマガエルはかつて西日本の水田を中心にたくさんいましたが、現在は「絶滅危惧Ⅱ類」に指定されています。

激減してしまった理由の一つに「水掻きがない」ことがあるそうです。

トノサマガエルの手の先を皆で観察

水掻きがない為、コンクリートでできた農業水路などに転落してしまうと脱出できない(這い上がることができない)そうです。

参考:側溝に落ちたカエルを救え!小学生が豊かな発想力・問題解決力で、カエル救出仕掛けを大発明!

中干しする(水を抜く)田んぼが多くなった。

また、昔と比べて現在は「中干し」をする田んぼが増えているそうです。

中干するとお米の品質が良くなったり、(土を乾かし固くすることで)大型の稲刈り用農業機械コンバインなどを使うことができるようになって作業効率が向上したりする為です。

中干しによって、田んぼから水が一気になくなるのですが、
トノサマガエルはそのタイミングまでにオタマジャクシからカエルへの変態が間に合わずに上陸することができない為、生きていくのが難しくなってしまっています。

十日町市の池谷集落にあるこの棚田でも中干しをしているのですが、トノサマガエルがたくさんいます。

なぜなら、棚田の上段に「溜池」があるからです。

溜池は、山からの雪解け水を貯めていて、その水を必要な時に田んぼに流す機能を果たしていて、1年中水がある環境をつくっています。

なので、オタマジャクシからカエルに変態する時期が他のカエルよりも遅いトノサマガエルでも生きていける環境になっています。

カエルの子はカエルなのか‥?(良い意味で)

この記事は、生きもの調査で私たちに解説してくれたK先生のお話を元に書いていますが、下記の記事も参照しています。

参照記事:なぜトノサマガエルは絶滅危惧種になったのか?

この参照記事は、十日町市立松之山小学校の6年生(💡)が書いたのですが、今回のイベントで私たちに解説してくれたK先生の娘さんだそうです😮

この記事では「トノサマガエルを絶滅の危機から守るにはど うしたらよいだろう?」という解決策にも触れていて、皆さまにも是非読んで頂けたらと思います。

いなくなってしまったら、、寂しい

再び、生きもの調査の現場に戻って、
K先生に「トノサマガエルが絶滅してしまったら、、どんな影響が考えられますか?」と質問したところ「まずは、寂しくないですか‥?」とのこと。

元気よく「寂しいです!」と答えてしまいました。

何だかすごく腑に落ちる答えで、こんな人に授業してもらえて良かったなと思いました。

(もちろん寂しいだけでなく、トノサマガエルが食べている昆虫が増えてしまって、その昆虫が稲を食べるようになる等、米づくりへの影響もあるというお話しもありました。)

みんな、何かしらの役割を果たしている。

トノサマガエルもクロサンショウウオ(準絶滅危惧種)も他の生きものも、私たちが知らないだけで、自然界の中でみんな何かしらの役割を果たしています。

仮に何の役割を果たしていなくても、いなくなったら「寂しい」と思う人たちがいます。

中山間地域にある棚田での米づくりは「米を生産する」という一面だけから見ると、平地でのそれと比較して効率は悪いです。

新潟県十日町市池谷集落の棚田・撮影'23年7月

でも「生物多様性」に貢献していたり、
雨水を一時的に貯めて洪水を防いでいたり、
作物・水田に水が貯められるおかげで土砂崩れを防いでいたり等の機能を果たしていて、それを経済的効果に換算すると莫大な金額になったりするそうです。

参照:【農林水産省】農業・農村の多面的機能及び棚田に関する意向調査

でも私にとって棚田とは、、美しくて心が落ち着く風景であり、私が好きだなと思う人たちが大切に守っている場所であり、もしなくなってしまったら、、とても寂しいです。

AM11時頃に生きもの調査のイベント終了。

捕獲した生きものたちはみんなリリースしました。

〆の挨拶で、キョロロの学芸員(前館長)が「このような多様な生きものが棲んでいる棚田で作られたお米は安全で美味しいに決まってますね。」と仰っていて、大人で流石だなと思いました☺

新潟県十日町市 池谷・入山集落でつくられた「山清水米」

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