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こういう問題提議がされることが<変化>につながる:映画評「監視資本主義」

SNSやスマホが何をもたらしているか?


そのことをIT産業のインサイダーたち(結構トップを務めた人も出演します)が強い懸念を持って語るNetflixオリジナルのドキュメンタリー。
IT企業に「悪意」があるわけではないけど、「広告ビジネス」を効率的に推進するために、ユーザーの意識や行動を<操作>してしまい、そのことが精神的不安定や、二極化・分断を生んでしまっている…という、ちょっと恐ろしい流れ。

インサイダーたちの話だけでなく、サービスの視覚化(擬人化)やフィクションの挿入で分かりやすく語り掛けてきます。

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個人的にはここで語られてる「手法」についてはさほど目新しいものはありません。
ただそれをこういう風に視覚的にまとめて提示されると、流石に、
「う〜ん…」
って感じにはなりますねぇ。
自分の子供たちの振る舞いを見てると、頷けるとこもあるし。
…っつうか、自分にも!w


しかしこの流れを「なかったこと」にはできない。
今更、「スマホなしで生きていこう」と言っても、そりゃ無理でしょう。(個人としてその選択をすることはできますが、そのことが社会の流れを変えることにはつながらないし、そこで生じるギャップは、それ自体がリスキーですらあります)
この作品に登場する人物たちも、「それは無理」と言っています。


「時代を遡る」のではなく、「時代をさらに進める」。
すなわち、こういう状況になっていることを意識することで、その王教を変えるためにビジネスモデルを考え直し、技術を倫理的に踏み込んだ方向にアップデートしていく。
そこに「正解」はないにせよ、「変化」を求めることができる。
…ペシミスティックな現状認識から生じるオプティミズムとでも申しましょうかw。
まあ、この着地点がチョット面白いんですよね。


<ネットの世界は変わっていて実験的だった。ネット上では創造的なことが起こる。(中略)何かもっとできることがあると思う。
私は楽観主義者よ。
SNSは変えられると思う。>


<技術は物理法則とは違う。人の選択によって作られるものだ。
人は技術を変えられる。
ここで問うべき質問は、この結果を生み出したものは我々だと認めるかどうか。>


<何かが改善されるときはいつだって誰かがこう言ったときだ。
“アホらしい 直そう“
批判して改善するんだ。
批判者こそ楽観主義者だ>


<おかしいよね。
サービスの基本設計自体が悪い結果を産む。業界全体がね。
全て変えようと言うと大変かもしれない。
でも変えるべきだ。
(変えられるかな?)
変えないと>


最大の問題点は「広告モデル」であり、そこへの「規制」が必要…と言うのが結論ですが、結構恐ろしい構図なのに、意外に明るい印象もあるラストでした。


広告モデルに則らないNetflixがこういうドキュメンタリーを作るってのはわかる。
もっとも、見終わった後に、「次のおすすめ」を表示するのはどうかと思いますがw。


#映画評

#監視資本主義

#the_social_dilemma

#Netflix


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